株式講座 中級編
第10章 税金はどうなっているの?
投資成果はどれだけ売り買いで利益を上げたかではなく、税引き後のネット利益がどうなるかが目安です。そこで、上場株式の配当と譲渡の税制についても理解を深めておきましょう。
証券税制はいろいろ複雑ですが、投資家にとっては上場株式が中心ですから、上場株式の譲渡損益、配当についてみてみることにしましょう。
上場株式等の譲渡所得
証券会社に口座を作り、上場株式を保有、売買するケースを想定します。この場合には重要なのは年によって制度が異なる点です。
個人の場合、税金は原則として暦年単位で所得を計算し、さらに税額を決めます。売買の都度に所得を把握するのではなく、1年間の合計で把握します。
このようにして決定した上場株式の譲渡所得は申告分離課税の対象となり、その税額は、平成26年1月1日以後については、譲渡所得に一律20%(所得税15%・住民税5%)の税率をかけた額となります。ただし、平成25年1月1日以後25年間は、所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税が併せて課税されます。
なお、上場株式等の譲渡損が他の上場株式等の譲渡益で埋めきれない場合、翌年以降の確定申告の際3年間に限りその譲渡所得の損失を申告年の株式等の譲渡益から控除します(これを損失の繰越控除といいます)。
上場株式等の配当所得
上場株式等の配当等に対する源泉徴収税率も年により変わります。
平成26年1月1日以後に受ける上場株式等の配当等については、20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%・地方税5%)です。
配当金(大口個人株主が内国法人から支払いを受ける配当金を除きます)の確定申告を行う場合は、総合課税または申告分離課税のいずれかを選択しますが、前者は配当控除の適用を受けることができ、後者は上場株式等の譲渡損失との損益通算を行うことができます。また、支払いを受ける金額の多少にかかわらず、申告不要を選択することもできます。
値嵩株
株価が高い銘柄を値嵩株といいます。一株買うにも値が張るという意味ですが、いくら以上なら値嵩株といった定義はなく相対的に高水準にあるものです。品薄(供給が少ない)になっているものも多いので、市場エネルギーが乏しい局面で買われることも多いといわれます。
低位株
値嵩株の反対で市場では株価位置が低い株を低位株といいます。これも絶対的な基準はありません。業績不振銘柄はもちろん株価評価が低くなるので低位株に含まれますが、市場での流通量の多い株もやはり需給面から低位株になるケースが多いようです。流通量の多いものの代表格は大型株です。これらの銘柄は市場の底上げの最終局面に出遅れ物色されるとか、過剰流動性相場で人気を集めることが多いようです。
材料株
その企業の株価を動かすような話が出てきたとき、その株を材料株といいます。もちろん株価上昇を予想させるような材料(好材料)だけでなく、株価下落あるいは証券市場からの退場を予想させるような材料(悪材料)もあります。
材料の評価は投資家一人ひとり違うことが多く、たとえ好材料であっても評価し過ぎとなり後で乱高下したり、逆の場合も評価を落としすぎてその後乱高下したりするケースが多いのです。評価は慎重に、材料株として市場人気を集めているときは動きにつられて何がなんでもすぐ飛びつくのは投資戦略として下策です。
仕手株
仕手株の仕手とは読んで字のごとく仕掛ける手です。仕手株とは仕手が絡んで動きがある銘柄や信用取り組みが接近しそこに仕掛け的な動きが出る銘柄をいいます。また材料があってそこから仕手相場となることも多く、仕手材料株と呼ばれることもあります。
仕手筋が株集めを行い易い銘柄は比較的発行株数が少ないもの、会社経営陣が株価に関心が薄いところ、業績変動の大きいところなどです。
信用取り組みの接近というのは、その銘柄を信用売りしている株数と信用買いしている株数が接近ないし売り方株数が買い方株数を上回っているものです。この場合しばしば売り株券の調達が困難になって逆日歩が付いたりします。買い方はこの状況をさらに切迫させるために信用買いした株を現引きし、株不足を広げるなどして売り方に逆日歩攻勢をかけたりします。
ところで仕手株はそのとき仕手人気化するだけではなく、同じ銘柄が折に触れ仕手株、仕手系株として市場人気を集めるケースが多いのです。これは仕手筋に買い集められたあと、仕手筋が買い玉をうまく処理できればいいのですが、成功しないケースも多いため玉が偏ったまま(ある数箇所に固まっているなど)になっているからです。
時間を置いてから仕手筋が再び仕掛けるケース、株が人気を失って仕手筋が持ったまま沈んでいれば、その玉を引き取って仕掛けたいという別の仕手筋が出てくることが多いためです。まとまった玉を捌くのはなかなか困難で、ふつう別の大量取得したいとする向きが出てくるまでその塊はほぐれないものです。
ただし、会社の業績がそれまで一株利益10円〜20円程度を行ったり来たりしていたのにある時期から一株利益が50円、翌期は同じく70円、その次は同100円というように収益力が居所を変えると、将来性を評価した投資信託や年金ファンドなどの買い(これらは長期保有目的の場合が多い)などが入ってきて玉がこなれ、仕手株の要素がなくなるケースもみられます。
新興市場
新興市場はマザーズ、ジャスダックなど主にベンチャー企業が上場し、その企業の成長性を評価した投資家から資金調達が図れるよう作られた市場です。投資家の目論見どおり企業が成長するとその投資効率は驚くほど高まりますが、目論見が外れると上場廃止や倒産ということも十分に考えられます。
新興市場での投資は、通常の市場に上場している株以上に長期的な見通しを立て、慎重かつ大胆に行動すべきでしょう。
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