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三井住友海上プライマリー生命保険株式会社

セカンドライフ前半にお金を厚めに配分
人生を楽しむ「前厚まえあつ」型の資金計画のススメ

  • 生活経済ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(CFP®)
     和泉 昭子氏

20年後の年金支給額は現状の7~8割になる?

 インフレや円安、超低金利、年金の目減り、医療・介護の負担増など、私たちのセカンドライフの前には、多くの課題が立ちはだかっています。こうした環境変化の中で、どうすれば自分らしく幸せに生きていけるかということを、私たち一人ひとりがしっかりと考える必要があります。

 ご存じの通り、日本銀行はインフレ率の目標を年率2%としています。米国など海外の主要国でもインフレ目標を2%程度に据えているケースが多く、安定的な経済成長にはこの程度の緩やかなインフレが好ましいと考えられています。しかし、年率2%のインフレが今後30年継続すると、現在の100万円は54.5万円に価値が目減りすると試算されます。過去に「老後資金2000万円問題」が大きくクローズアップされましたが、2%のインフレ環境が続けば、老後資金は2,000万円でも全く足りないのです。

 私たちが自ら働いて稼ぐ能力のことを人的資産と呼びます。この人的資産は、若いうちは豊富にあります。なぜなら将来的に働ける期間が長く残されているから。その一方で、年齢と共に残りの「稼ぐ期間」は短くなっていきますから、年を取ると人的資産は減っていくと考えるのが一般的です。

和泉 昭子氏

生活経済ジャーナリスト/
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
和泉 昭子

 大切なのは、人的資産の減少と反比例するように金融資産を少しずつ増やしていくこと。人的資産の減少を金融資産、あるいは実物資産で補っていくイメージです。セカンドライフこそ、資産としっかり向き合って、自分の代わりにお金を働かせるという発想が必要になるのです。

 多くの人にとってセカンドライフの収入の糧となるのは年金でしょう。少子高齢化で受給者は増える一方で、制度を支える働き手は少なくなっている日本では、年金だけで豊かな老後を過ごすのは難しくなっていくかもしれません。年金の支給開始年齢は現在、65歳ですが、引き上がる可能性も十分あります。さらに2004年の年金改革で導入されたマクロ経済スライドは、簡単に言うと将来に渡り年金制度を維持するために、年金支給額を抑制する仕組みです。現状のようなインフレが継続すると、年金支給額が物価上昇に追い付かず、実質的には支給額が減っていくことになります。

 厚生労働省が公表する「2019年財政検証結果」によると、2046年度の標準的な厚生年金の所得代替率は、最も楽観的な見通しでも51.9%です。現役時代の収入の約半分しか厚生年金で賄えないということです。

 ちなみに現在の厚生年金の所得代替率は61.7%です。年金の価値は今後20年強で現状よりもさらに目減りするわけです。20年後の年金支給額の水準は現状の7~8割で、支給開始年齢も65歳以上に引き上げられると考えていたほうが無難です。そして私たちはこれを補う戦略を持つ必要があるのです。

余命1年と宣告されたら誰に会い、どこに行きたいか

 私はファイナンシャルプランナーの役割を、お客さまの求める幸せを実現するために、お金の面からアドバイスしたり、一緒に戦略を立てたりすることだと考えています。その職務を全うする上でいつも行っているのが、自分にとって幸福度の高いセカンドライフとはどのようなものか、お客さま自身に定義してもらうことです。

 もしあなたが余命1年と宣告されたら、会っておきたい人や訪れてみたい場所、やり残したことはありますか。まずはそれを具体的に考えてください(図表①)。そしてその次の問いになるのが「なぜいまそれを実践しないのか」です。余命1年になるまで待つのではなく、優先順位の高いことから順番に実現してほしいと思います。これが本当の意味でのライフプランではないでしょうか。この2つの問いにしっかり向き合うのが先で、お金をどう用意するかは、その後で考えればいいと思います。

図表1:自分にとって幸福度の高いセカンドライフを定義する

図表1:自分にとって幸福度の高いセカンドライフを定義する

 お金を準備するうえでぜひ知っておいてほしいのが、健康上の問題なくリタイア後に過ごせる期間は、意外と短いということです(図表②)。もちろん個人差はありますが、私自身、母の介護経験を通じてそのことを実感します。やはり老後の前半と後半では、日々の過ごし方や食事の量、活動への意欲などが全く異なりました。

図表2:元気で動ける時間は意外と短い

図表2:元気で動ける時間は意外と短い

出所:厚生労働省「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」(2021年)

 そこで私から提案したいのは、60~75歳のセカンドライフ前半にお金を厚めに配分して人生を楽しむ、「前厚(まえあつ)」型の資金計画です。毎日を自由に設計して楽しく豊かに暮らせれば、人生の満足度は高まると思います(図表③)。もちろん、セカンドライフ後半に向けて、医療や介護に備えることも大切です。それらは人生を楽しむための前厚にしたお金とは異なる、使ってはいけない資金として確保しておけばいいでしょう。

図表3:“前厚”の考え方

図表3:“前厚”の考え方

 老後資金を使う時期や使途に応じて大きく短期・中期・長期に分け、それぞれにふさわしい保有方法で色分けしておくのも一案です。医療・介護資金では運用型の保険などがその受け皿になります。長期的には外貨建ての資産を持つことも有効です。

 こうした考え方は、必ずしも合理的ではないかもしれません。しかし、お金を色分けすることで、心置きなくセカンドライフを謳歌できるのであれば、とても意味があると思います。

 変化の激しい時代だからこそ、変化に負けず、変化を楽しむ人生を送りたいものです。そのためにも資産運用を通じてインフレに負けないリターンを目指しつつ、年金の目減りや医療、介護の費用などにも備えておくことが肝心なのです。

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