人生100年時代FORUM イベントレポート 人生100年時代FORUM イベントレポート

プラチナ講演
インベスコ・アセット・マネジメント株式会社

世界経済の環境が変わり、銘柄選択が重要に
アクティブ運用の“腕”が試される時代

  • インベスコ・アセット・マネジメント株式会社リテール営業本部 ヴァイス・プレジデント
     佐藤 那奈氏

変化と成長、そして分断世界分散投資がより重要に

 100年前の世界では、例えば電話は今と全く異なる形をしていました。私が小さかった頃はプッシュ型の電話機で、ダイヤル式の電話も残っていました。現在は1人1台スマートフォンを持つ時代です。電話ひとつ取ってみても、時代の変化の大きさがわかります。

 大切なことは、変化を受け入れ、活用していくことです。私の祖母は92歳にしてスマホデビューをしました。私の娘とのビデオ通話や、私が送った動画を見るのを楽しみにしているようです。祖母は電話の変化を自分の生活に取り込むことで、より楽しい毎日を送れるようになりました。

 では、資産運用はいかがでしょうか。祖母が若い頃は、資産運用といえば預金と自社株だけだったそうです。当時は今と違って、投資できる商品も限られていました。現在では世界各国の株式や債券、不動産など、誰もがあらゆる資産に投資できます。また、昔は株式を売買するのにも窓口での手続きが必要でしたが、今はパソコンやスマートフォンで、ボタンを数回押すだけで取引できる時代です。こうした変化を受け入れて、ご自身の資産運用に活用していくことで、より豊かな人生を実現できるのではないかと思います。

佐藤 那奈氏

インベスコ・アセット・マネジメント株式会社
リテール営業本部 ヴァイス・プレジデント
佐藤 那奈

資産運用で重要な視点の1つが、「グローバルな視点で投資を考える」ということです。世界の株式市場は、これまでさまざまな危機を乗り越えてきました。世界経済の出来事とともに、過去を振り返ってみましょう(図表①)。1970年以降、オイルショックやブラック・マンデー、米国同時多発テロ、リーマンショックなどの金融危機があったものの、長期的には株価指数は順調に上昇し、この50年で約124倍に成長しました。今後もさらなる技術革新などにより世界経済が拡大を続け、株式市場も成長していくことが期待されます。

図表1:さまざまな危機を乗り越えてきた世界株式

図表1:さまざまな危機を乗り越えてきた世界株式

出所:ブルームバーグ、各種報道等 *1970年1月末と2022年12月末との比較
期間:1970年1月末~2022年12月末、1970年1月末を100として指数化。世界株式:MSCIワールド・インデックス(米ドルベース)、配当込み、月次データ。
上記は過去のデータであり、将来の成果を保証するものではありません。

 ただし、今後の株式投資を考えるにあたり、ひとつ注意すべきことがあります。それは、長きにわたって続いてきたグローバリゼーションの終わりです。近年の米中対立やロシアのウクライナ侵攻、イスラエル・ガザ紛争などに見るように、世界は分断を深めつつあります。

 現在の世界は3つの極に分けられます(図表②)。1つは日本や米国などの、G7と呼ばれる先進諸国。G7と対立する中国・ロシアの権威主義陣営。そして、現時点で両陣営とも距離を置いている、インドを筆頭とする「グローバルサウス」と呼ばれる新興国。この3極の分断状態が当面は継続して、国際社会は不透明感を高めていくことになりそうです。

図表2:分断される国際社会

図表2:分断される国際社会

出所:各種報道資料

 だからこそ資産運用においては、さまざまな国や地域に分散して投資することが、これまで以上に重要になると私たちは考えます。

不透明感が高まる市場で求められるアクティブ運用

 私たちが世界株式に投資信託で投資する場合、大きく2つの考え方があります。ひとつがインデックス運用。もうひとつがアクティブ運用です。

 インデックス運用はパッシブ運用ともいい、株式市場に連動する成果を目指します。一方、アクティブ運用は株式市場を上回るパフォーマンスを目指します。最近では、長期投資といえば運用コストが安いインデックス運用が推奨されることが多いですが、私たちの見解は異なります。不透明な国際情勢の中では、これまでのようなインデックス運用だけでは、皆さまが期待する運用成果を得られにくくなると考えています。

 図表③は、インデックス運用とアクティブ運用の特徴を比較したものです。アクティブ運用の手数料が高いのは、個々の企業を丹念に調査するためにコストがかかるからです。ただし、その結果として、インデックス運用を上回るパフォーマンスが期待できます。そして、インデックス運用にはないアクティブ運用の利点が運用の柔軟性です。市場が大きく動く局面で、文字通りアクティブに銘柄を組み替えることができます。

図表3:インデックス運用とアクティブ運用の比較

図表3:インデックス運用とアクティブ運用の比較

出所:インベスコ、MSCI 図はイメージです。また上記の比較表は簡略的なものであり、実際とは異なる場合もあります。
※GAFAMとは、IT企業の雄である5社(Alphabet(Google)、Amazon、Meta(Facebook)、Apple、Microsoft)の頭文字を取った呼び名のことです。
 上記銘柄への投資を勧誘・推奨するものではなく、将来の組み入れまたは売却を示唆・保証するものではありません。
※組入銘柄の分散で示した15%の数値は2023年9月末のMSCIワールド・インデックスの構成比率。

 そして最も重要な点が、組み入れ銘柄の分散についての相違です。インデックス運用は幅広い企業にまんべんなく投資するイメージがありますが、実態は必ずしもそうではありません。近年、米国のグーグルやアップルなどのGAFAMと呼ばれる企業群の株価が大きく上昇しました。2023年9月末時点で、世界株式の代表的な株価指数の中で、GAFAMの5社が占める割合は15%を超えています。この状況で、本当に投資先が分散できていると言えるでしょうか。

 アクティブ運用とひと口に言っても、その内容はさまざまです。わかりやすいのは、例えばハイテク銘柄に特化して投資するような「テーマ型」でしょう。もちろんそうした運用手法もありますが、テーマにかかわらず、純粋に世界の優れた企業を選りすぐるアクティブ運用もあります。大切なことは、世界のさまざまな企業の将来性をしっかりと見極めて、投資する銘柄を厳選することに他なりません。

 ここ十数年は、世界的に超低金利時代が続きました。金融緩和政策の影響で世の中には流通するお金の量が増え、「株式市場は全体的に上がった」時期でした。しかし、2022年から米国が利上げに転じたことで、世界経済のすう勢は大きく変わりました。これからは「市場全体が上がる」時代ではなく「優れた企業を厳選する重要性が高まる」時代に入ってくるのではないでしょうか。まさに私たちのような、アクティブ運用のマネージャーの腕が試される時代が来たと考えています。

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