投資信託講座
金融商品を選ぼう
金融商品の選び方
■ 自分に最適な資産配分ってどういうこと?どうすれば判るの?
みなさんがお金を運用するとき、その株式が儲かるかどうか、どの投資信託の分配金が多いかなど、一つの商品を選択することばかりに目を向けていませんか?
実は、どの投資信託で運用するかよりも、みなさんの資産全体をどの資産にどの程度振り分けるかという「資産配分」の方が、資産運用においては重要なのです。「資産配分」を作った時点でその投資が成功するか失敗するかの大半が決まるとさえいわれるくらいです。では、どのように「資産配分」を決めればいいのでしょうか。
資産配分する前に
- ステップ1.みなさんのライフプランを作成します
- ステップ2.1をもとに必要な資産残高の推移を考えます
- ステップ3.2をもとに必要となる運用利回り(何%で運用したらいいか)を決めます
- ステップ4.3から資産配分を決めます
まず、1.みなさんの収入、支出、年齢、趣味、家族構成などからライフプランを作成します。自分の今後の人生におけるイベントを書き出してみましょう。その際、教育、住宅購入、老後生活の三大資金をはじめ、結婚や出産などの資金なども想定してみます。2.そして、何年後にいくら必要なのかを考えます。
次に3.このライフプランを実現するために必要とする「運用利回り」を計算します。「運用利回り」は現在あるお金を将来決まった金額にするために必要な運用目標になります。「運用利回り」の計算は、Excelや関数電卓で計算することができますが、面倒な場合は、ウエルスアドバイザーの「金融電卓」を利用しましょう。
さて、仮にみなさんが今持っているお金を年率5%で運用すると決めたとします。ところが年率10%以上で運用される商品で運用したとするとどうなるでしょう。高い利益が出るならそれに越したことないと思うかもしれませんが、一般に、収益の高い商品は「リスク」も高い(値動きのブレの大きい)商品と考えられます。高い収益性の商品に投資した資金はそれだけ危険にさらされることになるわけです。5%の運用でライフプランを実現することが出来れば、あえて10%の運用をしてリスクをとる必要もないでしょう。
運用利回りを決定することが、その人の最適な資産配分につながります。
実際に、資産配分してみよう
- (1)代表的な3タイプを参考にする
- (2)運用会社や販売会社、評価機関などで提供されているサービスを利用する
「資産配分」には、運用会社や販売会社、評価機関などで提供されているサービスを利用することもできますが、ここではおおまかに代表的な3つのタイプ「安定運用タイプ」、「スタンダードタイプ」、「積極運用タイプ」をあげて、自分にあった最適な資産配分を考えてみましょう。
「資産配分」は自分が何%くらいの運用利回りを目標にするかによって変わってきます。目標利回りが年率3%未満の「安定運用タイプ」、目標利回りが年率3%以上5%未満の「スタンダードタイプ」、目標利回りが年率5%以上8%未満の「積極運用タイプ」の3タイプに分けて資産配分を考えてみましょう。
さて、その前に複数の資産に「資産配分」する意義を考えておきましょう。株式や債券にはそれぞれ値動きの特徴があります。一般的に債券より株式が、日本よりも海外の資産の方が、リスクが高くなる傾向にあります(詳しくはB09をご覧ください)。ところが、これらの資産を組み合わせて運用することでリスクやリターンを自由自在に変化させることができるのです。
●各資産を組み合わせると、どうなるの?
下の図表は、3年間の各資産の値動きを表したものです。「収益率」は3年前と現在の変化率(年率)、「値動きの幅」は3年間の値動きの大きさを表しています(これを「標準偏差」といい、数値が大きければ大きいほど値動きが大きいことを表します。詳しくは関連ページをご覧ください)。
各資産を組み合わせることで収益率と値動きの幅が変化します。どのように変化したかを見てみましょう。
各資産を組み合わせた場合の収益率と値動きの幅(年率)
国内株式 | 国内債券 | 国際債券 | 国内株式:国内債券 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
30:70 | 50:50 | 70:30 | ||||
収益率 | 18% | 1% | 10% | 6% | 9% | 13% |
値動きの幅 | 14% | 2% | 6% | 4% | 7% | 9% |
国内株式50%と国内債券50%を組み合わせると、国内株式のみの値動きの幅14%に比べ、その値が7%へ低下しています。また、国内債券のみの収益率1%と比べ、その値が9%に上昇しています。
また、株式の組入比率を高めるほど、収益率が高まっていることがわかります。国内株式30%(国内株式:国内債券=30:70のケース)では収益率は6%、国内株式を50%(国内株式:国内債券=50:50のケース)まで引き上げると9%、更に70%(国内株式:国内債券=70:30のケース)まで引き上げると13%の収益率が期待できます。
一方、値動きの幅は上昇していることにも注意しましょう。株式30%(国内株式:国内債券=30:70のケース)の組入れでは4%の値動きの幅が、株式50%(国内株式:国内債券=50:50のケース)では7%へ、株式70%(国内株式:国内債券=70:30のケース)では9%へ値動きの幅は上昇しました。
●リスクって何?
「リスク」とは、日本語で「危険」と訳されますが、資産運用においては価格の変動の大きさを指し、「標準偏差」という数値で表します。「各資産を組み合わせると、どうなるの?」では、日本株式の「値動きの幅」が14%と表示されていますが、これが「標準偏差」と呼ばれる指標です。
これは平均的な収益率から年間マイナス14%からプラス14%まで変動する確率が3分の2程度(約68%)あることを示します。つまり3回に2回の確率で日本株式の収益率は4%(計算式:18%-14%)から32%(計算式:18%+14%)の間におさまることを示します。
では、実際に利回りごとにどのような資産配分が考えられるのか、代表的な3つのタイプと、その資産配分をみてみましょう。
【タイプ1】目標利回りが3%未満の「安定運用タイプ」
国内株式 | 先進国株式 | 国内債券 | 先進国債券 |
---|---|---|---|
20% | 10% | 40% | 30% |
目標利回りが3%未満のみなさんは、安定運用タイプにあてはまります。株式よりも値動きの幅の低い債券の比率を高めて、安定的に運用しましょう。
【タイプ2】目標利回りが3%以上5%未満の「スタンダードタイプ」
国内株式 | 先進国株式 | 新興国株式 | 先進国債券 | 新興国債券 |
---|---|---|---|---|
20% | 20% | 10% | 30% | 20% |
目標利回りが3%以上、5%未満のみなさんは、スタンダードタイプに当てはまります。株式と債券をバランスよく配分しましょう。
【タイプ3】目標利回りが5%以上8%未満の「積極運用タイプ」
国内株式 | 先進国株式 | 新興国株式 | 先進国債券 | 新興国債券 |
---|---|---|---|---|
10% | 30% | 30% | 20% | 10% |
目標利回りが5%以上8%未満のみなさんは、積極運用タイプに当てはまります。このタイプは先進国や新興国の株式の比率を高めることが必要です。
目標利回りが8%以上のみなさんには、残念ながら投資信託での資産運用はおすすめできません。なぜかと言うと、単年で8%以上のパフォーマンスをあげることのできる投資信託は多数ありますが、継続して毎年8%以上のパフォーマンスを達成している投資信託を見つけるのは至難の業だからです。もう一度ライフプランから見直ししてみましょう。
※ウエルスアドバイザーの「金融電卓」から作成
資産配分をキープしよう
さて、「資産配分」どおり、複数の資産を組み合わせたとしましょう。ところが、みなさんが決めたこの「資産配分」は、そのままにしておくとどんどん変わっていってしまいます。なぜなら、株式投資信託や公社債投資信託は日々値動きしているからです。株式の値段が他の資産以上に値上がりすれば、株式の比率は高まりますし、逆に値下がりすれば、比率は低くなります。
このような「資産配分」の比率を、もとの比率に戻すことを「リバランス」といいます。つまり、増えた資産を売って、減った資産を買い増すのです。「リバランス」は、みなさんの当初の運用目的に合わせるために重要な作業ですが、それ以外にも収益性を高める効果があるといわれています。株式市場や債券市場など、市場全般は日々上がったり下がったりを繰り返します。本来、投資とは、安い時に買い、高い時に売ることが好ましいのですが、これは投資のプロでも難しいことです。このような相場で「リバランス」は自動的に高い資産を売って利益を確定し、安い資産を買って値上がりを待つため、収益性が高まるのです。ただ、リバランスを行なうということは、売り買いが伴うため、手数料や手間がかかります。そのため、頻繁に行なうことはよくありません。だいたい1年に1回程度行なうのがベストでしょう。
どうしても面倒な場合は
そうはいっても、やはりそんなに手間がかかるのは嫌!という人もいるでしょう。投資信託のなかには、バランス型ファンドといって株式や債券、REITなど複数の資産を固定配分で組み入れている投資信託があります(固定配分でない投資信託もあるので、投資信託説明書で投資方針を確認しましょう)。このタイプは、プロ(ファンドマネジャー)の手によって「リバランス」が行われるため、わずらわしい管理が必要なくなります。