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インデックスファンドの積立投資にプラスαを乗せる分散投資、「半導体」の次は?

2024/04/15 18:03

 外国株式を投資対象とした投資信託で、過去1年間のトータルリターンが大きかった(2024年3月末基準)のは、トップが「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」で106.94%、第2位が「インベスコ 世界ブロックチェーン株式」で86.95%、第3位が「iFreeNEXT FANG+インデックス」の86.91%だった(レバレッジ型を除く)。特定の産業やテーマに特化した投資信託ばかりになった。安定的に高いリターンを記録している米株指数「S&P500(配当込み、円ベース)」のトータルリターンが49.40%を大幅に上回る運用成績を実現した実績から、分散投資の効果について考えたい。

 今年から始まった新NISAの影響もあって、投資信託の売れ筋のトップは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」で、第2位は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」になっている。2020年3月の「コロナ・ショック」で世界経済が一瞬で凍結した後、経済再開をリードしたのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を背景にしたデジタル経済への急速な移行だった。米アップルのiPhoneを使って、米メタ・プラットフォームのFacebookやInstagramで情報のやり取りをし、米アマゾンのオンラインショップで買い物をする。コロナ禍で外出制限にあった時に、米Zoom社のオンライン会議システムを使って会合することが当たり前になった。ポスト・コロナの時代で当たり前となった日常サービスの提供者として米国企業の存在感が急速に高まった。

 そして、2022年11月30日に米オープンAI社が生成型AI「ChatGPT」を公開すると、ほぼ一夜で全世界規模で爆発的な話題を集め、これからの時代のインフラに「AI(人工知能)」が大きな役割を果たすことが確信された。そのAIの活用によって、従来とは比べ物にならない高速・大容量のデータセンターが必要とされ、そこで利用される膨大な量の半導体の需要もまた、確実なものと確信させられた。

 このような世界経済の流れを株式市場は、如実に表現している。2020年3月を大底にしての株価の回復局面で市場を主導したのは、一貫して米国株式だった。中でも、ハイテク大型株の比率が高い「NASDAQ100」や「S&P500」の上昇が目立った。そして、「ChatGPT」の登場以降は、AI向け半導体の世界的なリーダーと目されていた米エヌビディアの上昇に拍車がかかり、2023年にはエヌビディアを含む米国ハイテク大手7社を「マグニフィセント・セブン(GAFAM=グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)+テスラ、エヌビディア)(=M7)」といわれる7銘柄への集中投資が起き、「S&P500の上昇の80%はM7の株高で説明できる」とまでいわれた。

 世界の株式市場は、米「S&P500」を軸にした米国株主導の展開が続いた。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、新興国も含む全世界の株式市場を対象とした株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」に連動するインデックスファンドだが、時価総額の大きな企業の組み入れが多くなる仕組みとなっており、「MSCI ACWI」に占める米国株の比率は6割超に達している。過去数年の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の上昇に、米「S&P500」の上昇の影響は、非常に大きかったと言わざるを得ない。

 過去1年間のパフォーマンス上位投信には、この市場の動きが色濃く出ている。トップの「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」は、文字通り、半導体産業の隆盛を映している。中でも、組み入れ筆頭銘柄のエヌビディアの株価上昇が、同投信のパフォーマンスを大きく引き上げたといえる。半導体関連産業には、よく知られている「シリコンサイクル」という好不況の波がある。半導体の製造には莫大な設備投資が必要で、その設備の更新にあたって設備投資負担や旧式半導体の在庫増や値崩れのために、半導体関連企業の業績が大幅に悪化する傾向がある。かつては3年〜4年のサイクルが指摘されていたが、近年はこのサイクルが短期化しているという指摘もある。直近では、2022年第1四半期(1月−3月)がサイクルのピークで、2022年の後半に市況が悪化し、2023年第1四半期を底にして回復し始めている。2023年のエヌビディアの上昇は、「ChatGPT」によるAI実用化の期待とともに、シリコンサイクルの回復も後押しした。

 また、第3位の「iFreeNEXT FANG+インデックス」は、まさしく「M7」への集中投資の成果そのものを映したといえる。同投信の組み入れ銘柄は、「M7」に加えてネットフリックス、ブロードコム、スノーフレイクの10社になっている。2023年から2024年2月まで一直線に値上がりしたが、「M7」への集中投資への反省が言われ始めたこともあって2024年3月以降は横ばいになっている。

 一方、「インベスコ 世界ブロックチェーン株式」は、ビットコインなどといった暗号資産などに使われる技術である「ブロックチェーン」関連産業の成長に投資する。この投信は、ビットコインの価格が2023年1月を起点に、日本円で223.5万円から2024年3月末には1055万円に大幅に上昇したことなどがパフォーマンスの手掛かりになっている。ビットコインについては、ひとつには4年ごとにやってくる「半減期(新規発行ペースが4年に一度半減するルール)」の接近による需給ひっ迫、そして、ビットコインに投資するETFが承認されそうだという見方が2023年に強まり、実際に、2024年1月10日にビットコインの現物を運用対象とするETF11本が上場承認されたことなどが材料になった。世界経済等の動きとは直接関係ない業界の動きによる価格変動といえる。「インベスコ 世界ブロックチェーン株式」はビットコイン価格が低迷していた2022年は同じく低迷していた。2023年からビットコイン価格の上昇にけん引されるように大きく基準価額が上昇した。

 新NISAを使った投資で、「全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」などのインデックスファンドの積立投資を選択している投資家が少なくない。世界経済の成長・発展を投資成果に結び付けようという考え方に基づいて「全世界株式(オール・カントリー)」のインデックスファンドに長期投資するという考え方は良しとされ、その中で中核を占めるであろう米国株「S&P500」を選んで、より高い成長を狙うという考え方も間違いではないだろう。5年、10年という長期で考えれば、景気の良し悪しを超えて世界経済が成長した分に合わせた投資成果が得られると期待できる。

 そこに、プラスαの投資成果を求める場合、「半導体産業」や「ブロックチェーン」など、世界経済の大きな流れとは異なる要因で、より高い成長が期待できる分野に投資する投信を追加で保有することも考えたい。「ロボットテクノロジー」、「AI(人工知能)」、「自動運転」、「宇宙開発」、「温暖化対策」など、様々なテーマに特化した投信が存在する。過去1年間は「半導体」と「ブロックチェーン(ビットコイン)」が大きな評価を得たが、今後は何が評価を高めるのか、様々な要素を考えてみたい。インデックスファンドに比べて2倍の上昇率を稼ぎ出す実績を考えれば、次の成長分野をポートフォリオに組み入れる価値は決して小さくはないだろう。(グラフは、過去1年の高リターン投信のパフォーマンス推移)