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史上最高値を連日更新し続ける金(ゴールド)への投資、株式投資のヘッジ手段としても有効

2024/04/04 18:03

 金(ゴールド)価格の上昇が止まらない。4月3日のNY金先物価格の終値は2315ドルで3月26日以来、6営業日連続で史上最高値を更新している。これは3月28日を高値に3営業日連続で最高値更新がならず、足踏みしている米国株式「S&P500」とは異なる値動きになっている。そもそも株式と金(ゴールド)の価格は、それぞれに異なる理由で動くもので、古くから分散投資の一環として、株式をコア資産として保有する場合は、資金の一部で金(ゴールド)を保有することによって株価の価格変動リスクを低減することができると推奨されてきた。近年、金(ゴールド)を投資対象とする投資信託の運用コストも大幅に低減している。改めて、不測の事態に備える金(ゴールド)への投資も検討してみたい。

 生涯非課税投資枠が1800万円という新NISAのスタートによって、資産運用を始めたという人、また、資産運用を検討している人が少なくない。その場合、第一の選択肢になっているのが、内外の株価指数(株式インデックス)への連動をめざす「インデックスファンド」による積立投資だ。インデックスファンドについては、ここ数年の手数料引き下げ競争によって、運用コストである信託報酬率が年0.1%を下回るものも多く出てきている。低コストのインデックスファンドを選ぶことによって、日々ニュースにもなる株式インデックスの値動きと変わらないパフォーマンスを得ることができるようになった。

 その新NISAで始める資産形成において、最も多くの人が選択している投資対象は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」ということができ、そして、最も使われている株式インデックスが「S&P500」ということになるだろう。「S&P500」に連動するインデックスファンドは、運用会社各社から信託報酬が0.1%以下の水準のファンドが出されており、人気が分散している。そして、運用成績ということにフォーカスすると「S&P500」が圧倒している。たとえば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のトータルリターンを比較すると、過去1年間では35.21%対42.56%、過去3年(年率)では19.47%対24.94%、過去5年(年率)でも17.40%対21.44%と、「S&P500」が圧勝している。

 この非常に優れたパフォーマンスを残している「S&P500」の値動きと「NY金先物」の動きを重ねてみると、その価格変動の仕方に関連性が薄いことがわかる。これは、株式と金(ゴールド)の値動きの要因が大きく異なることによる。株式の場合は、基本は企業業績(実態と今後の予測)の良し悪しが株価を動かしている。企業業績が伸びていて、今後も伸び率が拡大すると見通せる局面では株価は大きく上がり、反対に、企業業績の見通しが悪い時には株価値上がりの勢いが鈍り、企業業績が大幅な赤字など悪化する見通しの場合には株価は下げる。企業業績は好景気の時に伸びやすいため、景気が良い時ほど株価は上がりやすいという傾向がある。

 この点、金(ゴールド)は景気の良し悪しで価格が動くものとは言えない。景気が悪く、中央銀行が金利を引き下げて景気浮揚策に打って出るような場合には、金利低下による通貨価値の下落を理由に金価格が上昇することもあるが、最も金価格が動きやすいのは「有事の金」といわれるような「安全資産としての金」への評価だ。戦争によって地域経済が大きなダメージを受けるような時に、金(ゴールド)の価格が急上昇する場合がある。また、「インフレに強い資産」としての金(ゴールド)の価値も根強い。かつては通貨として使われていた金(ゴールド)には普遍的な価値があると目され、インフレが高進して通貨(貨幣)の価値が毀損するような時に、金価格が上昇する傾向が強い。

 「戦争」や「インフレ」、「好不況」などは、それぞれに何らかのつながりがあるものであり、その点で「株価」と「金価格」の動きに相関がゼロというわけではないのだが、それぞれの要因が価格に与えるスピードやインパクトの大小などが、株式と金(ゴールド)では異なるため、特に、株式を主たる投資対象として資産運用をする場合は、その価格下落リスクをヘッジするために金(ゴールド)の保有に価値があるとされる。

 ただ、「株式」や「債券」、「REIT(不動産投資信託)」などは、配当や利息などのインカム収入が期待できるが、「金(ゴールド)」にはインカム収入がない。価格変動がない限り、保有しているだけでは収益を生まない資産だ。このため、「株式」などと比較すると金(ゴールド)の保有は一部にとどめたほうが良いとされる。

 現在、金(ゴールド)を投資対象とする公募投資信託の中で、もっとも残高が大きいのは「三菱UFJ純金ファンド(愛称:ファインゴールド)」だ。過去1年間のトータルリターンは22.27%であり、株式インデックスファンドには見劣りするものの、しっかりとしたリターンは残している。メインの投資を株式インデックスファンドと位置付け、金(ゴールド)への投資は「ヘッジ目的」と考えるのであれば、その「ヘッジ目的」の役割を果たしつつ、なおかつ、年間で2ケタの成長が期待できるのは望外の成果といえるのではないだろうか。

 しかも、近年の傾向として金(ゴールド)を投資対象とした投資信託の運用コストも低下する傾向が強まっている。そもそも金(ゴールド)に投資するファンドは、投資のメインストリームにはなりづらく、大きな残高が期待できないため、運用コストは高止まりしがちだ。最大ファンドの「三菱UFJ純金ファンド(愛称:ファインゴールド)」の信託報酬率は年0.99%(税込み)であり、ファンドラップ専用の投資信託でも年0.5%程度になっていた。それが、「SMTゴールドインデックス・オープン」は年0.28%(税込み)であり、「SBI・iシェアーズ・ゴールド」は年0.18%(税込み)という水準になっている。メインの投資対象に年0.1%程度の手数料率で投資しているのに、ヘッジ目的で投資するファンドに年0.5%〜1.0%の手数料を支払うということには大きな抵抗もあっただろうが、それが年0.2%程度になれば、投資することについての抵抗感は小さくなろう。現実的な選択肢として、資産形成のリスクヘッジとしての側面も評価して金(ゴールド)への投資も検討してみたい。(グラフは、米国「S&P500」、NY金先物、WTIの推移)