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新NISAで買える投信(5)、「成長投資枠」の高パフォーマンス銘柄の特徴

2024/02/28 16:51

 今年1月にスタートした新NISAは、1人当たりの投資収益非課税枠が1800万円、非課税対象期間も無期限ということもあり、これを機に投資をスタートする人も少なくないと考えられる。折しも、日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新し、株式投資についての関心が高まっている。「新NISAを使って何に投資すれば、最も効果的に運用ができるだろうか」と考え中の方も少なくないと考える。そこで、新NISAで購入できる主な投資信託の種類やその特徴について概観してみたい。ここでは投資信託協会や金融庁が発表している商品リストに基づいて紹介する。実際には、個々の金融機関によって取り扱いの有無が生じることにご留意いただきたい。「成長投資枠」で買える商品は、2月27日現在で2179銘柄。選択肢が幅広く、3年(年率)トータルリターンが高い上位3銘柄を見るだけでも、「成長投資枠」対象銘柄の多様性がうかがえる。

 「つみたて投資枠」は、低コストの株式インデックスファンドのイメージが強く、しかも、現在の対象ファンド数はETF(8本)を加えても281本しかない。約6000本もある投資信託の中で、ごく一部の銘柄になっている。これに対し、「成長投資枠」は2月27日にも対象ファンドが1本追加され、一般の公募投信が1878本、ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)など上場しているファンドが301本と合計2179本もある。(1)信託期間が20年以上、(2)ヘッジ目的以外でデリバティブを活用しない、(3)毎月分配型ではない――などの条件はあるものの、「つみたて投資枠」にある株式を中心にした資産構成であること、信託報酬率の上限などといった条件はない。このため、「成長投資枠」には「つみたて投資枠」にはない商品性の広がりがある。

 「成長投資枠」の多様な商品性を感じさせるのは、2024年1月末現在で3年(年率)トータルリターンが上位3銘柄の顔ぶれをみるだけでも理解できる。この3銘柄は、いずれもアクティブファンドで、代表的なインデックスを上回る成績を残している。「成長投資枠」には、インデックスファンドよりも、「より高いパフォーマンスを獲得したい」というニーズにも応えることができる投資信託もあるということは、大きなアピールポイントの1つだ。

 パフォーマンスの第1位は、「HSBC インド・インフラ株式オープン」で3年(年率)トータルリターンは41.38%になる。過去1年のトータルリターンは66.66%を記録している。ファンド名のとおり、インドのインフラ(道路、鉄道、港湾、空港、灌漑、電力、通信、公共住宅など経済発展のために不可欠な社会基盤)関連株式に投資するファンドだ。インドでは、今年総選挙が予定され、2期10年首相を務めたモディ首相が、好調なインド経済を背景に高い支持を集めて3期目の首相を務めることになると予想されるが、この総選挙を控えて、2023年には経済貢献をより実感しやすいようにインフラ整備に関する投資が前倒しで実施されたようだ。2023年のインド・インフラ関連株の上昇には、このような政治的な背景が指摘されているものの、それを見事に捉えてパフォーマンスに反映させた同ファンドの運用力が光っている。なお、インドのインフラ関連株に投資するファンドでは、パフォーマンスランキングの第4位に「SBI・UTIインドインフラ関連株式ファンド」が3年(年率)34.98%で入っている。

 第2位は3年リターンが37.11%の「シェール関連株オープン」だった。米国、カナダおよびメキシコのシェール関連企業の株式を投資対象としたファンドだ。米国株式については、マイクロソフトやアマゾン、あるいは、半導体のエヌビディアなど情報技術(IT)に関連のある企業の高成長が注目されがちだが、それらとは関連性の低いエネルギー関連の株式に投資して高収益をあげているユニークなファンドだ。原油価格が高止まりし、世界的なインフレ(物価高)の要因にあげられるが、この状況が続く環境では、同ファンドが投資するシェールガス/オイルに関連する企業の業績も堅調な状態が続くと期待される。こちらは、米国景気等に減速懸念が高まってきていることなど、今後の成長が鈍化する見通しが気にされたのか、過去1年のリターンは9.31%と過去3年の中では成長が鈍化している。

 第3位は「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体) 」だった。3年(年率)リターンは35.04%だったが、1年リターンは88.83%と非常に高い運用成績になった。世界の半導体関連株式に投資する同ファンドは、新興国を含む全世界の株式を投資対象としたファンド群の中では、過去1年、3年、5年、10年という期間で第1位の運用成績になっている。半導体関連企業の株式は、「シリコンサイクル」といわれる半導体の需要期と在庫調整期の波によって業績が低迷する時期が数年に1度訪れる。その低迷期のために2022年はマイナス成長になってしまったが、2023年はその不振を大きく取り戻す上昇となった。

 現在、新NISAにおいても「全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」に連動するインデックスファンドが人気を集めている。この2つのインデックスファンドは、投資対象こそ「全世界株式」と「米国株式」で異なるものの、時価総額加重平均で組み入れ銘柄の投資比率を決めることから、組み入れ上位の株式は、世界最大級の米国の大型株で占められる。具体的には、「マイクロソフト」、「アップル」、「エヌビディア」、「アルファベット」、「メタ・プラットフォームズ」などで、概ね組み入れ銘柄上位は米国株で占められている。「全世界株式(オール・カントリー)」でも「S&P500」でも投資先の多くが重なっている状況だ。「全世界株式(オール・カントリー)」の方が、より多くの銘柄に分散投資しているため、その分だけ値動きが緩やかになるが、米国株(S&P500)が下落する局面では、「全世界株式(オール・カントリー)」も下落してしまい、同じような値動きになっている。

 このような「全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」に対して、「成長投資枠」の高パフォーマンス銘柄が投資している株式は、投資先企業が大きく異なっている。「全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」などは、長期投資のコア資産として長く保有することが重要とされる資産だが、これに加えて、「HSBC インド・インフラ株式オープン」など、「成長投資枠」のパフォーマンス上位の投資信託にも併せて投資することによって、資産の分散を図ることができる。「S&P500」がマイナスになるような場面でも、「成長投資枠」の銘柄の上昇によって資産全体としてはプラスをキープすることができるかもしれない。中長期の資産形成のポイントは、特定の資産に投資することなく、できるだけ異なる値動きをする資産を分散して保有することがポイントの1つだ。様々な種類の投資信託がある「成長投資枠」の商品群は、コア資産として活用が期待される「つみたて投資枠」の商品のパフォーマンスを補完して強化する重要な役割を担うこともできることを忘れてはならない。(グラフは、「成長投資枠」の対象で過去3年の運用成績が上位3銘柄のパフォーマンス推移)