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好調続く「オルカン」「S&P500」との組み合わせ投資に「eMAXIS インド株インデックス」を新設

2024/02/16 17:51

 新NISAがスタートして1カ月余りが経過し、NISAで好まれる商品の傾向が見えてきた。新NISAの対象である投資信託の資金流出入(各投資信託の購入額と解約額の差異)をみると、2024年1月は、群を抜いて「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の純流入額3428億円が目立つ。次に、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の2079億円で、第3位の「楽天・S&P500インデックス・ファンド」が397億円の純流入額であったことから、他を圧して「eMAXIS Slim」の「全世界株式(オール・カントリー)」と「S&P500」に資金が向かったことがわかる。三菱UFJアセットマネジメントの分析では、1月の資金流出入状況で明確だったのは「ノーロード・インデックス・ファンド領域への明確な集中。資金流入額の70%を占めた」(デジタル・マーケティング部副部長の酒井香織氏)という。

 「ノーロード・インデックス・ファンド領域」とは、主にインターネット取引専用に提供されているノーロード(販売時手数料無料)で、低コスト(信託報酬率の水準が同種の他の商品と比較して低い)のインデックスファンドで、シリーズとして提供されているファンド群を指す。三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim」、大和アセットマネジメントの「iFree」、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」などのシリーズが代表的だ。2018年1月に「つみたてNISA」制度が導入され、「長期・分散・積立」の投資こそが資産形成の王道という考え方が広まるとともに、各シリーズにおける運用コスト(信託報酬率)の引き下げ競争が激しく繰り広げられた。その競争の中で、愚直に「業界最低水準」を標榜し、ライバルファンドが信託報酬率を引き下げると、それに応じて何度でも信託報酬率の引き下げを実施してきた「eMAXIS Slim」シリーズが、今では他のシリーズを圧倒する存在感を示している。

 その「eMAXIS Slim」シリーズを提供する三菱UFJアセットマネジメントから、新NISAでの個人投資家の投資需要をくみ上げる形で新たに設定するファンドが、2月22日に設定する「eMAXIS インド株式インデックス」だ。インドの代表的な株価指数「Nifty50」に連動する成果をめざす。新NISAの「成長投資枠」の対象ファンドとして提供する。信託報酬率は最低水準というわけではないが、ノーロードのファンドだ。信託報酬率の税抜き年率0.40%以内は、既存のインド株インデックスファンドでは「SMTAMインド株式インデックス・オープン」の0.28%には及ばないものの、「auAM Nifty50インド株ファンド」の0.425%、「iFreeNEXTインド株インデックス」の0.43%を下回っている。

 現状、「eMAXIS」シリーズにおける特定国のインデックスファンドは、日本と米国のみに限られているが、そこに新興国市場のインドを加えた理由について酒井氏は、「新NISAでの投資信託の活用意向を確認すると、コア(つみたて投資枠)とサテライト(成長投資枠)を組み合わせた投資戦略を検討する人が少なくなく、その場合はサテライトでより高いリターンを求める投資家からは新興国の特定国に対するニーズが想定される」とした。同社ではコア資産で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」などで圧倒的なシェアを獲得しているが、サテライトでも投資家ニーズに強く支持されるファンドを提供したい考え。

 そこで、主要な株式インデックスのリスク・リターンの関係(「S&P500」はリターン10.1%:リスク18.5%、「TOPIX」は5.7%:16.8%、「全世界株(除く日本)」は9.3%:18.9%など)から、よりリターンの高い特定国の株式インデックスを探すと、インド(15.8%:27.7%)、ブラジル(12.9%:37.6%)、韓国(12.6%:28.4%)などが浮上する(リスク・リターンの計測期間は2000年7月〜2024年1月)。その中でパフォーマンスが際立っているのが「インド」だ。また、足元でインド株ファンドへの資金流入も続いている。酒井氏は、「2000年代の新興国ブームや2014年発足のモディ政権への期待などから、インド株投信への資金流入は何度かあったものの、継続的な流入には至らなかった。今回は、主に非対面で販売されるノーロードインデックスファンドを通じた資金流入も大きく、過去のブームと比較すると、より長期の資金流入が期待される」とした。

 そして、ネット販売会社のイベントや同社のコールセンターなどを通じて「eMAXISシリーズでインド株式が欲しい」という声が多く寄せられたことも、ファンド新設の大きなきっかけになったと語った。

 今後のインド経済の見通しについて、戦略運用部経済調査室室長の入村隆秀氏はインド・ムンバイ等での現地取材の結果も踏まえて、「昨年7-9月期に前年比+7.6%という高いGDP成長率を記録したインド経済は、引き続きインフラ投資などの固定資本投資が景気をけん引し、2024年度も年率6%程度の経済成長が継続するものと期待される」とした。そして、「海外企業向けの研究開発、経営コンサルティングなどに加え、乗用車のデザインやハリウッド映画の特殊効果など幅広い業務を実施している『GCC(グローバル・ケイパビリティ・センター)』業務が急拡大している」と近年のインドのサービス業の拡大を紹介した。「1990年代はコールセンター業務で世界の英語圏の需要に応えて成長したインドは、2000年代にはソフトウエア開発で注目され、現在ではその他のサービスも拡大して大きな成長が期待されている」とした。そして、今年4-5月に5年ぶりとなる総選挙が開催されるものの、モディ首相の与党インド人民党が勝利する見通しであり、モディ政権が3期目に入り、これまでの路線が継続されるだろうと、政治的な混乱リスクも低いと語り、インド経済の高成長とインド株式市場の堅調な状況が継続するだろうとの見通しを示した。(グラフは、2024年1月に圧倒的な資金流入を記録した「eMAXIS Slim」)