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フィデリティのアナリストは向こう12カ月をポジティブに展望、日本は「他を圧倒するブライト・スポット」

2024/02/08 17:24

 フィデリティ投信は、フィデリティ・インターナショナルのアナリストが個別取材等の結果得ている知見を集約するため毎年実施している「アナリスト・サーベイ 2024」を発表した。今回で14回目になる同調査報告書では、世界のあらゆる地域を対象として今後1年間の有望なマーケットを展望しているが、今年のレポートでは日本を「他を圧倒するブライト・スポット」として特筆している。

 同調査は、世界中のアナリストが年間2万回を超える企業とのミーティング(平日は毎日、10分に1回の割合)を通じて培ったインサイトから、様々な地域やセクターのビジネスが今後1年、また、その先にどう変化するのかという見通しをまとめている。今回の調査は、2023年12月に実施され、137名のアナリストから回答を得た。

 フィデリティ・インターナショナルでは、アナリストに約80の質問を投げかけ、その回答をまとめることで、様々な国・地域やセクターが今後どのような動きを見せるのかを展望している。そして、その回答内容について、最も説得力のある回答をフォローアップし、ニュアンスを探り、その背後にあるストーリーを理解することによって、より有益な情報として一般の投資家にフィードバックするレポートにまとめて公表している。たとえば、10年前の調査では「情報技術やヘルスケアといったナレッジ・エコノミーを代表するセクターが、エネルギーや素材のようなセクターよりもはるかに良好なパフォーマンスとなる」と見通し、また、M&A、自社株買い、配当のブームなどについても予測してきた。これらの有効性に基づいて、調査結果は「クロスアセット・インベストメント・フォーラム」など社内での議論にも活用される貴重な資料の1つに位置付けられている。

 今回の調査結果の特徴は、過去2年間は「景気減速がどこまで深刻化するのか」という点が懸念されてきたものが、向こう12カ月の展望で「事業環境は拡大サイクルに入る」と予測するアナリストが61%と過半数を大きく上回ってきていることだ。そのような明るい展望の背景にあるのが、パンデミック以来初めて「企業のコストインフレが今後低下する」と予測するアナリストの割合が「上昇する」という回答を上回ったことがある。そして、急激な利上げが行われた後であるにもかかわらず、アナリストの60%は「2024年に重要な借り換えが必要な企業はない」と考えている。このような事業環境の改善を背景に、アナリストの52%は担当セクターが「現時点で拡大サイクルにある」と考え、「向こう12カ月で拡大サイクルに入る」と予想するアナリストは61%に達している。

 そして、今回の調査では、国・地域間での差が顕著になった。たとえば、企業の資本利益率(ROE)が改善すると回答したアナリストは全体では3分の1以下だったが、日本とアジア(除く中国)のアナリストは半数以上が改善を見込んでいる。アジア太平洋のインターネットセクターを担当するRahul Gupta氏は「企業はコストとマージンをうまくコントロールできるようになっている」と述べ、競争の減少と消費支出の増加が企業の追い風になっていると指摘している。

 有望なアジア市場の中でも、「日本」を高く評価している。2024年の売上高と利益の成長見通しは、他のどの国・地域よりも高く、設備投資、資本利益率(ROE)、増配、消費者へのコスト転嫁能力、そして、今後12カ月で事業環境が拡大するかという点で「日本は群を抜いている」とレポートしている。この背景は、「日本経済が20年以上におよぶ景気後退・停滞からようやく脱却し、幅広い分野で物価上昇の兆しが見え始めたから」としている。日本は、全てのアナリストが「少なくともある程度のコストを顧客に転嫁できる」と考えている唯一の国・地域になっている。これと対照的に、中国と北米のアナリストの16%は「企業はコストの上昇分を顧客に転嫁できない」と考えている。そして、日本の全アナリストは利益見通しに関して「経営者は今後12カ月で成長すると見込んでいる」と回答している。これは、中国で42%、欧州は24%が「経営者は利益成長を全く見込んでいない」と回答していることと対照的だ。日本について同レポートでは「欧米のようにインフレによって経済が下押しされるのではなく、むしろ、インフレが経済を押し上げる国として世界の中でも際立っている」と総括している。

 一方、今後の不透明要因として「選挙」が一部のセクター等に与える影響について懸念している。「2024年は世界のGDPの50%以上を占める国(米国、インドを含む76カ国に達する見込み)」で重要な選挙が予定されている。65%のアナリストが「企業は選挙について全く話をしていない」と回答しており、表面的には選挙のリスクは意識されていない。しかし、欧州の資本財・サービスセクターを担当するTristan Purcell氏は担当企業のファンダメンタルズに対する最大のリスクとして米大統領選をあげるなど、一部のセクターには重要なリスクとして意識されている。多くの企業において政治リスクについて社内で十分に議論していない点が盲点としてリスクになる可能性があると指摘している。

 レポートの締めくくりとして「ゼロ金利時代の終焉は常に緊張を伴うものだった。世界的な景気減速がどのような展開を見せるのか不確実性は根強く残る。しかし、2024年の『アナリスト・サーベイ』を見る限り、これまでのシステムはリセットされ、多くの企業が次に向かうサイクルは『減速・後退』よりも『拡大』であるという明確なサインが表われている」と結んでいる。世界の株式市場にとってはポジティブなメッセージといえる。(イメージ写真提供:123RF)