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日本は運用ビジネス成長への転換点、ピムコ・ジャパンの共同代表に就任したベンジャミン・ファーガソン氏

2024/01/31 15:33

 世界をリードする債券のアクティブ運用会社であるピムコ(PIMCO)ジャパンの共同代表者であるベンジャミン・ファーガソン氏(写真:右)は、「ピムコのビジネスにおいてアジア・パシフィック市場は成長の機会が大きな市場であり、中でも、日本は重要なマーケットとして位置付けられている。その日本拠点の代表として市場のニーズに応えるために当社の国内外における経験を活かして大きな転換期を迎えた日本でのビジネスを一段と拡大させたい」と就任の抱負を語った(共同代表への就任は2023年9月)。アジア・パシフィック地域統括責任者のアレク・カースマン氏(写真:左)は、「ピムコにとって1997年に進出した日本市場は重要であり、多くの投資もしてきた。現在、東京には約100人のスタッフを擁し、当社の事業にとって重要なトレーディングフロアも稼働している。ファーガソン氏はゴールドマン・サックスの東京、および、香港オフィスで活躍してきて日本市場での経験が豊かだ。東京オフィスのトップに迎え、そのリーダーシップによりこれまで以上に当社のお客様と国内の金融業界のお役にたつことで日本でのビジネスが進展することを期待している」と語った。
 
 ファーガソン氏は、日本では3つの成長機会があると語った。その一つは、「構造的なビジネス機会」で、これは数十年に1度の大きなチャンスだと捉えているという。その変化は、「貯蓄から投資へ」という資金シフトだとし、長らくいわれてきたテーマながら今回の違いは、「構造的な追い風がある」とした。政府が「資産運用立国」を掲げ、新しいNISAなど支援策を強化している。「貯蓄が潤沢にある中で、投資を促す支援策が強化されていることで、日本には非常に豊かな潜在成長力がある」と語った。そして、「日本のマクロ経済の変化」を挙げ、「30年にわたって続いたデフレが終焉し、インフレに向かう流れになっている。インフレによって金利の上昇が期待され、日銀の金融政策も正常化へ向かうだろう。そのような金利の変化は、ゼロ%金利の預貯金に資金を置いておくことは良くないという気付きを広げるだろう」と語っていた。

 ファーガソン氏は、今後、日本の運用ビジネスは、個人の金融資産が大きな資産比率を占める預貯金から投資商品へのシフトがテーマになってくるとし、そこにピムコが提供するプロダクトが貢献できるとする。長年にわたってビジネスパートナーとの関係を深めてきたことが、今後、日本における「ピムコの進化」を助けると期待していた。

 債券運用にとっては対象商品にデリバティブを使用するなどの制限がかかっている新NISAについて、アジア・パシフィック市場を統括するカースマン氏は、「NISAと同様な他国の投資優遇制度は、米国の401kや英国のISAなどでも時間とともに進展している。新しいNISAでは非課税期間が無期限となり、非課税限度額も大幅に拡充されるなど、従来のNISAと比較して大きな進展があった。運用に関する制限も、今後、投資へのニーズを支援するため緩和される方向に進むことが考えられる。大事なことは、NISAの対象外だとしても高い品質の商品を提供し続けていることだ」と語った。

 カースマン氏は、ピムコはアジア・パシフィック市場において、東京、香港、シンガポール、シドニー、台北、上海に6つのオフィスを構え、東京他4拠点にトレーディングフロアを置くという体制にあり、この地域のお客様から約3000億ドル(約44兆円)の運用資産額があると語った。そして、成長しているプロダクトとして、世界の金利水準が過去15年で最も高い水準にあることから「フィクストインカム(確定利付き債券投資)」の需要が非常に旺盛になっているとした。また、機関投資家の需要が拡大している「プライベート・クレジット」もピムコの強みが発揮できる分野として注力している。そして、債券市場で価格変動率が大きくなっていること、また、地政学リスクも高まっている中で「ヘッジファンド」に対する需要も高まっているとした。

 そして、今後の市場の見方として「成長とインフレはピークを迎えた。特に、米国経済はレジリエント(耐久力・柔軟性のある状態)な状態を保っているが、2024年にはスローダウンすることを予測している。マーケットは非常に楽観的になり、今年3月にも利下げに転じるのではないかという見方もあって株価は市場最高値を更新しているが、ピムコでは利下げの開始はおそらく年後半になるのではないかと考えている」とカースマン氏はグローバルな市場見通しを語った。

 また、ファーガソン氏は、2024年の日本の市場見通しについて「日本のインフレ率は、年末に2.2%程度と日銀の予想を上回る水準になるとみている。これによって、日銀の金融政策の正常化は促され、3月〜4月にマイナス金利の解除、年内に0.25%の利上げが実施されると予想する」とした。ただ、量的緩和政策は維持され金融緩和的な政策は続くだろうとした。そして、日銀の政策変更には、日本の経済指標のみならず、世界の経済成長率の変化なども影響を与えるため、慎重にその変化を見極めていきたいと語っていた。