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2050年までの長期成長が見通せるインド、資産形成にインド株を活用するメリット=UTIインターナショナルのCEOに聞く

2023/08/25 18:51

 インド株式ファンドへの資金流入が続いているが、2023年に入ると流入金額の規模が一段と大きくなってきた。その人気の背景は、これまでのパフォーマンスの良さに加えて、これからの成長への期待だ。インド最古の投信会社であるUTIグループ傘下のUTIインターナショナルCEOのPraveen Jagwani氏(写真)が来日した機会に、現地の運用会社が見たインド市場の現状と今後の展望について聞いた。UTIインターナショナルは、「新生・UTIインドファンド」(9月13日から「SBI・UTIインドファンド」に名称変更)、「SBI・UTIインドインフラ関連株式ファンド」の実質的な運用者でもある。

 ――インド経済の魅力は、若い労働力が豊富、かつ、中間層が拡大していることなど様々な理由が語られます。ただ、これまで20年以上にわたってインド経済は拡大し、かつ、株式市場も上昇してきました。これからさらに、インド経済が発展し、株式市場が上昇するといえるのでしょうか? それほど長きにわたってインドが成長すると考える理由を説明してください。

 インドの経済成長は、中間層が増え、その人々の収入が増えることによって消費が拡大するという強力な内部エンジンによる成長です。政府による産業振興策や輸出依存型の成長であれば、政権交代や政策変更によって成長がとん挫したり、世界経済の変調によって輸出の伸びが止まるということもありますが、インドはインド自身がボトムアップで身に着けた力で成長が可能です。他の影響を受けることなく独力で持続的な成長を続けることができます。これが、私たちが他の地域よりも、インドにフォーカスすべきだと考える理由です。

 たとえば、インドの中間層は、これから2050年に向けて拡大を続ける見通しです。日本を含む欧米先進国では、今後、中間層の人口が減少し、中国でも横ばいにとどまるとみられている中、インドは中間層人口が目に見えて増えていくことが予想される稀有な存在です。中間層の旺盛な消費意欲によって2050年には世界の中間層による消費の40%をインドが占めると予想されています。

 人口動態の予測は、比較的しっかりした予想値で大きく外れることはありません。インドの平均年齢は約28歳で、中国の約38歳と比べても若く、日本の約48歳と比べるとはるかに若いといえます。これまで中国や日本が経験してきたような成長を、これからインドは迎えることができるのです。

 ――成長するインド経済の中で、どのような分野が特に大きく成長すると考えていますか? インド経済の特徴などから、その産業が大きく成長すると期待する理由を教えてください。

 インド経済には非常に大きな成長期待があるのですが、その中であえて特定の分野を探すのであれば、成長エンジンである個人消費が向かう先のサービスや製品を提供する産業は大きな成長が可能です。ここで注意すべきは、個人の「ニーズ」に適う商品・サービスを探すべきで、ラグジュアリーなど「ウォンツ」を見てはいけません。たとえば、スマートフォンであれば、「iPhone」などの高級機種は「ウォンツ」を満たす商品といえますが、インドの国民はもっと安価なスマートフォンを生活上の必要性(ニーズ)から求めています。

 たとえば、インドでは過去10年間に4億の銀行口座が開設されました。銀行口座ではデビットカードや電子決済などの決済口座として活用される他、貯蓄に使われ、投信も購入されています。今では、ほとんどの銀行が、投資信託のつみたて投資プログラムである「SIP(システマティック・インベストメント・プラン)」というサービスを提供しています。契約すると毎月振り込まれた給与の10%〜15%で自分が選んだ3つの投信を3年から5年にわたって購入するというサービスです。この利用が中間層の間で急速に広まっています。

 インドでは人口の50%程度を占める所得の低い層は、まず、家を求めます。家が手に入ると、次には金(ゴールド)を蓄えて貯蓄とします。その上で、投信などの投資商品で資産を増やそうとします。インドの人口15億人の中で、3.8億人程度が中間層といわれる人々で、その中から5000万人くらいが投資を始めています。この投資へ向かうトレンドは始まったばかりで、どんどん新しい投資家が生まれてきているところです。

 ――インド株価指数は、ここ数年で大きく値上がりしました。PERやPBRなどの株価指標の面から、割高な水準にありませんか?

 インド株価のバリュエーション(企業価値評価)は、中国や他の新興国各国と比べて割高な水準にあります。ただ、この傾向は今に始まったことではなく、既に10年以上も前から割高であり続け、にもかかわらず、10年以上にわたってインド株は中国株や他の新興国株と比較して大きく値上がりしてきました。バリュエーションの高さに神経質になる必要はないと思います。

 過去20年間(2023年5月末基準)で、米ドルベースでみたインドの株価指数「NSE500」は1420%の上昇となりましたが、これは、中国「CSI300」の378%、米国「S&P500」の543%、日本「日経225」の362%などよりはるかに大きな上昇率で、インドネシア「JSX」の1146%、ベトナム「VSE」の641%なども上回り、主要国でナンバーワンの上昇率でした。

 インドは、イギリスが統治してきたという歴史から英国法への準拠など、欧米型の民主主義や自由、透明性などという価値観を持っています。この部分が、他の新興国にはないところで、株価のバリュエーションのプレミアム(割高部分)になっていると思います。

 ――UTIの株式運用チームの特徴について教えてください。現地で長らく調査を行ってきているということですが、調査体制や調査の特徴は? また、株式運用における投資哲学は?

 UTIの特徴は2つあります。1つは、インドで最も長い歴史がある国内最大級の運用会社であるということです。地元で長く調査活動をやってきているので、現地企業の変化を肌で感じますし、たとえば、退任したCEOと面会して辞めた理由を聞き取るなど、企業とのリレーションも広くしっかりしたものになっています。インド以外の拠点から、各企業の発表する情報を頼りに投資判断する運用会社とは大きな違いです。

 もう一つは規律ある運用を行っているという事です。運用会社の投資プロセスは、会社が若いとリスクを取って大きなリターンを求めがちなところがあり、反対に、会社に歴史があるとリスクを取らずに安定運用をする傾向が強くなります。UTIは、歴史を重ねた会社ですが、規律ある投資プロセスを重視することによって、リスクを取り過ぎる若い会社と、リスクを取らなさすぎる古い会社の中間のようなポジションにあります。

 UTIはボトムアップアプローチに重きを置き、会社の事業の成長性を客観的に評価すると同時に一方で、経営者や重要な役割を持つ従業員といった人と話して、会社の定性的な部分もを理解しようと努めます。

 ――UTIグループの代表的な株式運用戦略とそのパフォーマンスについて教えてください。

 UTIの代表的な運用戦略は「クオリティ・グロース戦略」で旗艦ファンドにも採用されています。銘柄選定基準の1つである「クオリティ銘柄」とは、どんな経済環境であってもフリーキャッシュフローを生み出す力を持っている企業です。インドでは全上場企業の10%以下という希少な存在です。さらに、2つ目の基準は、その「クオリティ銘柄」の中から、利益が伸びている「グロース銘柄」を選定します。成長する企業はEPS(1株当たり利益)が年20〜25%という成長を遂げています。これだけ高い成長を継続可能な企業は、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が多少高くても十分に投資する価値があると考えます。そして、投資価値があると判断した銘柄は、市場環境によって株価が下がるようなことがあっても簡単には手放さず、市場の評価が追い付いてくるのを待ちます。

 次にパフォーマンスですが、10年といった長期では優れた実績を残していますが、足元、2021年以来は市場全体の動きを下回る結果となっています。これは、市場が大型株中心のインデックスに有利に働く環境になったためです。つまり、インデックスには大型の石油会社や国営の大手銀行などが含まれ、コモディティ価格の上昇やバリュー株優位の相場になったため、クオリティ・グロース銘柄の上昇率がインデックスに負けてしまうということになりました。ただし、各企業のビジネスは好調です。目先の利益を狙って石油株などへの投資は行いませんでした。これが、UTIが掲げる規律ある運用ということです。

 ただ、長期のパフォーマンスでは、クオリティ・グロースは、市場環境が逆風の時には負けを抑え、追い風の時に大きく勝つという特徴があります。インデックスに劣後するという状況が長く続くとは考えていません。

 ――日本では、2024年1月から「NISA(少額投資非課税制度)」が大幅な非課税投資枠の拡大などによって生まれ変わる予定です。この機に、投信を使って長期にわたる資産形成をしたいと考える人が増えています。そのような日本の投資家にインド株式の運用者としてメッセージをお願いします。

 インドは今後2年間で経済規模がドイツを抜き、2027年には日本を抜いて、米国、中国に次ぐ第3位の経済規模の国になると予想されています。インドは、非常に若い国で、かつて、日本が経験した高度経済成長を今まさに歩み出そうとしている国です。日本の投資家の皆様には、この若いエネルギーをぜひ取り入れていただき、お金を元気に働いてもらい豊かになっていただきたいと思います。これからも20年以上にわたって成長が期待できるインドへの投資をご検討ください。