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国内「アクティブETF」市場が9月7日にスタート、3社6ETFが新規上場

2023/08/22 11:51

 日本の「アクティブETF」の時代が始まる。東京証券取引所は8月21日、運用会社3社から申請された6本の「アクティブETF」の上場を承認した。6本は揃って9月7日に新規上場する。東証が「アクティブETF」の制度要綱を公表したのが今年6月末。「アクティブETF」といっても、制度上は「アクティブリターンをめざす」というものではなく、「連動対象となる指数が存在しない」と規定されたETFだ。「インデックス(指数)に縛られず柔軟な運用を行う」ところに付加価値がある。「アクティブETF」は、海外では既に25カ国33取引所に上場され、上場本数は2000本以上、残高は合計で約5800億ドル(約80兆円)に達している。国内でも投資の選択肢を広げる役割が期待されている。

 上場が承認された6本は、シンプレクス・アセット・マネジメントが運用するコード番号2080の「PBR1倍割れ解消推進ETF」、同2081の「政策保有解消推進ETF」、同2082の「投資家経営者一心同体ETF」。そして、野村アセットマネジメントが運用する同2083の「NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信」、同2084の「NEXT FUNDS 日本高配当株アクティブ上場投信」。加えて、三菱UFJ国際投信が運用する同2085の「MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信」だ。

 「アクティブETF」の特徴としては、売買をリアルタイムで行えるというETFの持つ利便性がある。特に、株式を主要投資対象とするようなETFは、日中の値動きが大きくなるという特性があり、価格が下落したタイミングを狙って購入する、あるいは、値上がりしたタイミングで売却するなどタイミングを計った投資に対応できる。また、制度上の特徴の第一に「日次情報開示」がある。組み入れている全銘柄について日次開示が定められ、毎日更新される。日々の運用で、どの銘柄を購入し、どれを売却したのかが把握可能だ。運用経過等は、既存の公募投信と同じ月次レポート(月報)での開示になるが、全銘柄の組み入れ状況については公募投信では決算時にしか開示されていないことと比較すると格段の透明度といえる。

 さらに、「低コスト」も特徴だ。公募投信ではアクティブ運用の投信は、信託報酬率が年1%前後が多いが、「アクティブETF」は、たとえば、「NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信」は税込み年0.6875%、「NEXT FUNDS 日本高配当株アクティブ上場投信」は同0.5225%、「MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信」は同0.4125%になっている。TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価に連動する公募インデックス投信の信託報酬率は年0.15%程度のものもあるため、それと比較すると高いが、運用者による銘柄選定効果で市場インデックスを上回る効果が期待できるアクティブ運用のファンドとしては、魅力的な手数料水準といえる。

 もっとも、公募投信と比較すると「アクティブETF」では、デリバティブをヘッジ目的以外に利用できないなどの運用制限もある。ブル・ベア型やロング・ショート運用など、先物等を活用した多様な運用手法を提供するという点では公募投信の方に分がある。また、組み入れ銘柄の日次開示については、「リバランス等による組み入れ銘柄の変更について先回りされることで、ETFの投資家に不利益が生じることがないように、組み入れ銘柄の流動性には十分に配慮し、リバランスなどは一日で完了できるような銘柄でポートフォリオを組むようにしている」(三菱UFJ国際投信の法人投資家営業部ETF事業グループグループマネジャーの佐藤尚慶氏)など、運用についても制度に対応した工夫がされている。また、「アクティブETF」は野村アセットの「NEXT FUNDS」で2000円程度から、三菱UFJ国際投信の「MAXIS」で5000円程度からと小口化されているとはいえ、公募投信では1円から購入できる販売会社も少なくなく、つみたて投信などで活用する利便性は公募投信の方が向いているといえる。

 「アクティブETF」は、アクティブ運用の付加価値に大きな魅力がある。その点では、国内の大手運用会社である野村アセットと三菱UFJ国際投信が、揃って日本株の「アクティブETF」を第1弾として用意したのは象徴的だ。野村アセットのETF事業戦略部長の渡邊雅史氏は、「『日本成長株アクティブ』というグロース戦略と『日本高配当株アクティブ』というバリュー戦略という、日本株の王道といえるアクティブETFを提供する」と、今回の2本のETFについては野村アセットが培ってきた日本株での運用力を十二分に発揮すると語っている。シニア・マネージャーの水崎優駿氏も「グロース戦略では中長期的なROEの水準の高さを意識した運用を行い、バリュー戦略では配当利回りによるインカムゲインと値上がり益によるキャピタルゲインを両面で追求できる銘柄群を選定する」と運用の狙いを語っていた。

 アクティブETFは、グローバル市場でもETF全体の中で5%程度を占める存在に過ぎないが、インデックスのみだったETFの中で、ここ数年の間に徐々に存在感を増してきている。国内のETF市場約60兆円(中央銀行の持ち分を除くと約20兆円)という市場の中で、どれだけ存在感を示せるだろうか。新規上場する「アクティブETF」の運用成績が人気を左右する大きな要素になるだろう。(イメージ写真提供:123RF)