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iDeCo4月の新規加入者は3.9万人で17カ月ぶりに4万人の大台割れ、関心の復活には制度改定に期待

2023/06/01 16:39

 国民年金基金連合会が6月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると4月の新規加入者数は3万9089人で加入者総数は293万2653人になった。新規加入者数が4万人の大台を割り込むのは、2021年11月の3万7010人以来、17カ月ぶりのこと。2022年10月以来、加入手続きの簡素化によって企業年金加入者のiDeCo加入が加速していたが、ピークで月間1万7000人超えの加入者だったものが、4月は8286人と半減した。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は6115事業所と初めて6000事業所を越え、対象従業員数は3万8688人となった。

 3月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4338人(前月4491人)、第2号加入者は3万3012人(前月3万6410人)、第3号加入者は1391人(前月1675人)となった。前月と同様に第1号、第2号、第3号の加入が前年同月比で減少している。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万9389人(前月2万221人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は6486人(前月6746人)となった。第2号加入者の中で「企業年金あり」が8286人(前月9713人)と前年同月比47.4%増と伸びているが、前月の伸び率53.3%増、前々月の79.3%増からは伸びが鈍っている。

 2022年10月1日から企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者のiDeCo加入要件が緩和され、第2号加入者の「企業年金あり」に区分される加入者の新規加入が急速に増えてきたが、2022年11月に前年同月比3.7倍増の1万7325人でピークを付け、その後徐々に伸び率が鈍化している。現在でも、前年同月比で47%増とかつての5000人程度の月間新規加入者と比較すると加入者数は多いものの、全体をけん引するほどの力強さはない。むしろ、第1号の加入者数は前年同月比25.8%減、第3号に至っては同44.7%減と加入者数の上積みにブレーキがかかっている。

 現在、iDeCoを含む確定拠出年金制度の制度改正を検討する議論が4月12日から社会保障審議会で始まっている。ここでiDeCoの加入要件や掛金の限度額等について議論されることになっている。ただ、より入りやすい制度にすることは必要とされるが、加入限度額については現在の平均拠出額が2022年9月をピークに低下しているという実態があり、必ずしも必要ではないという見方もできる。たとえば、第1号加入者(自営業等)は、国民年金基金の合算で月額6.8万円までとされているが、拠出額平均は2万8524円にとどまる。拠出額平均のピークは22年9月の2万8912円だったが、そこから388円も減額した。第2号(会社員・公務員)で企業年金がない会社員と第3号(専業主婦・夫)は、拠出限度額が2.3万円だが、実際の拠出額平均は会社員が1万6827円、専業主婦・夫は1万5270円にとどまる。限度額の7割程度の拠出実績だ。企業年金ありの会社員や公務員は、限度額1.2万円に対し、拠出額の平均は1.1万円を超えているため、ほぼ限度額いっぱいに使われているといえる。

 拠出限度額の議論は、上記のような利用実態に基づいて、「企業年金あり」と「公務員」に対して限度額を上げるという議論になるのだろうか。あるいは、公的年金を補完する制度として必要な限度額を設定するという議論になるのだろうか。たとえば、「企業年金なし」の会社員が45年間(22歳から67歳まで)にわたって月額2.3万円を拠出し続けたとして、その合計拠出額は1242万円に過ぎない。公的年金が現役世代の年収の2分の1相当を支給するとして、公的年金以外の年金資産が1242万円で十分といえるだろうか? 一時期、「年金2000万円不足問題」が国会等でも取り上げられたが、この2000万円を用意するための制度にするのであれば、毎月3.7万円を45年間積み立てるということが必要になる計算だ。現在の月2.3万円では足りないということになる。

 制度改定にあたって、利用限度額は利用者の関心を引くテーマといえる。2024年にはじまる「新NISA」についても、現在の一般NISAの限度額600万円やつみたてNISAの限度額800万円に対し、「新NISA」は1800万円という大きな枠になるため、これまでになく関心が高まっている。年金制度としての限度額は、月額の限度額を12倍し、さらに、40年以上の年数を掛け合わせた額として判断したい。iDeCoへの関心が残念ながら低下してきていることも踏まえると、思い切った限度額の引き上げが期待されるところだ。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)