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過去3年で目覚ましい運用成績あげたインドネシア株式ファンド、インドと双璧をなすアジアの成長国に注目

2023/05/31 16:48

 2022年以来の主要国の大幅な利上げが世界経済にどの程度のマイナスインパクトを与えるのか、市場はその影響を測りかねているようだ。たとえば、5月は米NASDAQ上場企業の好決算等にけん引されて世界の株価が上向いたものの、月末には一転して株安に見舞われた。特段大きな悪材料が出たわけでもないのだが、一旦下落方向に動き出すと、利益確定を焦るように次から次へと売り注文が増えるような展開だ。多くの投資家が、今後の展望に確信を持てず半身の姿勢で投資しているようにみえる。その中にあって、「向こう10年の成長が確実視される」として市場の注目を集めているのが「インド株」だが、そのインド株を上回るほどのパフォーマンスを残しているのが「インドネシア株」だ。国内公募ファンドでインドネシアに単独で投資するファンドは、わずかに4本と多くはないが、インドネシア株高を受けて、いずれも好パフォーマンスを残している。

 今年4月末をベースに過去1年間のトータルリターンを調べると、全世界株式の代表的なインデックスである「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円ベース)」が6.01%に対し、先進国株式の「MSCIワールド(配当込み、円ベース)」は6.74%、新興国株の「MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み、円ベース)」は0.21%になっている。この1年間は先進国株がけん引していることがわかる。先進国の中では欧州圏の株価の上昇が目立ち、「MSCIフランス(配当込み、円ベース)」が28.99%、「MSCIドイツ(配当込み、円ベース)」が22.37%、「MSCI欧州(配当込み、円ベース)」は18.35%という状況だ。これに続くのが、「MSCI日本(配当込み、円ベース)」の10.50%で、「MSCI米国(配当込み、円ベース)」は3.94%という成績になっている。

 これに対し、新興国は、「MSCI中国(配当込み、円ベース)」が5.17%と復調ぎみの動きになるものの、「MSCIブラジル(配当込み、円ベース)」が0.78%、「MSCI南アフリカ(配当込み、円ベース)」がマイナス1.19%など、冴えない成績の国が多い。「MSCIインド(配当込み、円ベース)」も前年の株価上昇の反動でマイナス3.15%とマイナス成長に落ち込んでいる。そのような中で、「MSCIインドネシア(配当込み、円ベース)」は8.41%と中国を上回る成績を残している。

 インドネシアの成績は、過去1年だけでなく、過去3年(年率)で30.86%、5年(同)は9.66%、10年(同)は4.52%と、中長期に振り返っても好調だ。この成績は、インドの3年(年率)29.02%、5年(年率)10.90%、10年(年率)10.61%と比較して、10年を除けばそん色ない水準といえる。中国の3年(年率)0.97%、5年(年率)マイナス0.49%、10年(年率)6.27%と比較すると、同じように10年では見劣りするものの、5年以下の成績は大幅に上回っている。過去10年という期間は、先進国株式の「MSCIワールド」が年率12.76%と2ケタで成長したように、米国を中心とした先進国の株価が市場をリードした10年だった。その中にあって、近年、先進国を凌駕して大きく成長しているのがインドやインドネシアということになる。

 インドネシアの特徴は、人口が約2.75億人と米国(約3.38億人)に次ぐ世界第4位の人口大国である点。インドの成長見通しに中国を抜いて世界1位になった人口(14.23億人)の多さがあるように、経済の土台となる人口が多く、しかも、年齢構成が若く労働人口が増えていることがポイントになる。インドネシアの労働人口は総人口の約半分(2021年に49.09%)であり、2055年まで生産年齢人口が増え続けると予想されている。そして、1人当たりGDP(2023年4月時点)はインドの2379米ドルに対し、インドネシアは4798米ドルと、インドよりも先行して成長してきたため、今後の成長スピードについてはインドには敵わないと考えられる。しかし、同じアジア圏ではタイの7650米ドル、マレーシアの1万2364米ドル、中国の1万2813米ドルなどと比較すると大きく出遅れており、今後の成長余力の大きさも感じられる。

 インドネシアは2019年8月に、首都を現在のジャカルタからカリマンタン島・東カリマンタン州の東部に移転すると決定した。ジャカルタは急増した人口により、インフラの整備が追い付かず、慢性的な交通渋滞など首都に集中した人口の弊害が指摘され、首都移転はその解消が目的。新首都は2045年の完成をめざし、ジャングルを切り拓いて建設されていることから、今後、様々なインフラ投資等が期待されてもいる。

 インドネシア株式に投資するファンドは、残高が最大のファンドで「イーストスプリング・インドネシア株式オープン」の94.6億円で100億円に届かない。まだまだ、日本においてはマイナーな存在だ。次いで、「(ノムラ・アジア)インドネシア・フォーカス」で41.98億円。このファンドは、野村證券が提供するアジアの国々に投資するファンドシリーズの1つで、他には「インド」、「アセアン」、「豪州」、「タイ」、「フィリピン」がある。そして、「NN インドネシア株式ファンド」は残高が25.75億円、「アムンディ・インドネシア・ファンド(愛称:ガルーダ)」が11.3億年の残高だ。

 この4ファンドは全てアクティブファンドだが、過去3年(年率)トータルリターンが最もよかったのは「(ノムラ・アジア)インドネシア・フォーカス」の29.80%になっている。「MSCIインドネシア」の30.86%には及ばなかったものの、ファンドは年1.82%の信託報酬が控除されるため、それを勘案すると立派なパフォーマンスを残したといえる。そして、4ファンドともに2009年〜10年に設定され、既に10年以上の運用実績がある。インドネシア株式投資の経験は十分に積んできたといえる。今後のインドネシア経済の成長を捉えて、今後のパフォーマンスの上積みが楽しみなファンドといえる。(グラフは、「全世界株式(オール・カントリー)」と地域別インデックスの推移)