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公募投信で日本初の「堕天使債ファンド」、BNYメロン・インベストメントが4月25日に設定

2023/04/26 15:42

 「フォーリン・エンジェル(堕天使)」と名付けられる債券がある。信用格付けがBBB以上の「投資適格債」から「ハイ・イールド債」に格下げされた債券だ(反対に、ハイ・イールド債から投資適格債に格上げされた債券は『ライジング・サン』という)。この「フォーリン・エンジェル」が持っている特徴的な性格を収益機会にする「フォーリン・エンジェル・US ハイイールド・ファンド」が4月25日に設定された。国内初の個人向け「フォーリン・エンジェル・ファンド」になる。設定・運用はBNYメロン・インベストメント・マネジメントで、実質的な運用はBNYメロングループ傘下で債券運用に独自の強みがあるインサイト・インベストメントが行う。

 債券の信用格付けが投資適格債から格下げされると、投資適格債以上で運用することを条件としているファンドや年金基金などの機関投資家から「投げ売り」といえる大量の売り注文が出る。この際に、必要以上に価格が下落する(10年国債利回りなどとの利回り差=スプレッドが拡大する)ことがある。その後、ハイ・イールド債市場で売買が始まると、急落した価格は修正される(スプレッドが縮小する)ことが一般的だ。インサイト・インベストメントのヘッド・オブ・エフィシェント・ベータのポール・ベンソン氏は、「投資適格債からハイイールド債に格下げとなったフォーリン・エンジェルが、『強制売却』されることに伴い生じる、非効率な市場のダイナミクスを利用することを目指しています。格下げされた月に過度に拡大したスプレッドは、取引の正常化に伴い回復することが多いため、格下げが頻繁に行われる時期には投資機会が生まれます」と語っている。インサイト・インベストメントは、2002年に創設された運用会社で、2022年12月末現在の運用資産規模は6536億英ポンド(約107兆8440億円)、債券グループの運用資産残高は2102億英ポンド(約34兆6830億円)になる。

 「フォーリン・エンジェル・US ハイイールド・ファンド」では、「フォーリン・エンジェル」の持つ特徴的な値動きを捉えるため、インサイトが開発した先駆的な手法である「スマートベータ・アプローチ」を活用する。スマートベータ・アプローチは、市場価格の全体的な動きに連動するインデックス運用に対して、流動性、コスト、構造的な問題などの要素に着目してインデックスの動きにプラスαの収益を獲得することをめざす運用手法で、一般的なアクティブ運用よりも運用コストが低いという特長がある。「フォーリン・エンジェル・US ハイイールド・ファンド」の信託報酬率は、年率0.571%(税込み)で、ファンドが組み入れるマザーファンドのコストを合算した実質的な信託報酬でも年0.767%程度になる。換金(解約)手数料はない。

 現在、米国の債券市場は、2022年の政策金利の急速な引き上げを受けた大幅な下落相場から、やや落ち着きを取り戻したような状態にある。米10年国債利回りは、2021年末までは1.5%程度だったが、2022年3月にFRBが利上げを開始してから、利回り水準が急速に上昇(債券価格は急落)し、2022年10月には利回りが4.1%の水準になった。2023年3月末時点では3.5%になっている。これに伴って、米国のハイイールド債券市場も大きく動き、2021年12月までは5%前後の利回りだったものが、2022年10月には9.1%にまでなり、現在は8.6%という水準だ。

 米国の債券市場は、2022年の最悪期と比べれば、いくらか落ち着きを取り戻したようにみえるが、2023年になっても、3月に相次いだシリコンバレーバンク(SVB)やシグネチャーバンクの経営破たんなど、金融システム不安を感じさせる動きになっている。4月25日にもファースト・リパブリック・バンクの預金が40%減少したことが報じられて同行の株価が49.38%安に落ち込むなど、米国地銀の経営状態は決して良くないことがうかがえる。銀行が破たんするような状況は、信用リスクについて慎重に考えるようになるため、ハイ・イールド債への投資環境としては好ましい状態とはいえない。「フォーリン・エンジェル・US ハイイールド・ファンド」は、このような不透明な中で船出したことになる。市場が不透明であるがゆえに、フォーリン・エンジェルが生まれやすく、その分、投資機会に恵まれているともいえる。

 BNYメロン・インベストメント・マネジメント・ジャパンの執行役員リテール営業本部長の中井茂樹氏は、「インサイト・インベストメントは、10年以上にわたりスマートベータ戦略を設計・運用してきました。フォーリン・エンジェル・ハイイールド債は、厳しい市場環境や金利上昇局面においても、価格上昇の可能性を備える、魅力的な資産クラスです。特に、債券の革新的な流動性資産にアクセスできる投資家は、フォーリン・エンジェルをアロケーションに組み入れることにより、ハイイールド投資戦略を強化することが可能となります」と語っている。「フォーリン・エンジェル債」という投資カテゴリーが、今後、日本の投資シーンにおいて存在感を持つ資産クラスになっていくかどうか、今後のファンドの成長を見守りたい。(イメージ写真は、イタリア・ピサの堕天使像。提供:123RF)