ウエルスアドバイザーYouTubeチャンネル かんたんファンド検索 詳細条件でファンドを検索 ファンドの見直し

ファンドニュース

金利上昇でインデックスファンドの上昇一服、アクティブファンドに活躍の期待高まる

2023/04/21 17:30

 2022年に米国が利上げに転じてから市場の様相が一変し、2021年12月末まで市場をけん引してきたテクノロジー株式を中心にした「グロース株」に投資するファンドのパフォーマンスが大きく悪化した。その事実によって「『グロース株』相場は終わった」という極端な意見も散見される。しかし、2022年以降のファンドのパフォーマンスを検証すると、「グロース株ファンド」の全てが悪いパフォーマンスではない。むしろ、「MSCIワールド」や「S&P500」などの株価指数と比較して優位なパフォーマンスになっているファンドもある。投資テーマの違い、また、投資する対象に何を選ぶかという「銘柄選定」の優劣がファンドのパフォーマンスに影響している。利上げによって市中に流通する資金の量が絞られる中、大型株に幅広く投資することになる市場インデックスより、投資対象を絞ったアクティブファンドに活躍の余地が広がりそうだ。

 投資テーマによる投資対象の絞り込みがパフォーマンスに影響を与えているという例は、「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」の値動きに良く表れている。このファンドは、名前の通り、世界の半導体関連株に絞って投資するファンドだ。過去1年間のトータルリターンは2.76%で、先進国株価指数である「MSCIワールド(配当込み、円換算)」のマイナス0.60%を上回る。また、「コロナ・ショック」後にDX(デジタルトランス・フォーメーション)が一気に進んだことで世界の半導体需要が激増したことで半導体関連株が大きく値上がりした過去3年間のトータルリターンは年率37.93%と「MSCIワールド」の24.34%を大きく上回っている。

 「半導体」は、その業績にサイクルがあり、しかも、比較的好不況の波が大きくなる傾向にある。折しも、半導体の受注生産で世界最大手のTSMC(台湾半導体)の2023年1−3月期決算が半導体需要の減退で最終利益が前年同期比2.1%増になったことが報じられている。2022年10−12月期の最終利益が前年同期比78%増だったこととは大きな違いだ。投資対象を「半導体」に限定する場合、このような業績の急変は受け入れるしかない。ただ、「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」は、アクティブファンドとして半導体業界の中でも、足元の半導体の景況サイクルの影響を受けやすい企業から、将来の成長が見込まれる企業まで幅広い視点で銘柄を選んで投資ポートフォリオを作っている。結果として、過去10年のトータルリターン(年率)でも22.33%と「MSCIワールド」の13.21%を大きく上回る成績を残している。

 一方、ロボット産業の中長期的な成長を期待して投資するアクティブファンドである「グローバル・ロボティクス株式ファンド(年2回決算型)」は、1年トータルリターンが3.16%と「MSCIワールド」を上回るが、こちらは、3年トータルリターン(年率)が25.73%と「MSCIワールド」とほぼ変わらない。5年トータルリターン(年率)は13.17%で「MSCIワールド」の13.40%をやや下回る成績になっている。2023年になってから、市場インデックスを上回るような動きに転じているようにみえる。

 同ファンドは2015年8月の設定からパフォーマンスも好調だったこともあり、2018年5月には残高が5000億円を超えるほどの人気ファンドになった。分配金込み(再投資)の基準価額は2021年12月に2万7000円を超えたが、その後は概ね横ばいとなっている。同ファンドが着目する「ロボット・テクノロジー」の分野は、物流倉庫の配送ロボットやドローンを使った農薬散布など、近年では幅広い産業でロボットの活用が確認され、成長が期待される分野であることが肌感覚として実感できる分野だ。日本をはじめ米国などでも人手不足は深刻で、それが賃金の上昇につながっているが、その賃金の上昇がロボット開発を後押しするという構図になっている。まして、今年に入って大きな注目を集めた「チャットGPT」など人工知能チャットボットは、ロボットの頭脳にあたるAI(人工知能)の性能が想像を超える速さで進化していることを感じさせた。

 同ファンドでは、直近の月報(2023年3月末データ)で、「現在の株式市場は、技術進化の恩恵を受ける企業にこれまでよりも安い価格で投資することが出来るチャンスを与えてくれているものと捉えている」とし、「サプライチェーンの見直しや、賃金インフレ、CO2削減などの動きは、自動化・自律化の新たな追い風になっている。こういった技術革新の動きは、ものづくりの世界だけではなく、物流産業やサービス産業における人手不足解消、医療の高度化・効率化、移動の効率化など人々の暮らしを良くするために加速していくことが期待されており、中長期的に当ファンドの投資対象であるロボティクス関連銘柄の魅力は非常に高い」と総括している。このような高い成長期待のある産業に投資することも一考の余地があるのではないだろうか。

 世界の金利水準が引き上げられた中にあって、「株式に投資していれば収益の機会がある」という時代ではなくなってきた。時価総額の大きな銘柄で構成される代表的な株価インデックスに連動するファンドは、世界経済の成長を映して緩やかな上昇は期待できるだろうが、世界経済の成長見通しがIMF(国際通貨基金)の予測で2023年が2.8%、2024年が3.0%であり、先進国に限れば、2023年が1.3%、2024年が1.4%と低くなっている。それを上回る投資収益を求めるのであれば、「広く市場全体に投資する」という態度から、「投資範囲を限定する」というリスクを考える必要があるだろう。何に投資すればよいのか。自らが納得できる投資対象を考えたい。(グラフは、「グローバル・ロボティクス株式ファンド(年2回決算型)」の過去1年間のパフォーマンス推移)