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新NISAで知っておきたい投資のセオリー、リスクを小さくする投資手段としてヘッジファンドも一考を

2023/04/24 17:15

 2024年からNISA(少額投資非課税制度)が恒久化し、非課税枠も大幅に拡大されることから、証券投資による資産形成を本格的にスタートしたいと考える人は少なくないだろう。証券投資による収益にかかる税金は、収益額の約20%であり、これが非課税となり蓄財ができるのであるから、その節税効果はかなり大きい。投資を開始するにあたっては、投資資金を捻出することも必要になるが、もっと大事なことは、「何に投資をするのか?」という投資対象の選定だ。資産運用の基本的なセオリーを事前に学んで、より効果的な資産形成を進めたい。「老後のための資産形成」といった(若年層にとって)超長期の資産形成とは別に、「住宅購入時の頭金にしたい」など比較的短い期間での資産形成を考えた時、株価の短期的な大幅下落などによる一時的な資産価値の劣化の可能性をできるだけ小さくしたい。投資リスクを小さくする手段として「ヘッジファンド」の活用についても研究しておきたい。

 株式に100%投資をしていると100年に1度といわれるような「リーマンショック級」の大幅な下落に見舞われた場合、数年間にわたって投資資金が投資元本を下回るということも起こる。資金を使いたいと思った時に、この大規模な株式市場のショックが重なってしまうと、損失を覚悟しないと資金が使えないことになってしまう。数年にわたって投資を続けてきたにもかかわらず、投資成果が「マイナス」という事態は避けたいものだ。そのためには、株式への投資リスクを100%から引き下げることを考えたい。株式への投資リスクを引き下げると、株価が大きく値上がりした時に、その値上がり分をフルにリターンとして得られなくなるが、反対に、株価が大きく下落した場合には、その下落率のいくらかの割合を低減することができる。株式への投資リスクを引き下げる方法としては、株式とは異なる値動きをすることで知られる債券にも併せて投資することが、よく利用されている。例えば、株式のインデックスファンドを100万円保有している人が、債券ファンドを100万円追加購入することで、株式への投資比率を100%から50%に引き下げるようなやり方だ。

 このように、株式への投資比率を引き下げる方法は、債券やREIT(不動産投信)、あるいは、ゴールド(金)などのコモディティ(商品)などに分散投資するという手段が一般的にとられている。株式ファンドを購入した後で、その他の資産に投資するファンドを追加して購入するという方法もあれば、最初から複数の資産に分散投資するバランスファンドを購入することもできる。また、同じ株式を投資対象としながらも、通常の株式投資とは異なるリスク・リターンの特性を持った「ヘッジファンド」を活用する方法もある。「ヘッジ(hedge)」とは、「回避する」「逃れる」という意味で、投資することによって生じるリスクを減らしたり、除いたりするように設計されたファンドを「ヘッジファンド」といっている。ヘッジする手段は、様々な方法があり、その方法によってリスクの減じ方も変わってくる。「ヘッジファンド」に投資する場合は、どのような手法で投資リスクを軽減させようとするファンドなのか、その内容を理解する必要がある。

 「ヘッジファンド」の代表的な手法の一つに「ロング・ショート戦略」がある。将来の成長が期待できる株式を「ロング(買い持ち)」にする一方で、割高な株式、または、株式先物を「ショート(信用売り)」するという戦略だ。株式の「ロング」した金額と同等の金額で株式先物を「ショート」すると、「ロング」で購入した株式が市場平均を上回って値上がりした部分だけが収益として確保できる。その収益は、株式市場全体が上昇しても下落しても同じように収益化することができることが特徴だ。この「ロング・ショート戦略」も、ロングとショートの比率を変えることによって、リスク特性を調整することができる。「ヘッジファンド」の戦略は、様々なリスク水準に設計できる柔軟性があるため、結果的にどのような運用成績になるのかは、一定程度の運用期間を設けて実績を確認する方が良いと考えられる。

 スパークス・アセット・マネジメントが運用している「スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド」は、日本株を投資対象とした代表的な「ロング・ショート戦略」のヘッジファンドの1つだ。設定は2002年3月で、既に20年以上の運用成果が確認できる。このファンドは、成長が見込める株式を「ロング」にし、割高な株式を「ショート」するという戦略で、かつ、「買い持ち(ロングのポジション)を売り持ち(ショートのポジション)よりも多めに保有する戦略」になっている。スパークスでは、株式は中長期的にみて通常プラスのリターンをもたらすと考えており、株式市場が値上がりする方に賭けていることになる。

 同ファンドの設定来のパフォーマンスを、国内株式の代表的な株価指数である日経平均株価に連動するファンド「朝日ライフ 日経平均ファンド 『愛称 : にぃにぃGo』」の成績と比較してみると、2023年3月末現在で日経平均連動型ファンドの方がトータルリターンの結果として優れているものの、リスク調整後のリターン(リスク1単位当たりの超過リターン=シャープ・レシオ)では、「スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド」の方が優れていることがわかる。2023年3月末時点のトータルリターン1年は、同ファンドが7.02%に対し、「にぃにぃGO」は2.36%と「ロング・ショート」が上回るが、トータルリターン10年(年率)では、6.21%と9.86%で「にぃにぃGo」が上回っている。ただし、シャープ・レシオでは「ロング・ショート」対「にぃにぃGo」で、1年は0.89対0.15、5年で0.57対0.41、10年で0.82対0.60と、いずれの期間でも「ロング・ショート」が上回っている。「ロング・ショート」は、リスクが低いことによって、安定的にシャープ・レシオが高い運用ができている。

 株価下落時に耐性のある運用については、2008年9月の「リーマンショック」当時の下落相場を振り返ると、「にぃにぃGo」との違いが際立っている。市場全体が大きく下落する中で、下落率を抑えていることに、大きな安心感が得られるのではないだろうか。もちろん、「ロング・ショート戦略」を採用したヘッジファンドが全て「スパークス・ロング・ショート・ファンド」のような運用成績を残せるものではない。このファンドの仕組みの場合は、「ロングのポジション」に選んだ銘柄の株価が市場平均以上に値上がりし、「ショートのポジション」に選んだ銘柄が値下がり(市場平均の下落率以上に下落)しなければ、シャープ・レシオが高い運用成績にならない。この銘柄選定の能力は、国内上場銘柄の実力を見極める力といえる。20年以上にわたる運用実績によって、優れた銘柄選定能力の実力を示している。特に、運用の仕組みが複雑なヘッジファンドについては、できるだけ長い期間のパフォーマンスを確認することが重要だ。

 そして、「スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド」のように、株価の下落をヘッジできるファンドは、比較的短期の投資でも活用が検討できるファンドの1つといえる。同ファンドの設定来の月次リターンを調べると、最大の下落率は2022年1月のマイナス8.30%で、5%以上の下落は全252月のうちでわずか7月だった。これが「にぃにぃGo」では、最大下落率が2008年10月のマイナス24%に拡大する。5%以上の下落は37月と大幅に増える。1カ月で2ケタの下落率は、運用していてかなり辛い気持ちになるだろう。そのような下落を極力避けて、平均株価と同じ程度のリターンを残していることは注目に値する。このようなファンドを組み合わせて持つことによって、株価の大幅な下落にも慌てることなく資産運用を継続することができるのではないだろうか。(グラフは、「スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド」設定来のパフォーマンス推移)