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高成長のインド株で過去1年のパフォーマンスが際立つ、「東京海上・インド・オーナーズ株式オープン」快進撃の背景

2024/02/29 17:06

 世界で屈指の経済成長率が期待されるインドは、その若い人口構成と高い教育水準が評価され、株価も右肩上がりで上昇を続けている。そのインド株式を対象とした投資信託の中で、「東京海上・インド・オーナーズ株式オープン」(以下、「インド・オーナーズ株式オープン」)は、過去1年のパフォーマンスで頭一つ抜けた成績を残している。同ファンドを運用する東京海上アセットマネジメントのアジア株式の運用を統括するシンガポール拠点のチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)である秋澤宏典氏(写真)に、インド株式市場の魅力と同ファンドの運用について聞いた。
 
 ――インドは世界屈指の経済成長率が期待される市場ですが、その特徴や成長の背景は?

 アジア株式市場の中でインド株が強い理由の1つに、これまで市場のけん引役を担ってきた中国市場がこの2〜3年弱く、中国株式に向かっていた資金がシフトしていることがあります。向かっている先が日本やインド、東南アジアなどの市場です。中国から他の市場に目を移すという動きは、多くの国々の間で、米中貿易摩擦が激化した2010年代後半から「チャイナ・プラス・ワン」という形で本格化しています。

 インドの魅力は、第一に世界最大の人口を擁する国だということです。中国が一人っ子政策などの影響で、急速な高齢化が進むと見られている中、インドは生産年齢人口(15〜64歳)が多く、今後30年くらいは人口が増加すると見込まれています。インドは2019年から、生産年齢人口がその他の人口の2倍以上となり、豊富な労働力を背景に経済成長が加速しやすい「人口ボーナス期」に入り、その追い風が2050年頃まで続くと期待できます。

 また、2期10年続いたモディ政権が、今年実施される総選挙でも多数の支持を集めて3期目に入ることが期待されています。これまでの経済政策が継続されることで、製造業の後押しや規制緩和によって発展を遂げてきたインド企業の生産性が維持・拡大する期待があります。また、PLI(生産連動型インセンティブ)スキームによって拡大してきた製造業を強化する「メイク・イン・インディア」政策も継続され、ちょうど2000年から2010年にかけて「世界の工場」として高い経済成長を享受した中国のような状況が、今後、インドに期待されます。

 今後、モディ政権が3期目に入るとすると、積み残してきた政策課題である土地収用法の改正と労働市場の規制緩和が実施されると期待され、それによってインド企業の生産性が一段と向上し、インド経済全体の見方が変わると考えています。

 ――インド経済の高成長を期待してインド株価はここ数年、ずいぶん上昇しました。割高ではありませんか?

 世界の株式市場の時価総額の伸びと、その国の名目GDPの伸びは概ね連動しています。インド経済と株式市場の伸びも同じです。「MSCIインド」の算出が始まった1992年末から2023年末まで31年間で、インドの名目GDPの年平均成長率は13%弱という水準でしたが、この間、インド株式市場は年率平均11%で上昇しました。過去5年でみても、名目GDPの成長率が10%に対し、株式市場の上昇率は年14〜15%と、長期間にわたって高い成長率を誇っています。

 過去5年間は、名目GDPの伸び率に対して株式市場の上昇ペースが速くなっていますが、これは、企業の生産性向上など業績改善効果によってEPSが上昇したことに加えて、バリュエーション(PER)も上昇したことが要因です。

 来年度にあたる2025年3月期はGDP成長率が6.3%と見込まれ、インフレ率が5〜6%程度と考えられることから、名目GDPの伸び率は10%台前半の水準になりそうです。企業収益は、売上高が12%〜15%程度伸びると考えられ、企業の収益性が改善するとEPS成長率は15%〜20%が期待できます。バリュエーションが多少下がったとしても株式市場の10%くらいの上昇は期待できます。

 今後5年〜10年を見通しても、GDP成長率は5%〜6%程度で推移すると考えられ、インフレ率はインド中央銀行の目標が4%なので、名目GDPの伸び率が10%程度のポテンシャルはあります。そして、株式市場も企業収益が今後も同程度見込め、バリュエーションも同程度で推移すると、やはり年10%程度の成長ポテンシャルがあるということがいえます。これは、現在の債券利回りから考えても妥当な水準です。現在、インドの10年債の利回りは7%程度です。この利回りは10年間で元本が2倍になる水準です。株式市場は過去5年で2倍になり、これと同程度の上昇率が続いても債券利回りとの関係ではリーズナブルな上昇といえる水準です。

 ――「インド・オーナーズ株式オープン」が着目するインドのオーナー企業の特徴は?

 「インド・オーナーズ株式オープン」が定義するオーナー企業とは、経営者が10%以上の持ち分比率を持つ主要な株主であり、かつ、経営の実権を握っている企業です。オーナー企業の特徴として、中長期の目線で企業の存続や成長を見通した投資や経営戦略を打つ傾向が強いという点が挙げられます。当ファンドは、インドの優良なオーナー企業の株式に厳選して投資するファンドです。

 インド企業の約6割がオーナー企業であり、オーナー企業は相対的に中型企業が多く、かつ、業種も多岐にわたっていることから、様々な投資機会があります。インド人経営者というと、マイクロソフトのCEO兼会長のサティア・ナデラ氏、アルファベット(グーグル)CEOのサンダー・ピチャイ氏、スターバックスCEOのラクスマン・ナラシムハン氏など、世界的なトップ企業のCEOを務めています。英語が準公用語で、高い教育水準があり、言語や宗教などの多様性が世界水準の経営者を生み出す土壌になっていると考えられます。インド国内の企業にも、非常に優れた経営者がいます。

 過去のバックテストを行っても、インドのオーナー企業に均等投資した株価指数は、MSCIインドを大幅にアウトパフォームしています。実際に経営者との面談を実施し、経営者として優れた経営力があると判断され、持続的な成長が期待できる企業に厳選投資することによって、中長期的にインデックスを上回る運用成果をめざします。

 当ファンドと同じ投資哲学で日本株で運用する「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」は既に10年以上の運用実績のあるファンドですが、非常に優れた実績を残しています。成長市場であるインドの株式に、このノウハウを当てはめて投資すれば、日本株同様にインデックスを上回るパフォーマンスが期待できると考えました。

 ――「インド・オーナーズ株式オープン」のパフォーマンスは、過去3年ではMSCIインドに劣るものの、過去1年ではMSCIインドを上回り、かつ、競合するインド株式のアクティブファンドを上回る実績を残しています。何が変わったのですか?

 ファンドは2020年4月に設定し、約4年間の運用実績がありますが、設定当初の運用成績は良いものではありませんでした。私は2022年にシンガポール拠点のCIOに就任し、アジア株式の運用を統括する責任者になりました。その際に、当ファンドの運用の内容について詳しく調査し、担当者等のヒアリングも行ったのですが、当時の運用は市場の変化を捉えようと短期売買の比率が高い運用になっていました。そこで、当ファンドの本来の狙いであるオーナー企業の中長期的な成長を狙う運用に運用プロセスを改善し、さらに、インド株リサーチを統括するスネハ・トゥルシャンを運用チームに加えるなど、スディップ・ビスワスをリードポートフォリオマネジャーとする現在の運用体制を再構築しました。このように運用プロセスを見直し、運用体制を刷新したことによってファンドの運用成績が向上していったのです。過去1年間の成績は、現在のチームの運用力が発揮された結果だと考えています。

 新NISAを使って中長期の資産形成をめざす方には、中長期にわたって高い経済成長が見込まれるインドの中型成長株に厳選して投資する当ファンドは、魅力的な投資対象になると思います。インド株式市場は新興国市場として値動きが大きくなる傾向があります。中長期の積立投資で、価格変動に負けない長期の運用をご検討いただきたいと思います。