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新NISAで投資はじめ(2)、NISAの投資に「投資信託」が好まれる理由は?

2024/01/22 19:24

 生涯非課税枠が1人あたり1800万円になる「新NISA」がスタートした。「非課税」とは、株式や投資信託を使った投資で得られた収益(売買差益、配当・分配金など)に対し、通常は20%程度課税される税金が免除されるということだ。投資収益を再投資して複利感覚で資産を増やしていく場合、この収益非課税の効果は、長期の投資になればなるほど大きくなるという特徴がある。余裕資金で資産運用を始め、大きな資産を作りたいと考える人が少なくない。そこで、「新NISA」を始めようと考えると、投資対象は「株式」か「投資信託」に限定される。一般的に、「投資経験のない人や、経験の浅い人は、株式よりも投資信託で投資を始めた方が良い」といわれる。なぜなのだろうか?

 そもそも「株式」に投資しようとすると、証券会社にNISA口座を開く必要がある。新NISAの口座は銀行や信用金庫でも開くことができるが、銀行や信用金庫では証券取引所に上場している「株式」や「ETF(上場投資信託)」、「REIT(上場不動産投信)」は購入することができない。このため、銀行や信用金庫に新NISA口座を開設した人は、最初から「株式」は投資できないことになる。ただ、長期の資産形成を考えるのであれば、「株式」を使わずに「投資信託」だけで十分に目的を達成することができるため、新NISA口座を開設するのに、必ずしも証券会社を選ぶ必要はないといえる。

 「株式」と「投資信託」の違いは、投資リスクの違いに集約される。「株式」は1企業のみに限定して投資することになる。「トヨタ自動車」や「ソニー」など、多くの人が知っている企業から、一般には名前も聞いたことがないという企業まで、東京証券取引所には3900以上の「株式」が上場している。その「株式」を自由に選んで投資することができるが、その「株式」が将来、値上がりするかどうかは、その「株式」を発行している企業が成長・発展していくかどうかにかかっている。

 誰もが知っている会社だからといって、必ず成長するとは限らない。一方で、研究開発投資が旺盛な電気機器や自動車などの産業は世界の市場に打って出て大きな企業成長をする機会もあるが、電力・ガスや鉄道など日々の生活を支えるインフラを担っている企業は安定的な業績が期待されるなど、事業内容によって成長率に差があるので、「株式」に投資して収益をあげるためには、個々の企業の事業内容について深い理解が必要になる。

 一方、「投資信託」は1つの「株式」のみに投資するということがない。少なくとも、1つの「投資信託」は10数銘柄から数十銘柄の「株式」に投資し、また、「株式」以外にも債券や「REIT」、また、ゴールド(金)など様々な投資資産に投資するものもある。株式だけを投資対象とした「投資信託」でも、1つの銘柄だけに投資せず、複数の銘柄に投資するのは、投資リスクを低下させるためだ。「株式」の場合は、その1つの会社のみの成長・発展が期待通りに進むことで株価の上昇が期待できるが、必ず期待通りに成績が残せるとは限らない。場合によっては、大幅なマイナス成長や、経営破たんなどということもある。1社だけに投資していた場合、万が一にもその会社が経営破たんしてしまった場合、その価値はゼロになる。これが「投資信託」で20社の株式に投資していた場合、そのうちの1社が経営破たんしても、その破たんの影響は20分の1に止まり、資産の大半は活きていることになる。

 たとえば、「株式」の代表としてトヨタ自動車とソニーグループの株価の推移と、「投資信託」の代表としてそれぞれ代表的な株価指数である「TOPIX(東証株価指数)」(株価指数に連動する投資信託は約2150銘柄に投資)と「日経平均株価」(同じく約225銘柄に投資)の動きを、1991年1月末を100として、2024年1月までの動きを見てみると、トヨタ自動車は2007年2月に510に値上がりし、その後、2011年11月に160まで下落。そして、現在は948まで値上がりするという大きなアップダウンのある動きをしている。ソニーは2000年2月に575まで値上がりしたものの、2012年8月には31まで下落。それから、現在は523になるなど、トヨタ自動車よりもアップダウンが激しい動きになっている。これと比較すると「TOPIX」も「日経平均株価」も現在の150の水準に至るまで、「株式」と比較すると大きな値動きをしてこなかったことがわかる。

 「投資信託」に投資して投資リスクを低減することは、期待できるリターンの水準を下げることにもつながる。20銘柄に投資して、そのうち1つが2倍の株価になったとしても、その「投資信託」の価値が2倍にはならない。2倍になった「株式」に100%投資していた方が高いリターンが得られる。ただ、3900以上もある「株式」の中から、その大きく値上がりした銘柄を選び抜けるのかというと、それは非常に難しいといえるだろう。そして、「投資信託」は、投資を専門にしているプロの目で投資先を選んで投資しているというメリットがある。常に企業業績を分析し、それぞれの産業の将来について調査・研究をしている専門家が、特に有望と考える企業のみをピックアップして投資してくれているのだ。生半可な知識で投資先を選ぶよりも、よほど確かな投資成果が期待できるといえるだろう。

 さらに、「投資信託」が投資経験の浅い方々の投資手段として相応しいのは、金額指定で購入できる点だ。「株式」の場合は、基本的に株価の100倍の価格で取引されている。たとえば、株価が800円の場合は8万円の資金が必要だ。中には、数千円の株価や数万円の株価のものもある。その場合は、その「株式」を購入するには数十万円、また、数百万円の資金が必要になる。これに対し、投資信託の場合は基本的には1万円単位で投資が可能で、口座を開いた金融機関(銀行や証券会社等)によっては100円から買えるところもある。「毎月1万円ずつ投資したい」とか、「5万円分を解約したい」など、その時々の資金事情に応じて、金額指定で購入・解約ができるのは便利だ。

 このように「株式」と比較すると、「投資信託」は価格変動リスクが穏やかであり、また、金額指定で購入・解約ができる手軽さがある。投資経験の浅い人にとって、価格変動の大きさが大きな負担に感じられるものだ。これまでの預貯金であれば、預けておいた金額が減額することはなかった。ところが、「株式」に投資すると、1000円だった株価が800円になっていることはよくある。金額にすると10万円が8万円になったということで、2万円も損をしていることになる。そのようなことが投資開始して数カ月の間に起こってしまったら、そのまま投資をし続けることができるだろうか? このような動きに対し、「投資信託」の値動きは緩やかだ。新NISAを使って資産形成を成し遂げようと考えた場合、最も重要なことは長く続けるということになる。投資経験の浅い方に「投資信託」の購入を優先すべきといわれるのは、このような価格変動リスクが穏やかなことが長期投資につながるからだ。(グラフは代表的な「株式」と「投資信託」の価格変動の推移)