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クオリティ・グロースを追求するコムジェスト、中期的にEPS成長率10%以上のポートフォリオを構築

2023/12/05 11:18

 コムジェスト・アセットマネジメントは12月1日、東京・丸の内で「Comgest Partners Event 2023」を開催した。販売会社、IFA、メディア、そして、投資先企業など、「コムジェストが関わる全ての関係者をパートナーとして、長期的にしっかりした関係を構築していきたい」(同社代表取締役社長の高橋庸介氏=写真:左)と、ファンドの運用を行っている担当者から運用の現状等について直接説明した。世界株式戦略のアナリスト兼PMのザック・スメルチェック氏(写真:左から2人目)は「世界株式戦略アップデート」、日本株式戦略のアナリスト兼PMのリチャード・ケイ氏(写真:左から3人目)は「日本株式戦略アップデート」を講演した。そして、最後に日本株式戦略のアナリスト兼PMの江上誠氏(写真:右)が「コムジェストが実践する投資先企業との対話」について語った。

 社長の高橋氏は、今年1年を振り返って、ウォーレン・バフェット氏の相棒だったチャーリー・マンガー氏など多くの先達が亡くなったことに触れ、「現在の市場を考えれば、米元国務長官のキッシンジャー氏が亡くなったのは象徴的な出来事。マーケットを翻弄しているインフレは、その事象の裏側で世界的な構造変化がある。その変化は、『グローバリゼーションの終焉』だ。そして、キッシンジャー氏は、米中の国交正常化や中東和平など、グローバリゼーションのきっかけを作った人物と評価できる。現在は、中東情勢が混とんとし、米中対立も厳しくなっている。キッシンジャー氏が残したグローバリゼーションという大きな波は、キッシンジャー氏とともに消えてしまうかもしれない」と大きな功績を残したキッシンジャー氏を惜しんだ。そして、マンガー氏の残した様々な言葉の中から「適正な価格で売買されている会社は、割安な価格で売買されている会社よりも素晴らしい」という言葉を紹介した。「クオリティ・グロース」を追求する同社の運用姿勢と響き合うのだろう。

 世界株式戦略を担当するスメルチェック氏は、コムジェストの運用チームは、欧州、アメリカ、日本、インドなど、様々な地域に拠点を置いて現地調査を行っているが、「共通の投資哲学の下で各地のチームは常に連携し、知見をシェアしている」とグローバルチームの連携を強調した。コムジェストが掲げる「クオリティ・グロース」は、(1)ビジネスモデル、(2)財務基準(EPS成長率10%以上、ROE15%以上など)、(3)内部成長率(オーガニック・グロース)、(4)参入障壁、(5)持続性、(6)経営という6つの角度から企業を徹底的に調査・分析し、2ケタの利益成長が向こう5年間にわたって持続できると確信を持てる企業にのみ投資している。このため、グローバル株式戦略で投資している企業は38社に集中投資している。1991年6月から30年余りの運用実績は、代表的な全世界株価指数(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス/円ベース)が年率7.11%に対し、代表口座は同12.21%と大きく上回っている。

 ただ、長期の運用成績ではインデックスに勝っているものの、過去3年では年率14.71%と全世界株インデックスの同19.98%に劣後している。この劣後した理由について、スメルチェック氏は、「日本への投資比率を高め、米国への投資比率を下げていたことが要因」と分析している。たとえば、2023年の米NASDAQ指数の上昇は、「マグニフィセント・セブン」といわれるアップル、マイクロソフト、アルファベットなど超大型7銘柄の上昇に支えられた歪な上昇だったため、同社の戦略はその上昇とは異なる動きをした。ただ、同社の運用チームでは、2023年に起きたような一部の銘柄だけが異様に上昇するような相場は長く続かないと考えており、「今後は米国の景気が減速することが見込まれるが、クオリティ・グロースで絞り込んだ銘柄を保有している当社の戦略は、景気減速によって株価が下落したとしても、全体の下げに抵抗することができる。中長期的には、従来のようにインデックスを上回る成果を実現すると確信している」と語っていた。

 また、日本株戦略を担当するケイ氏は、今年は日経平均株価が30%程度値上がりしているにもかかわらず、同社の日本株戦略は6%程度の上昇にとどまっていることについて、「今年の日本株の上昇は、銀行、商社、自動車、海運という業種の上昇に引っ張られたが、これらはクオリティ・グロースの定義に当てはまらないため投資していない。このような銘柄が上昇した背景には、グローバル投資家が中国株への投資の先行きに不安を感じたため、それに代わるアジア株式として日本の株式に資金をシフトする動きがあったためで、個々の企業のファンダメンタルズを評価して購入しているわけではない。このような異様な動きであるため、世界株の物色の流れは今年からグロース株優位に転換したにもかかわらず、日本株はバリュー株優位の相場が継続している。このような動きは長続きしないと考えている」と語った。同社の日本株戦略は、2009年6月末のスタートから年率12.8%という実績があり、この間のTOPIX(東証株価指数)の同9.0%を大きく上回っている。ケイ氏は、同社の日本株戦略のパフォーマンスも10%以上の過去実績を回復すると見込んでいると語った。

 そして、現在、同社が投資する上で注目しているテーマは、「国内成長リーダー」「デジタル化」「高齢化」「アジアの成長」「生産性の向上」という5つの切り口を紹介し、中でも、「アジアの成長」という分野には大きな可能性があり、その点で日本株投資はグローバル投資の性格も持っていると語った。アジアにおいては、日本企業の製品、ブランドなどがアジア各国の産業に不可欠な存在になっているものが多い。中国経済の先行きが不安視されているが、たとえば、ユニクロを展開するファーストリテーリングや、半導体製造装置の東京エレクトロンなどは中国向けの輸出が伸びて成長を続けているケースもあり、「中国でも中国のニーズに適うような製品・サービスを提供している企業は成長が可能だ」と個々の企業の事業戦略を冷静に分析する必要があると強調していた。

 最後にコムジェストの企業との対話をテーマに講演した江上氏は、「企業との間では、ESGを切り口にした対話が増えている」と語った。欧州の運用会社としてESG専門のアナリストを擁している同社には、ESG関連のアドバイスを期待されていると感じることが多いという。そのため、各社のESGの取り組み度合いを評価し、同社が独自に付与しているESGクオリティレベル(「リーダー」「基本レベル」「最低限レベル」「要改善」の4段階)などを使って、このレベルを上げるには、どのような取り組みが必要かということを具体的に提案している。その過程で、たとえば、ESGの取り組みに優れた企業と、ESG改善を望む企業が対話する機会を設けたりするなど、コムジェスト独自の活動を展開し、企業との長期的な良い関係を築いていると語っていた。(写真は、「Comgest Partners Event 2023」の様子)