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<新興国eye>カンボジア中央銀行のチア・スレイ副総裁、総裁に昇格―政権若返りの一環か

2023-08-18 08:49:00.0

 7月29日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)の総裁に、これまで副総裁であったチア・スレイ氏が就任しました。同日に、シアモニ国王陛下の承認を受けて任命されたものです。女性がカンボジア国立銀行総裁となるのは初めてとなります。前任の総裁は、父親であるチア・チャント氏でした。中央銀行総裁は、カンボジア政府では上級大臣格に相当します。

 カンボジアでは、38年間首相を務めたフン・セン首相が退陣を表明し、長男のフン・マネット氏が8月22日に次期首相に就任する予定で、閣僚メンバーも大幅な若返りがなされるものと見られています。チア・スレイ総裁の誕生は、その第一歩と見られます。

 チア・スレイ氏は、1981年生まれ(42歳)で、ニュージーランドのヴィクトリア大学に留学経験があります。1999年にカンボジア国立銀行に入行しました。「親の七光り」ということは全くなく、チア・スレイ氏は、数多くの改革や近代化を実現し、カンボジアの中央銀行や銀行セクターを一変させたと言っても過言ではない業績を上げてきました。

 信用情報を集積するカンボジア信用機構の立ち上げと発展、銀行間即時決済システムFASTやCSSの実現、証券担保型流動性供給オペレーション(LPCO)の導入に始まり、フィンテック協会の設立等のフィンテックの振興、中央銀行デジタル通貨「バコン」の開発と実用化、多くの金融機関によるQRコードの統一「KHQR」の導入等の実績は、素晴らしいものでした。また、最近では、国際基準のバーゼル3に準拠した銀行監督規制の強化や金融リテラシーの改善等による金融包摂の推進にも力を入れています。こうした業績に対し、国際的な評価も高いものがあります。

 カンボジアで新進気鋭の女性中央銀行総裁が誕生したことは、大変大きな意義があるものと見られます。過去の実績を考えても、今後も金融セクターに様々な改革と近代化をもたらすものと大いに期待されます。

【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin−Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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