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割安な新興国の中小型成長株を狙い撃ち、S&P500の分散先にも選べる「エマージング・ハンター」の魅力

2024/04/22 16:36

 フィデリティ投信は4月24日に「フィデリティ・新興国中小型成長株投信(愛称:エマージング・ハンター)」を新規に設定し、運用を開始する。4月10日から野村證券で当初募集が始まった。同ファンドが投資対象とする新興国の中小型株の魅力や、フィデリティの新興国株についての運用体制等をフィデリティ投信の投信営業部部長の堀智文氏(写真:右)とシニア・プロダクト・スペシャリストの齊藤聡氏(写真:左)に聞いた。

 ――新興国の中小型株は、投資対象として、どのような特徴があるのでしょうか? 

堀 新興国経済は、中間所得層の増加に伴う消費拡大、世界的なサプライチェーン再構築、現地企業による製品・サービスの内製化など、構造的な追い風を受け、新たな成長ステージを迎えています。先進国と比較しても、成長期待の高い新興国には大きな魅力があります。

 その中にあって中小型株は、より高い成長が期待される投資対象です。過去10年間を振り返ると、「テンバガー(10倍化)」を達成した銘柄数は、先進国株指数(MSCIワールド、対象1480銘柄)では51銘柄だったのに対し、新興国中小型株指数(MSCIエマージングマーケッツ中小型株指数、対象2799銘柄)では182銘柄でした。また、テンバガー達成銘柄の過去10年の株価上昇率は平均で約30倍でした。

 ただ、約2800銘柄の投資ユニバースは玉石混交です。テンバガーもあれば、長らく株価が低迷している銘柄もあり、また、中には経営危機に陥って株価が大きく下落するような銘柄もありました。その点では、インデックスで投資するよりも、企業調査をしっかり行ってアクティブに銘柄を選定するアプローチが重要な市場であると思います。

 ――「なぜ、今、新興国中小型株なのか?」ということについて、積極的に注目すべき理由を教えてください。

堀 新興国株式市場は過去10年を振り返ると一部インド株を除き、ほとんど注目されてきませんでした。たとえば、コロナ・ショックで株価が急落した2020年3月末から2024年3月末までの4年間の株価上昇率を日本円ベースで振り返ると、先進国株(MSCIワールド)はプラス182%、日本株(TOPIX)はプラス117%でした(配当込みトータル・リターン)。新興国株はプラス93%で先進国の半分程度の上昇率に留まっています。実際2011年以降、約13年間にわたって先進国株が新興国株をアウトパフォームしてきました。「マグニフィセント・セブン(M7)」といわれるような大型ハイテク株が相場をけん引してきました。

 しかし、昨年後半頃から、フィデリティ(米国)において新興国株への投資を見直す動きが出始めました。先進国の大型ハイテク株からの分散を検討する投資家が出てきたということです。バリュエーションで見ても、先進国株の予想PERは約18倍で、新興国株は約12倍です(2024年3月時点)。中国株、ブラジル株は約8倍であり、割安な水準となっています。そのような見直し機運が出てくる中で、コロナ・ショックの大底(2020年3月末)から4年間で、新興国中小型株はプラス163%と先進国に匹敵するパフォーマンスをあげています。

 世界の生産年齢人口をみると、先進国の約8億人に対し、新興国は約44億人です。人のいるところにはビジネスのチャンスがあります。新興国には大きな成長期待があることが明らかです。ところが、世界株式の時価総額でみると、「全世界株式(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)」に占める新興国株の割合は約11%です。一方、「M7」といわれる7銘柄で約18%を占めています。企業の利益成長率の見通しは、先進国がプラス9.8%に対し、新興国株はプラス14.4%、新興国中小型株はプラス16.7%となっていて、新興国の中小型株の優位性は際立っているにもかかわらず、市場では見過ごされています(2023年末時点)。

 この10年間は、先進国株が優位に推移してきましたが、今後は、新興国株の中でも特に利益成長期待の高い中小型株への見直しが進んでもおかしくないと考えます。

 ――フィデリティの新興国株式の運用体制を教えてください。フィデリティの新興国投資の強みとは?

齊藤 フィデリティはグローバルに運用・調査体制を構築していますが、ここ数年で新興国株の調査体制を大幅に拡充しました。例えば、新興国株運用チームに所属するスペシャリストは43人で、企業調査担当は20名と、2015年比で4倍の陣容に拡大しています。また、新興国株関連の運用資産額も2023年末で約9.1兆円の規模になっています。

 フィデリティの運用の強みは、世界最大級の運用プロフェッショナルが800名超という運用体制を背景に、年間約2万本の調査レポートに自由にアクセスし、縦横に情報連携できる仕組みを構築していることです。グローバル化した市場において新興国の企業調査に、先進国の調査実績が活かせることは想像に難くないと思います。また、新興国チームの企業調査担当が、ブラジルの新興企業の調査に向かうような時には、ラテンアメリカ担当のポートフォリオマネジャーや調査チームが協力することによって、はじめてのブラジル訪問であっても、現地の工場の視察や幅広い関係先への取材が可能になります。

 また、新興国株チームにとって重要なサポートとして、ガバンス・フォレンジック(不正)会計調査チームや地政学リスクの専門家の存在があります。新興国の中小型企業にはガバナンス体制の不備などから、先進国の大企業にはありえないようなガバナンス上の問題が勃発して経営が危うくなるようなことが起こり得ます。また、地政学や安全保障にかかわる問題で経営環境が大きく変わるリスクもあります。これらの事態に直面した場合、あるいは、巻き込まれる可能性がないかなど、新興国企業特有の経営リスクを見極め、運用をサポートしています。このようなサポートを組織的に行う体制を整えているのは、フィデリティ独自の強みだと思います。

 ――ファンドの運用方針は? 銘柄選定のポイントは?

齊藤 素晴らしいビジネスを有する企業に割安な価格で投資することをめざします。資本コストを上回る利益を長期にわたって稼ぎ続けることができるかを見極めるために徹底的な企業調査を行い、市場が見過ごしている投資機会を発掘することに努めています。

当ファンドの運用担当であるグレゴリー・リーは、20年以上の運用調査業務を経験するベテランですが、新設ファンドと同じ運用哲学を持つ米国籍ファンドの運用を2014年6月から担当しています。リーが率いる運用チームでは「バッティング・アベレージ手法」という運用戦略をとっています。これは、特定の銘柄に大きなウエイトをかけることなく、組み入れ銘柄にほぼ均等にウエイトをかけたポートフォリオをつくることによって、認知・自信過剰バイアスを最小化し、コンスタントに市場に勝ち続けるという投資手法です。ファンドでは100〜150銘柄という比較的幅広い銘柄に分散投資して、特定の銘柄がファンド全体のパフォーマンスを左右することがないようにしています。

 ――新ファンドのマザーファンドと同じ投資哲学、運用戦略に基づいて同じ運用担当者が運用している参考ファンドは、2011年から10年以上の運用実績があり、新興国中小型株指数等を上回るパフォーマンスの実績があります。インデックスを上回る成績を実現できた主な要因は?

齊藤 ファンドの超過収益の源泉は、主に銘柄選択の効果によります。たとえば、メキシコのスーパーマーケットであるチェドラウイは、消費拡大によって大きな成長を遂げ、1株当たり利益が過去10年で4倍以上に成長しました。また、ブラジルのアパレル業界トップのロジャス・レナーは、中高所得層の増大によってアクセサリーや香水などのラグジュアリー商品の需要が好調で高成長を遂げてきました。

この他、メキシコのリートであるFIBRAマッコーリー・メキシコは、保有する不動産物件の75%をメキシコ北部に持っていて、ニアショアリングの恩恵を受けやすく、企業によるサプライチェーン再構築に伴う業績成長が期待されます。さらにインドのバーラト・エレクトロニクスについては、インド政府の防衛関連製品の国産化推進という政策の後押しもあり、成長が中長期的に期待されます。このように、各国の状況に応じたきめ細かな調査に基づいて投資対象を選定しています。中小型株には、内需関連の銘柄が少なくないので、世界経済の動きとは別に、新興国それぞれの経済発展に沿って成長できる企業が多いことも特徴です。

 ――投資家は、新ファンドをどのように活用すればよいと思いますか?

堀 日本の投信市場では、引き続き先進国株に偏ったポートフォリオになっていると思います。株式投信の中で先進国に投資するファンドは約1,300本あります。一方で、新興国株に投資するファンドは約300本です。中でも中小型株は、これまで注目されてこなかっただけに手薄になっているカテゴリーだと思います。同じ株式でも、「S&P500」のような先進国の大型株やハイテク株と新興国の中小型株は相関性も相対的に低いです。分散投資の一環として「エマージング・ハンター」を現在のポートフォリオに加えることをご検討いただきたいと思います。