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投信積立契約の人気銘柄が分散、市場環境の変化と「新NISA」スタートが影響か?=ネット証券の投信積立契約件数ランキング23年12月

2024/01/05 18:00

 大手ネット証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次)2023年12月のトップは、前月同様に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」になった。そして、第2位には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が入ったものの、3位以下の顔ぶれが激変した。これまでは、「投信積立の王道といえば、『S&P500』か『オルカン(MSCIオール・カントリー・ワールド。インデックス)』」といえる状況が長く続いていたが、12月の結果からは、これまでの常識が揺らぎつつあることがみてとれる。

 ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。

 投信の積立契約は、2018年1月にスタートした「つみたてNISA」が普及の大きなきっかけになり、2024年1月にスタートした「新NISA」によって一段と大きく成長することが期待されている。その「新NISA」のスタートを目前とした昨年12月の投信積立契約のランキングが大きく変化した。これは、「新NISA」によって、より多様な性格の資金が投信市場に流入することを感じさせる動きといえるだろう。

 米国株価指数「S&P500」や新興国を含む全世界株価指数「オルカン」に連動するインデックスファンドを使って長期に積立投資を行って資産形成するという考え方は、SNSなどを使って若い世代の投資家の間で情報が共有され、それぞれの実際の投資成果などについて情報交換をしながら、成功体験を重ねることで普及してきている。特に、2020年以降の市場では、米国「S&P500」の上昇率が大きく、さらに、2022年にはマイナスのパフォーマンスになったものの2023年には盛り返して史上最高値に迫るほどに上昇したため、過去3年の成績は、この間の円安も追い風になって大きなプラスリターンにつながっている。それだけに根強い人気を保ってきた。

 ただ、この3年間、あるいは、遡って過去10年間の成功体験といえども、過去10年と現在では市場の環境が大きく変わってきていることを認識せざるを得なくなっている。大きな違いの1つは「金利」だ。2008年の「リーマン・ショック(世界金融危機)」によって大きく引き下げられ、「ゼロ%」、あるいは、「マイナス%」という水準にまで引き下げられた金利は、その後、幾分の浮上はあったものの、2020年の「コロナ・ショック」によって再び「ゼロ%以下」に引き下げられた。この間は世界的な低金利時代が継続していたことになる。それが、2022年から23年にかけて急速に引き上げられた。米国の政策金利(短期金利)は年5%台の水準にまでなった。

 この結果、過去10年と比較すると「債券」の魅力が格段と高まっている。低金利で債券の利回りが低く、債券に投資する価値が低い時代にあっては、「株式」が選好され、その中でも成長力の高い米国ハイテク株が好んで物色された。そして、2023年には、「マグニフィセント・セブン」といわれるアップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ、エヌビディア、テスラというハイテク大手7社に物色が集中するという事態になった。「S&P500」の上昇の約8割は、この7銘柄の上昇によって説明ができるような状況にもなり、「S&P500」や「NASDAQ100」などの上昇は、一部では「行き過ぎ」という見方も出るようになった。金利の上昇によって、様々な市場の見方が出るようになったということだろう。

 大手ネット証券3社の投信積立契約にも、市場の見方が多様化している様子が反映している。人気のトップこそ「S&P500」と「オルカン」で変わらなかったものの、その獲得ポイントは、前月の「28」から「20」や「18」へと大きくポイントを減らした。そして、前月まではネット証券3社のトップ10にも入らなかった銘柄が、新たにトップ10入りすることにもなっている。「<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」、「SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)」、「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」、「iFreeNEXT FANG+インデックス」など、今回トップ10入りしたファンド群も含めて1月以降には多くのファンドが新たな投資対象として浮上してくることが考えられる。人気の定着にはしばらく時間がかかると考えられるが、どのようなファンドが新たな積立対象として注目され、その人気が定着するのか、注意深く見守っていきたい。