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中間層の拡大で中長期的な成長が期待されるベトナム、株式市場のPERは依然として割安

2023/11/16 12:57

 中長期的な成長市場としてインド株式市場が注目され、インド株インデックスファンド等への資金流入が目立っている。インドで注目されているのは、世界最大となった人口の年齢構成が若く、今後の経済成長に伴って多くの中間層が生まれるという期待だ。そのような若い人口が多く、中間層の拡大によって長期的な経済成長が期待される国としてベトナムがあげられる。人口が約1億人であり、14億人を超えるインドと比べると小さいが、若い労働力が子供や高齢者よりも多い「人口ボーナス」の時期を迎えていることは同じで、中国に一極集中していた生産設備を中国以外の国に移転させようという「チャイナ・プラス・ワン」による恩恵を受ける地域であることも似ている。ベトナム市場を現地調査しているイーストスプリング・インベストメンツ(ベトナム)のCEO兼ヘッド・オブ・インベストメントのNgo The Trieu氏は「ベトナムの中間所得層は現在、人口(9700万人)の13%を占め、2026年までに倍増することが予想されている」と、中間層の拡大によってベトナムの経済、そして、株式市場は力強く成長するとレポートしている。

 Trieu氏は23年11月に発行したレポートで、「2012年から2022年にかけて、ベトナムの輸出成長率は年平均12%を記録し、これは世界の同成長率の4倍だった」と輸出主導で年平均6%の経済成長を遂げたベトナムの魅力を紹介。そこには、サムスン、グーグル、マイクロソフト、アップルなど世界的企業が近年、「チャイナ・プラス・ワン」戦略の一環としてサプライチェーンの一部をベトナムに移転されている動きがある。特に、2017年から2022年にかけて、米国の輸入に占める国・地域別シェアでベトナムのシェアは2%上昇し、これは1%以下の台湾、インドなどを大きく上回っている。アメリカは2023年9月に、中国、ロシア、日本、インド、韓国に続く6番目の「包括的戦略的パートナーシップ」を締結した。この動きを後押ししようとベトナムは大規模なインフラ投資を実施し、複数の自由貿易協定を結んでいる。「インフラに対する公共・民間の投資はGDPの5.6%に達し、これは東南アジアで最も高く、アジア全体では中国に次いで2番目に高い」。

 また、ベトナム株式市場は、2013年12月末時点の時価総額452億ドルが、2023年9月15日時点では2612億ドルと5倍以上に成長し、上場銘柄数も788銘柄から1584銘柄へと倍増したことで業種の分散化も進んだ。この間の企業収益は年平均成長率(CAGR)で16.2%を記録した。現在、代表的な株価指数であるVN指数の12カ月先PER(株価収益率)は10倍と過去平均を2標準偏差近く下回っている。

 さらに、ベトナムは2025年までに、少なくとも1つの世界的な株価指数において、自国市場のカテゴリーをこれまでの「フロンティア」から、「新興国市場」に昇格させることを目指している。この昇格によってパッシブ運用投資からだけでも10〜30億ドルの資金がベトナムに流入する可能性が指摘されている。現在、ベトナム政府は、ベトナム株式に外国人投資家が株式購入注文を出す前に十分な資金をベトナムに送金しなければならないという「プレ・ファンディング規制」や、外国人持ち株比率制限などがあり、外国投資家の参入を制限しているが、これらについて「課題に対処する方法を模索している」段階だ。2023年末を目途に新しい株式取引システムに移行する予定で、新たな商品、取引、決済ソリューションが導入される。

 Trieu氏は「ベトナム株式市場は、同国の中間所得層の拡大から恩恵を受ける投資機会を投資家に提供する。同市場はまだ発展の初期段階にあるため、既に投資を開始している先発組の投資家は長期的に魅力的なリターンを享受できる可能性がある」とする。そして、未だに現地で包括的に企業調査する機関が少ないことから、ベトナムで企業ファンダメンタルズ調査と分析に多くの時間とリソースを費やせば「アルファ(超過収益)獲得の機会が増える可能性がある」としている。

 「イーストスプリング・ベトナム株式ファンド(愛称:+αベトナム)」は、ベトナムで設立、または、上場している企業、主にベトナムにおいて事業展開を行っている企業、収益の相当部分をベトナムで得ている企業、子会社または関連会社が収益の相当部分をベトナムで得ている企業の株式を主要投資対象としている。実質的な運用は、イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)が行っている。2022年7月の設定で、2023年10月末現在の過去1年間のトータルリターンは5.56%になっている。この間、カテゴリー(国際株式・エマージング・単一国(為替ヘッジなし))の平均トータルリターンは4.40%でカテゴリーを上回る成績を残している。