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低コストのインデックスファンドシリーズが再び設定ラッシュ、新NISAを控えて競合過熱の見通し

2023/06/26 18:33

 投信市場で再びインデックスファンドの設定ラッシュがやってきた。6月の設定予定ファンドだけでもSBIアセットマネジメントの「SBI・V」、「SBI・Iシェアーズ」のシリーズ合計11本のほか、日興アセットマネジメントの「Niつみ」シリーズ2本、PayPayアセットマネジメントの「PayPay投信」2本と、合計15本のインデックスファンドが新規設定される。新設ファンドは、信託報酬率が年0.1%を下回るような低コストの単独インデックスファンド、または、信託報酬が年0.5%を下回る複数のインデックスを組み合わせたファンドになっている。手数料水準は、同種のインデックスファンドの最低水準が、最低に近い水準にしている。この時期に、再びインデックスファンドが多く設定されるようになったのは、2024年1月にスタートする新NISAを意識した動きといえ、今後も低コストのインデックスファンドの設定は続きそうだ。

 SBIアセットマネジメントは6月7日に「SBI・V・米国増配株式インデックス・ファンド」、「SBI・V・先進国株式(除く米国)インデックス・ファンド」、「SBI・V・世界小型株式(除く米国)インデックス・ファンド」、「SBI・V・米国小型株式インデックス・ファンド」、「SBI・V・新興国株式インデックス・ファンド」、「SBI・iシェアーズ・米国総合債券インデックス・ファンド」、「SBI・iシェアーズ・米国投資適格社債(1−5年)インデックス・ファンド」、「SBI・iシェアーズ・米国ハイイールド債券インデックス・ファンド」、「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)」、「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」、「SBI・iシェアーズ・米国短期国債ファンド」の11本を一挙に設定した。

 うち、「SBI・V」シリーズの5本は、外国株式を主要な投資対象としたインデックスファンドだが、既存のインデックスファンドのラインナップの主力の1つである「SBI・V・新興国株式インデックス・ファンド」を除くと、「米国増配株式」、「世界小型株式」など、主力の株式インデックスファンドを補完するようなインデックスに連動するファンドになっている。

 また、「SBI・iシェアーズ」シリーズは、債券やコモディティといった外国株式以外のインデックスになっている。これまで、「つみたてNISA」の対象ファンドは、株式を中心としたファンドのみが投資対象として認められていた。このため、「つみたてNISA」対象ファンドのラインナップには、債券だけに投資するファンドはない。新NISAのつみたて投資枠は、「つみたてNISA」対象ファンドがそのままに投資対象となるため、「債券ファンドでつみたて投資を行う」ということは「つみたて投資枠」ではできないことになる。しかし、一定水準にまで株式の保有が高まれば、リスク分散の観点から、債券を加えたバランス運用に切り替えたいと考えることもあるだろう。その場合、これまでは債券等を含むバランスファンドで調整するしか方法がなかった。新NISAでは「成長投資枠」で債券ファンドが購入可能になる。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用することによって、バランスの取れた運用に移行することが容易になった。このため、今後は、債券型の低コストのインデックスファンドの設定も増えると考えられる。

 「SBI・iシェアーズ」は、いち早く、「米国総合債券」、「米国投資適格債」、「米国ハイイールド債券」、「米国短期国債」という主要外債ファンドを押さえたシリーズになった。加えて、株式と債券の分散投資効果にプラスαの分散投資効果をもたらすといわれる「ゴールド(金)」も加えている。さらに、「SBI・iシェアーズ」では、7月12日に「日経平均株価(日経225)」と「TOPIX(東証株価指数)」に連動する日本株インデックスファンドを追加設定することを発表している。これによって、これまで投信のつみたて投資が「S&P500」、または、「全世界株式(オール・カントリー)」に偏っていた実態を、広く分散して安定化させることが可能になる。

 そして、PayPayアセットマネジメントは、「PayPay投資信託インデックス 世界株式」と「PayPay投資信託インデックス 先進国株式」を6月28日に新規設定する。ノーロード(購入時手数料無料)、かつ、業界最低水準の信託報酬率をめざす「PayPay投信」シリーズは、これまで、「日経225」、「NASDAQ100」、「NYダウ」、「米国株式」というラインナップだった。ここに、「世界株式」と「先進国株式」が加わることでラインアップが充実した。

 一方、日興アセットマネジメントが6月20日に新規設定した「Niつみ」シリーズ2本の「Niつみインデックスラップ世界10指数(均等型)」と「Niつみインデックスラップ世界10指数(安定成長型)」は、新NISAを見据えたインデックスファンドながら、上記の2シリーズとは商品性格が異なる。まず、販売時手数料を上限2%以内で認めている。さらに、信託報酬率が年0.48%(税込み)と上記2シリーズが年0.1%程度であることと比べて4倍以上コストが高い。この理由は、同ファンドが「世界10指数」に分散投資するバランスファンドだということだろう。さらに、同じ10指数を使ったバランスファンドでも、10指数に均等に投資する「均等型」と、株式・債券・REITのリスクを均衡させる(リスク・パリティ戦略)「安定成長型」の2つのコースを用意している。

 「SBI・V」、「SBI・iシェアーズ」、「PayPay投信」などのシリーズが単独のインデックスに連動することをめざすインデックスファンドで、かつ、ネット専用での取り扱いを想定し、徹底して低コストにこだわっていることに対し、「Niつみ」シリーズは、銀行や証券会社の窓口販売を前提に作られたファンドといえる。ファンドの内容について説明し、運用の特徴や使い方などをアドバイザーが説明して納得して使ってもらおうという意図がある。単独インデックスのファンドが、ポートフォリオ運用では部品の1つを提供しているようなことに対し、10のインデックスを組み合わせる「「Niつみインデックスラップ世界10指数」は、そのファンド1つだけでもポートフォリオ運用ができるファンドになっている。中長期の資産形成を広く分散したポートフォリオで安定的に運用したいという投資家のニーズに適っている。

 さらに、7月10日には野村アセットマネジメントがノーロード、かつ、低コストのインデックスファンドシリーズ「はじめてのNISA」をシリーズで新規設定する予定になっている。「日経225」、「TOPIX」、「米国株式(S&P500)」、「全世界株式(オール・カントリー)」、そして、「新興国株式」の5本のラインナップでスタートする。「全世界株式(オール・カントリー)」については、日興アセットの低コストファンドシリーズの1つ「Tracers MSCIオール・カントリー(全世界株式)」の年0.05775%(税込み)という業界最低水準と同水準に設定している。

 従来は、ノーロード、かつ、低コストのインデックスファンドといえば、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」、ニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」、大和アセットマネジメントの「iFree」、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「My SMT」、りそなアセットマネジメントの「Smart−i」、「SBI・V」、「PayPay投信」などが代表格だったが、ここに、これまでは一線を画してきた野村アセットマネジメントや日興アセットマネジメントも真正面から加わってきたといえるだろう。それほど、インデックスファンドについてのコスト意識が強いということがうかがえる。今後、新NISAに向けて、他の運用会社からも低コスト・インデックスファンドを投入してくる可能性もある。今後の展開に注目したい。


(イメージ写真提供:123RF)