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新NISAで知っておきたい投資のセオリー、NISAで使えない「毎月分配型」に代わる定額引き出しの効用

2023/02/27 18:39

 2024年からスタートする新しいNISAを使って投資をスタートしようと考えている人は少なくないだろう。従来のNISAでは年間非課税投資額が一般NISAで120万円、つみたてNISAで40万円しかなく、しかも、そのどちらかしか使えなかったことに対し、新しいNISAでは年間非課税枠は最大360万円に拡大される。さらに、非課税期間に限度がないため、この制度を大いに活用して大きな資産を作りたい。現在の一般NISAの後継制度として位置付けられている「成長投資枠」では、上場株式や投資信託など幅広い商品を選択することができるが、「毎月分配型」や「高レバレッジ型」の投資信託は利用できない。信託期間が20年未満の投資信託もNISAの対象から外れるため、新しいNISAは、長期投資による「資産形成」のための口座と位置付けられていることがわかる。リタイアメント層など資産活用層は、「毎月分配型」に代わる「毎月の定額引き出し」を利用して資産保全に活用できる。

 「毎月分配型投信」は、金融庁に特に嫌われる投資信託になってしまった。一部の毎月分配型投信で、一定額の分配金を維持するために、運用成績が良くない月でも元本を取り崩してまで分配金を支払っているような事例があり、「資産形成のための手段になり得ない」と断じられてしまっている。しかし、金融庁の厳しい批判を浴びても、投信市場から「毎月分配型」の投資信託はなくならず、「予定分配金提示型(運用成績が良い時のみ毎月でも分配をする仕組み)」など形を変えてでも存続が図られている。それだけ、毎月分配型には根強い需要があるためだ。

 「毎月分配型投信」の需要として、もっとも一般的なのは、年金暮らしのリタイアメント層が、退職金などを使って「毎月分配型投信」を一括購入し、毎月の分配金を年金を補完する資金として活用することだ。たとえば、3%程度の水準で安定的な分配金を出しているファンドがあれば、3000万円分を購入すると年間の分配金総額は90万円になる計算で、これを毎月分配で3万6000円ずつ受け取るような仕組みになる。ファンドが年3%以上の収益率で安定的に運用できれば、理屈の上では投資元本は減ることもなく、永遠に毎月の分配金を受け取れることになる。

 ところが、「リーマン・ショック」のような数年にわたる株価の低迷があったり、世界の主要国の国債金利がゼロ%台やマイナスに落ち込むようなことが起きるなど、想定を超えるような市況変動によって「毎月分配型投信」で元本を減らすことなく安定的な分配を続けられるような商品はほとんどなかった。20年以上と長期にわたって運用を継続している「毎月分配型投信」の基準価額は5000円を下回っていたり、毎月の分配額が1万口あたり10円を下回るなど分配水準が大きく切り下がったものもある。「無い袖は振れぬ」とはいえ、1万口あたり毎月分配金が10円だとすると、基準価額が10000円近辺であれば、年利回りは1.2%程度でしかない。「年金の補完」として使うには物足りない水準だ。

 ただ、「毎月分配型投信」がめざした「運用しながら資金を取り崩す」という考え方は、これからの「新しいNISA」と「人生100年時代」を生き抜く上で、重要な考え方になる。たとえば、手元にある240万円から、毎月1万円ずつ取り崩す(年間5%相当)とすると、当然ながら240カ月(20年間)で使い果たしてしまう。ところが、この240万円を年率3%(毎年末に付利)で運用できたとすると、収益非課税の新しいNISAで運用をしていた場合、資金が底をつくまで357カ月(約30年間)に延びる。約20%が課税されるNISA以外の口座で同じく年率3%で運用しながら取り崩すと、資金が底をつくまで321カ月(約27年間)になる。運用するだけで、資金の寿命が7年間延び、新しいNISAを使うと約10年間も寿命を延ばすことができる。70歳の人にとって、資金の寿命が20年と30年では、非常に大きな差になる。

 新しいNISAでは、「成長投資枠」で年間240万円まで非課税で投資ができる。成長投資枠の上限は1200万円であるため、毎年240万円を投資して5年間で1200万円の限度額に達する計算だ。投資金額が1200万円になると、年率3%の運用で年間の収益額が36万円。元本を減らすことなく、毎月3万円を引き出しできる計算だ。先ほど計算したように、年率3%で運用しながら年5%の取り崩しを行うと、毎月5万円(年間60万円)を取り崩すことが可能になる。それで資金が底をつくのが約30年後という計算だ。

 年率3%以上で運用できるファンドは、探すことはさほど難しくない。たとえば、年6回分配型(隔月分配)で、野村アセットマネジメントの「ハイブリッド・インカムオープン」は、過去10年間の年率トータルリターンが4.73%になっている。2023年2月24日現在の分配金利回りは2%で、23年1月末時点の1年リターンは3.41%になっている。分配金利回りとトータルリターンのバランスが比較的良いのではないだろうか。また、「フィデリティ・世界分散・ファンド(債券重視型)」も隔月分配のファンドだが、こちらは、過去10年で年率トータルリターンが5.26%。分配金利回りが2.54%で過去1年のトータルリターンはマイナス2.56%であり、過去1年間の成績は小幅ながらマイナスになっているものの、長期で安定したリターンを重ねている。毎月の取り崩しに耐えられるような安定的な運用をしているファンドは、隔月分配ファンドなど分配頻度が高いファンドに多いといえるだろう。個々のファンドについて、組み入れる資産の内容や過去の運用成績などをよく検討して価格のブレが大きくないファンドを選ぶようにしたい。

 毎月の取り崩しなどを考える場合は、基準価額が短期間に大きく下落するファンドは、価格の底値で売却するようなことになると資産の目減りが大きいため好ましくない。自分自身の投資目的に適ったNISAの使い方、また、投資目的にふさわしいファンドを選ぶことが重要だ。(グラフは、年率3%で運用しながら、年間で資産の5%を取り崩した場合の資産価値の推移)