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過去10年の資産クラスリターンで突出した「先進国株式」、2022年の大変化は過度な楽観を見直す機会に

2023/01/18 20:06

 2022年まで過去10年間の資産クラス別リターン(円換算なし)をみると、2022年の1年間が株式、債券、REITの7資産で1つもプラスリターンがない、極めて厳しい1年間であったことがわかる。これは、2019年に7資産が全てプラスであったことと真逆の結果になった。また、この10年間を振り返ると、国内株式(7勝3敗)や先進国株式(7勝3敗)、ハイ・イールド債券(7勝3敗)が優位な10年であったことがわかる。反対に、新興国株式(4勝6敗)や先進国REIT(4勝6敗)にとっては厳しい期間だった。すべての資産がマイナスになった2022年を経て、市場は大きな転換点を迎えたと考えられる。今後の行方を展望してみたい。

 過去10年間の主役を務めたのは「先進国株式」といえる。先進国株式インデックス(MSCIコクサイ指数)は10年間でプラス149.77%(約2.5倍)という上昇を記録した。これは、2022年にマイナス17.8%という下落を加味しての数値だ。この間の年平均リターンは9.59%に達している。これに次ぐ成績は「国内株式」で、TOPIX(東証株価指数)の上昇率は112.91%(約2.13倍)だった。年平均リターンは7.85%だ。過去10年間は先進国の株式にとって非常に良い期間だったといえる。

 この先進国の株高を支えていたのは、世界的な低金利だ。特に、2020年3月に起こった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から世界経済を窒息死させまいと、先進国をはじめ世界の中央銀行が政策金利をゼロ%に落とすほどの急速な利下げを行い、また、市場から国債等を買い上げることによって現金をばらまいた。その結果が2021年以降に顕在化した激しいインフレ(物価高)につながるが、それまでの大幅な金融緩和が株式市場にとっては強烈な追い風となった。ただ、巨大な金融緩和だっただけに、大きな資金の受け皿となりえる規模や流動性が重視された。その結果、新興国の株式は市場の関心の外に置かれた。この10年間で「新興国株式」の株価指数(MSIS新興国株式指数)はマイナス2.07%と弱含みの横ばいだった。

 過去10年間で目立って成績が悪かったのは、「新興国債券」だ。年間騰落率こそ5勝5敗と五分五分の成績だったが、下落時の下落率が大きかった。指数(MSIS新興国ソブリン・ボンド指数)は10年間でマイナス34.39%と大きく下落した。同様に、「先進国REIT」の指数(FTSE EPRA/NAREIT先進国不動産 除く米国)もマイナス19.43%だった。この2資産は、2022年の下落率がともに20%台(新興国債券がマイナス20.6%、先進国REITはマイナス26.9%)と大きかったことが響いた。

 2022年に起こったことは、中央銀行の大幅で急速な利上げだ。2021年まで続いていた金融緩和政策を大転換した1年だったといえよう。その結果、ゼロ%台だった米国の政策金利は4%を超え、マイナス金利だったドイツ10年国債利回りは2%台になった。この結果、米国で一時は前年比9%を超えていたインフレ率は低下に転じた。依然として前年比6.5%という高い水準のインフレ率になっているため、引き続き米国の利上げ姿勢は強い。ただ、急速な利上げによって、一部の企業では業績悪化に陥り、人員削減に踏み切る企業も出てきている。このままインフレ率が低下していくことが確認できれば、米国の金融政策は中立に向かい、次には、上げ過ぎた金利を低下させる方向が見えてくるだろう。

 2022年に起こった変化は、今後の資産運用を考える上で無視することはできない。「先進国株式」や「国内株式」の上昇を演出した「超低金利・大幅な金融緩和」という時代は終わった。金利水準は2%〜4%という水準に上昇したことによって、何も考えずに「先進国株式」のインデックスファンドに投資していれば、最も良いパフォーマンスが得られるという時代ではなくなった。「先進国株式」をはじめとした株式への投資は、中長期の資産形成を目的として積立投資を続ける対象としては十分に魅力的な資産クラスであり続けるだろう。ただ、同じ株式でも、過去10年において2倍以上に成長した「先進国株式」とマイナス成長だった「新興国株式」のようにパフォーマンスの良し悪しはある。より良いパフォーマンスを勝ち得るためには、「先進国株式」ばかりでなく、新興国や債券、あるいは、REITにも目を配り、幅広い資産クラスを見る必要がある。これは、資産運用の基本的な姿勢だ。これまでの「株式投資への過度な楽観」を正し、通常のバランスのある投資姿勢に戻って、これからの戦略を考えたい。(図版は、過去10年の資産クラス別リターン)