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2024-06-04 09:01:00.0
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エージーピー<9377.T>は5月15日、24年3月期の決算説明会動画を公開し、代表取締役社長の杉田武久氏が今後の戦略を語った。
24年3月期は売上高129億8600万円(前期比17.6%増)、営業利益は10億5900万円(同2.0倍)で経常利益、当期純利益とともに計画を上回った。足もとは航空需要の回復を背景とした増収増益基調にあり、コロナ禍からの確実な回復を示している。24年度からは、成長事業の創出、技術研究開発、財務戦略、ESG経営の推進による経営基盤の盤石化、人的資本経営等の実行を加速させるため、一時的に営業利益率は低下し、減益となる計画を行うが、「中計最終年度の25年度目標値である営業利益率10%は変わらず目指している」(杉田社長)と意欲を見せた。
24年3月期はセグメント別に、「動力供給事業」は売上高54億7500万円(前期比28.3%増)、営業利益10億1000万円(同4.1倍)。航空便数の回復に加え、原材料費高騰に応じた価格転嫁により売上が伸長。一方、「エンジニアリング事業」も、売上高64億9300万円(同10.2%増)、営業利益13億3500万円(同3.6%増)と堅調に推移した。航空需要の回復に伴い、空港内の特殊機械設備の保守業務が増加したことや修繕工事の増加等により売上が伸長。「商品販売事業」は、AGPでんきサービスを23年2月に終了したことによる影響がある一方、「フードシステム販売」は積極的な地方展開が進み、前年を59.8%、「GSE等販売」は前年を32.7%上回るところまで回復し、同事業として売上高は10億1700万円(同12.8%増)なった。
中期経営計画で掲げるのは、「ESG経営を推進」し、「成長の実現」と「戦略投資と還元の両立」を行うというメッセージ。環境社会実現に向けた貢献としては、動力供給事業の中小規模空港における小型機等への電力供給ツールとして国産初のバッテリー駆動式GPUの開発を行い、「Be power.GPU」と称して商標登録を終えており、販売実績もある。
環境と電気とDX(デジタルトランスフォーメーション)の領域で事業の多角化を狙っており、National Agendaの空港における脱炭素に向けた取り組みの1つである、空港車両のEV化を好機と捉え、羽田空港ビルデングと空港車両のEV化調査事業を実施、また、高松空港に電動トーイングトラクター(空港などで航空機や貨物をけん引する車両)と充電設備を設置し実証事業を行った。この先、得意な電気を主軸としたこの領域で、技術を駆使した新たな製品や機能を具備できるよう努め、成長の実現に繋げていく方針。
一方で、成長の実現に向けた戦略投資の実行が遅延していることを問題視し、24年度からは一時的にFCFがマイナスになることを覚悟し、成長分野へ積極的な資本投入を行い、資本効率を高め企業価値向上を目指す。目標達成に向かい、就任後直ぐに、スピード感を持って解決にあたるため、組織構造を再編することとし、チーフオフィサー制度を導入。加えて、従来の部門制だけでなく、経営課題に対し全社横断的に関与する戦略担務を設け、各役員に明確なミッションを設定。
人材育成と社員福祉の充実については、23年4月より、確定拠出型年金を導入し退職金制度を統一した。また、同社にとって価値創出の原動力であり最大の資本である従業員が高い次元で挑戦し、その成果に報いる観点から、従業員自身が株主となることで従業員の経営参画意識が向上し、役員と従業員が一丸となって企業価値向上に取り組むことを目的とし、株式給付信託(J−ESOP)を23年5月より導入している。
上場維持基準適合には未達の状況だが、この2年間で上位3位までの主要な株主に保有されている同社株式を128万7,900株売却してもらい、当初17.73%だった流通株式比率は、24年3月31日現在において23.83%となった。今後も引き続き、最大の経営課題である、上場維持適合に向けて、過去の経緯から同社株式を保有している企業へ、保有株式比率低減に向け対話を続ける方針。
また、株主還元方針である「株主の皆様への安定的・継続的な利益還元を最も重要な課題の一つと認識した上で、内部留保や業績、財務状況等を踏まえた上で、年2回の配当を行うことを基本とする」を念頭に、1株あたりの利益を増大させることで株主価値の向上を図るとともに、配当及び機動的な自己株式取得に積極的に取り組んだ上で、中期4カ年トータルの総還元性向を100%以上とすることを目指す。
提供:ウエルスアドバイザー社