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年末年始特集

イベントひしめく24年政局――相場への影響は?

 2024年は国内外で重要な政治イベントがひしめく。米国では4年に1度の大統領選挙があり、国内も「派閥とカネ」問題に揺れる自民党と岸田政権が正念場を迎える。いずれも株式市場への大きなインパクトが予想される。

2024年の主な政治スケジュール

1月 ★台湾・総統選(13日)
★米・共和のアイオワ州党員集会(15日)
通常国会召集(26日?)
★フィンランド・大統領選(28日)
2月 京都市長選(4日)
★インドネシア・大統領選(14日)
3月 ★米・スーパーチューズデー(5日)
自民党大会(17日)
★ロシア・大統領選(1回目投票、17日)
熊本県知事選(24日)
★中国・全人代
4月 ★韓国・議会選(10日)
5月 立民の政治資金パーティー⇒見送り
6月 ★欧州・議会選(6~9日)
★G7首脳会議(13~15日)
東京都知事選告示(20日)
通常国会会期末(月内)
7月 東京都知事選(7日)
鹿児島県知事選(12日)
★米・共和党全国大会(15日)
8月 ★米・民主党全国大会(19日)
9月 ★米・大統領候補の討論会(1回目、16日)
岸田首相の自民党総裁任期(30日)
10月 ★米・大統領候補の討論会(2回目、中旬)
★米・大統領候補の討論会(3回目、下旬)
富山県知事選、岡山県知事選(月内)
11月 ★米・大統領選(5日)
★ASEAN首脳会議、G20首脳会議(月内)
12月 ★中国・中央経済⼯作会議(月内)

★は海外

再びトランプ旋風吹くか

 24年最大のイベントが11月の米大統領選。民主党現職のバイデン大統領を追い落とそうと意気込む共和党のトランプ前大統領には、機密文書の持ち出しなど複数の嫌疑がかけられている。それでも党内に有力な対立候補は見当たらず、バイデン大統領に対しても幾つかの激戦州で優位に立つ。

 現職有利の大統領選にもかかわらず、人気が低迷するバイデン大統領。高齢による健康不安に加え、長期化するウクライナ支援、さらにはイスラエルのパレスチナ自治区ガザへの侵攻をめぐる対応に、国民が不満を募らせている。米政治系サイトのリアル・クリア・ポリティクスによれば、23年12月18日時点の支持率はトランプ46.8%のバイデン44.5%だ。

 24年1月15日には共和のアイオワ州党員集会が開かれ、選挙戦が事実上のスタートを切る。3月のスーパーチューズデー(5日)をピークに予備選や党員集会が各州で行われ、その結果に従い全国党大会(共和は7月、民主は8月)で民主、共和の次期大統領候補が公認される。トランプ前大統領の公判もその間に行われるため、すう勢は11月5日の本戦まで流動的だ。

議会選結果、上下院共和が好成績

 また、忘れてはいけないのが大統領選と同時に実施される米国の議会選だ。現在上院は民主、下院は共和がそれぞれ多数派の「ねじれ」の状態で、いずれも議席数はきっ抗している。また、下院共和は内部で保守強硬派との軋轢(あつれき)が絶えないなど、政局を取り巻く勢力図は複雑さを極めている。スムーズな政権運営には大統領の率いる党が上下両院を掌握する形がベストなため、議会選の重要度は非常に高い。

大統領選・議会選の結果とNYダウの騰落率

選挙年 大統領 議会 NYダウ終値
上院 下院 20日前 当日 5日後 1カ月後 3カ月後 半年後
2020年 共和→民主 共和→民主 民主→民主 27,773 27,480 29,421 29,884 30,212 33,820
バイデン 1.1 7.1 8.7 9.9 23.1
2018年 中間選挙 共和→共和 共和→民主  
2016年 民主→共和 共和→共和 共和→共和 18,129 18,333 18,923 19,550 20,052 20,958
トランプ ▼ 1.1 3.2 6.6 9.4 14.3
2014年 中間選挙 民主→共和 共和→共和  
2012年 民主→民主 民主→民主 共和→共和 13,610 13,246 12,756 13,034 13,944 14,969
オバマ 2.8 ▼ 3.7 ▼ 1.6 5.3 13.0
2010年 中間選挙 民主→民主 民主→共和  
2008年 共和→民主 共和→民主 共和→民主 9,447 9,625 8,694 8,592 7,937 8,186
オバマ ▼ 1.9 ▼ 9.7 ▼ 10.7 ▼ 17.5 ▼ 15.0
2006年 中間選挙 共和→民主 共和→民主  
2004年 共和→共和 共和→共和 共和→共和 10,178 10,036 10,386 10,590 10,467 10,242
ブッシュ 1.4 3.5 5.5 4.3 2.1
2002年 中間選挙 共和→共和 共和→共和  
2000年 民主→共和 共和→共和 共和→共和 10,524 10,952 10,681 10,664 10,966 10,877
ブッシュ ▼ 3.9 ▼ 2.5 ▼ 2.6 0.1 ▼ 0.7
1998年 中間選挙 共和→共和 共和→共和  
1996年 民主→民主 共和→共和 共和→共和 5,967 6,081 6,266 6,423 6,813 6,962
クリントン ▼ 1.9 3.0 5.6 12.0 14.5
1994年 中間選挙 民主→共和 民主→共和  
1992年 共和→民主 民主→民主 民主→民主 3,236 3,252 3,225 3,286 3,310 3,416
クリントン ▼ 0.5 ▼ 0.8 1.0 1.8 5.0

大統領の下段は当選者、NYダウの下段は選挙当日に対する騰落率
日数は営業日。1カ月=20営業日、3カ月=60営業日、半年=120営業日
単位:ドル、%

NYダウ 大統領選後のパターン別勝敗

パターン 5日後 1カ月後 3カ月後 半年後
民主の大統領が勝利 2勝3敗 3勝2敗 3勝1敗 3勝1敗
共和の大統領が勝利 2勝1敗 2勝1敗 3勝 2勝1敗
議会が上下とも民主 1勝2敗 2勝1敗 2勝1敗 2勝1敗
議会が上下とも共和 3勝1敗 3勝1敗 4勝 3勝1敗
大統領、上下とも民主 1勝2敗 2勝1敗 2勝1敗 2勝1敗
大統領、上下とも共和 2勝1敗 2勝1敗 3勝 2勝1敗

勝敗は騰落率のプラスが勝、マイナスが敗

 なお、1992~2020年の8回の大統領選を受けたNYダウの騰落率(選挙当日起点、終値比較)は、半年経過時点で6回がプラスとなり、平均では7%上昇している。このうち選出された大統領が民主の場合でプラス8%、共和でプラス5%と民主の方に分がある。一方、大統領選と同日の議会選で上下両院を共和が制したケースの勝率も高い。

 24年大統領選が下馬評通りに「バイデンVSトランプ」のマッチアップとなれば、好影響を受ける銘柄はバイデン大統領再選のケースで環境関連(EV<電気自動車>、太陽光発電など)や半導体関連が想定される。一方、トランプ前大統領が返り咲けば、化石燃料絡みの銘柄に連想が向かいそうだ。

内閣・自民支持率が急低下

 1980年代のリクルート事件をもほうふつとさせる自民の「パーティー券問題」。安倍派、二階派を中心に政治資金をめぐる裏金疑惑が明るみに出たことで、岸田内閣の求心力低下に拍車が掛かった。

 昨年には参院選を乗り切り、政権の安定運営が見込まれたのもつかの間。支持率は低迷の一途をたどっている。物価高への不満が慢性化する中で、満を持して打ち出した所得減税にも世論は懐疑的だ。そこに持ち上がったパーティー券問題は、決定打になりかねない。

 国会議員の次の任期は参院の半数が25年7月まで。衆院も満了は26年10月だが、解散総選挙のオプションがある。各社の世論調査でみられる支持率の低下は内閣にとどまらず、自民そのものにも及んでいる。解散に追い込まれた場合、大きな政変につながる可能性もゼロではない。

 地方選への影響も注目される。来年は7月の東京都知事選をはじめ、熊本や鹿児島、富山、岡山で県知事選が予定されている。自民系候補の苦戦が相次げば、政権中枢への風当たりは一段と強まるだろう。また、9月には岸田首相が自民総裁の任期を迎える。

ポスト岸田探る、「令和の薩長同盟」も

 こうした中で注目されるのが、立憲民主党や日本維新の会、さらには国民民主党といった野党の情勢だ。これまで内閣支持率が低下する時にもあまり変動がなかった立民の支持率が、足元で目に見えて上昇している。依然として低水準ではあるが、自民の下落幅も大きい。

 一方で、関西を地盤とする維新も全国化を加速している。立民と維新は政策方針の違いから犬猿の仲とされてきたが、自民の基盤が揺らいでいる今、サプライズシナリオも排除できない。かつて敵対していた薩摩と長州が歩み寄ったように、両党の共闘が実現すればまさに「令和の薩長同盟」となる。

政治家・政党の主な関連株・ご当地銘柄

石破元幹事長 寿スピリッツ(2222)、サイネックス(2376)、バルニバービ(3418)、チェンジHD(3962)、ヒトコムHD(4433)、ギフティ(4449)、スカラ(4845)、トミタ電機(6898)、鳥取銀行(8383)、山陰合銀(8381)、SBI(8473
小泉元環境相 DeNA(2432)、JPHD(2749)、ライクキッズ(6065)、さいか屋(8254
河野デジタル相 ウエストHD(1407)、ETSHD(1789)、チェンジHD(3962)、FIG(4392)、JVCKW(6632)、大和自交(9082)、アイネス (9742
上川外相 カラダノート(4014)、ストリームM(4772)、HANATJ(6561)、SERIOH(6567)、インソース(6200)、西松屋チェ(7545)、ピジョン(7956)、エムティア(9438
高市経済安保相 JTEC(3446)、Fスターズ(3687)、神島化工(4026)、ヒラノテク(6245)、タカトリ(6338)、HPCシス(6597)、菱重工(7011)、デイトナ(7228)、助川電気(7711)、南都銀(8367
菅前首相 ITbHD(1447)、フライトソリ(3753)、チェンジHD(3962)、スパンクリト(5277)、アイモバイル(6535)、秋田銀(8343)、フィデアHD(8713)、日本通信(9424
立民 ウエストHD(1407)、ディップ(2379)、JCRファマ(4552)、エンジャパン(4849)、ソラスト(6197)、インバテック(7031)、DmMix(7354)、ニプロ(8086)、イーレックス(9517)、レノバ(9519
維新 アンジェス(4563)、近鉄百(8244)、京阪神ビ(8818)、近鉄GHD(9041)、阪急阪神(9042)、杉村倉庫(9307)、桜島埠頭(9353)、ウィザス(9696

 自民の動きからも目が離せない。安倍派、二階派の解体は地殻変動を意味し、党内の勢力図が様変わりすることも想定される。国民人気の高い石破元幹事長や小泉元環境相、河野デジタル相、初の女性首相候補に目される上川外相、高市経済安保相、さらには菅前首相らにチャンスがめぐってくるかもしれない。

(鈴木 草太)

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