掲載期間:2023年12月25日~2024年3月25日
インドの株式市場は過去10年間、円換算ベースで米国、日本、中国と比較して米国に並ぶパフォーマンスになりました。インドは過去において、すごく良いパフォーマンスを日本の投資家に提供してきました。問題は、今後、どうなるかということです。
<過去10年のインド、米国、日本、中国 の株価の推移>
2013年9月末=100とした指数化グラフ(円換算ベース)
「鉄は国家なり」という言葉があります。それになぞらえてあえて言いますと、「人口は経済なり」です。投資で選ぶ時、その国の人口が増えるのか、そして、その人口構成が重要になります。人口と株価の関係は、経済が伸びる、つまり、株価が伸びるためのGDPは、1人当たりのGDPと人口の掛け算です。そして、世界最大の人口を持つ国であるインドは、釣り鐘型の人口ピラミッドをしています。インドの人口構成は、明らかに将来の経済発展を予測させます。
さらに大切なことは、人口が単に多いだけではなく、生産年齢人口(15~64歳)が全人口の半分以上を占める「人口ボーナス期間」に入っていることです。この期間に経済は爆発的に伸びていきます。インドは2050年以降まで人口ボーナス期間が続く見通しです。
日本も人口ボーナス期に生産年齢人口比率とTOPIX(東証株価指数)がどのような関係だったかを振り返ると、生産年齢人口比率がピークに向かって上昇している時、日本の株価は66.7倍になりました。人口の構成がいかに重要かということがわかっていただけると思います。
インドの株価はボラティリティ(価格変動率)が高く、株価が大きく動くのですが、中国とリスクとほぼ同じでリターンが大きくなっています。投資で考えたいのは、リスクの大きさに対してリターンの水準がどうかという点です。過度にリスクが大きいことは良くありません。インドは年率リターンが11%あって、リスクが27%です。
インドの国民所得は、2010年以降に人口ボーナス期に入ってきたのですが、1人当たりの国民総所得は、1人当たりの最終消費支出と連動しています。インドは14億人を超える世界最大の人口を持っています。長期的に消費支出は右肩上がりになっています。実質GDP成長率について2020年から2026年までの予測をみていくと、IMF(世界通貨基金)の予測では、中国、日本、アメリカと比較して常に一番高い成長を示しているのはインドです。
<実質GDP成長率(%)>
(2020年~2025年、年次)
そして、インドでは中間層が増えています。インドの中間層は3億8,000万人もいます。この方々がこれから、車が欲しい、家を買いたいと考えます。そして、インドでは実際に消費行動の変化が起こっています。お金を稼ぐ若い人たちは、最初は自転車から、オートバイになって、やはり、自動車が欲しいと思うようになっています。インドの自動車の保有台数は1,000人あたり現在53台です。アメリカは880台という車社会なのですが、日本は622台です。(2021年時点)。インドは人口が多く、中間層も増えているのに、まだ車を持っている人が少ないのです。これから車の購入が始まります。インドの乗用車販売台数は、所得が向上するにしたがってどんどん伸びています。
インドはIT産業が伸びています。たとえば、アップルは「iPhone15」をインドで生産しています。インドはイギリスに統治されていた関係で英語を準公用語にしています。これもインドでIT産業が発展した理由の1つです。
SBIアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長兼COO
梅本 賢一氏
また、デビットカードのようなリアルタイム決済は、インドが普及率で世界トップクラスです。今までは社会的なインフラがなかったため、農業地帯に銀行やATMがないような中、携帯電話が急速に普及したため、リアルタイム決済を使うようになっています。
インドルピーは、米ドルとの関係で1ドル=83.04ルピーとルピー安が進んでいます。日本円との関係では、1ルピー=1.7992円でルピー高です。ドル円の関係で円安が進んだことが影響しています。このまま、対ドルでルピー安が続くとは考えにくいと思います。インドのインフレは収まりつつあるためです。このため、対円でもルピー高が進むと見通しています。
インドの株式市場は割高なのでしょうか。「インドS&P BSE100指数」の予想PERとPBRの推移を見てみると、PERは2006年12月から2023年9月までの平均が18.10倍で今現在は20倍程度の水準です。PBRは平均が2.94倍で今は平均くらいの水準です。インドと新興国と中国の予想PERの推移をみると、インドは現在19.68倍に対し、中国は10.43倍です。新興国の平均は11.13倍ですから、インドは高いとみえます。
しかし、インドのPERはずっと高いのです。これはインドと中国、新興国全体のGDPの伸びの反映です。インドは割高なのではなく、インドの成長を織り込んだ株価がついているということだと思います。たとえば、米国のNVIDIAという半導体企業はPERが42倍です。現在の「S&P500」のPERは20倍です。企業でも成長力があると判断されている企業のPERは高いのです。
そして、「S&P BSE100指数」の予想EPSは今後も伸びていく予想にあり、株価はEPSの伸びと同じように上昇を続けていくと考えられます。
<S&P BSE100指数とEPS(一株当たり利益)の推移>
(2001年12月~2023年9月、年次)
では、長い目で見たインドの株式市場は、どうなるでしょうか?過去20年間の株式市場のリターンを米ドルベースでランキングすると、一番値上がりしたのが1,420%のインドでした。過去20年間のGDP成長率は6.68%でした。この成長率では中国が8.42%で上回っているのですが、株価は378%とインドに遠く及びません。
そして、大事なのは、今後5年間のGDP成長率予想です。インドは6.08%と過去20年間と比較するとスローダウンしますが、まだ高い水準を維持します。そして、2030年には、インドは日本を抜いてGDP世界第3位の国になると見通されています。2050年にはインドはアメリカをも抜いて第2位の経済大国になる予想です。人口ピラミッドの状況をみると、いずれはインドが中国を抜いて世界最大の経済大国になることも十分にあり得ると思います。
「SBI・UTIインドファンド」は、実質的にUTIアセット・マネジメントが運用しています。UTIとはUnit Trust of Indiaの略です。1964年に、インドで初めて設立された投資信託の運用会社です。1987年までインド唯一の投信会社でした。2003年に民営化されて、インドで最も運用経験の長い運用会社になりました。
UTIアセット・マネジメントは、企業を調査するにあたって「安定性・成長性」を重視します。そして、「クオリティ(質)」を見ます。クオリティで重要なのは、経営者の質、事業の質、成長の質、利益の質です。そして、5年~10年先も安定して成長することができる銘柄を選定します。有望銘柄を長期保有することで中長期的な超過収益の獲得をめざします。
2013年8月から過去10年間の累積リターンを米ドル建てでみると、インデックスの「MSCIインド」の155.4%に対し、「SBI・UTIインドファンド」は243.1%になっています。
UTIインドファンドの累積長期リターン(米ドルベース)
ただ、直近のパフォーマンスは良くないと感じられるかもしれません。インドの株式市場もアメリカや日本の市場と同じように、優良株が良い市場と割安株が良い市場の局面があります。グロース系なのかバリュー系なのかということですが、最近はバリュー株優位の相場になっています。UTIは優良成長銘柄を組み入れていくファンドですから、あまり成績が良くなかったのです。しかし、この環境は変わりつつあると思っています。
ファンドは株価が10倍になるような銘柄を選んで長期保有していますが、設定時から17年間継続保有している銘柄もあります。ひとつは、インド最大の銀行であるHDFC銀行は、106.56ルピーで買ったものが、現在では1,563.7ルピーになっています。株価は約15倍です。また、インフォシスは269.69ルピーで投資し、現在は1,496.15ルピーです。このように長期で成長する企業は保有を続けています。
インド株式でテンバガーとなった銘柄は、たとえば、バジャジ・ファイナンスは、約20年間で3.16ルピーが7,810ルピーと26万6,478%の値上がりをしました。2,664倍です。アメリカのテンバガーとして有名なバークシャーハサウェイは約40年間で3,075ドルが55万9,500ドルと1万7,325%の値上がりでした。173倍です。インドの株式がいかに大きいかがわかります。この銘柄も「SBI・UTIインドファンド」に入っています。
また、現在の組入銘柄で過去20年間の投資リターンで大きかったものは、HAVELLSが6万3,780%、Kotakが7万2,897%、EICHERが25万6,293%、TITANが5万6,106%、SCHAEFFLERが4万6,540%、ShreeCementが8万5,116%などとなっています。このような会社を、いかにアクティブファンドがみつけようとしているかということです。
このポートフォリオがインデックスと同じ組み入れ銘柄であれば、高いコストをかけてこのファンドを購入する価値はありません。このファンドの信託報酬率は年1.854%(税込み)です。しかし、現在の組み入れ銘柄56銘柄のうち「SENSEX30」に採用されているのは7社だけ、「Nifty50」に採用されているのは8社だけです。
インド株ファンドは長期的には魅力がありますが、短期的には大きく下落するかもしれません。その時のために、やはり、長期・積み立てで投資することを考えた方が良いと思います。個人投資家は、機関投資家のように3カ月ごとに運用成績を評価されるようなことがありません。
「SBI・UTIインドファンド」を投資期間5年のリターンを日次でローリングした成果をみていくと、ほとんどがプラスリターンになります。5年以上の投資をすることによって、負ける可能性がほとんどなくなります。たとえば、毎月5万円ずつ積立投資をしていただいたとして設定から2023年8月まで200カ月で総投資額が1,000万円になりますが、3,476万円の投資評価額になります。
「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」は、「S&P SBE SENSEXインデックス(SENSEX30)(配当込み、円換算ベース)」に連動する運用成果をめざすインデックスファンドです。ブラックロックの「iシェアーズ・コア S&P BSE SENSEXインディアETF」に投資します。信託報酬は年0.4638%(税込み)です。日本で提供されているインド株インデックスファンドの中で最も低い信託報酬率です。インデックスのスタイル分析の結果は、グロースでもバリューでもなく、ブレンドというバランスの良いインデックスになっています。
インドのもう一つの代表的な株価指数「Nifty50」との比較では、まず、指数構成銘柄の取引所が「SENSEX30」はボンベイ証取で「Nifty50」はインド国立証取です。最初にできた取引所は1875年でアジアで最も早く設立されたボンベイです。インド国立証取は1992年の開設ですから100年以上後に作られています。上場銘柄数はボンベイが5,307銘柄とインド国立証取の2,137よりも圧倒的に多いのですが、時価総額は400兆円超で両取引所でほとんど同じです。指数採用銘柄は、「SENSEX30」が31銘柄で、これは「Nifty50」の51銘柄にも採用されていて、「Nifty50」はそれ以外に20銘柄程度が追加されています。パフォーマンスは、両指数でほとんど変わりません。
SENSEX指数は年2回の定期的なリバランスがあります。基本的には時価総額の大きな銘柄を選んでいますが、それ以外に合併、買収、上場廃止、破産等の発生に応じて適宜実施しています。セクター別構成比では金融が40%を占めます。インドは経済が発展していますので、お金の需要も大きいのです。
ファンドが投資する「iシェアーズ・コアS&P BSE SENSEXインディアETF」と「S&P BSE SENSEXインデックス」のパフォーマンスを比較すると、ETFは指数よりマイナスかい離しています。これはインド株式に投資すると税金を取られるためです。短期では10%、長期は15%です。この税金を考慮すると指数との乖離はあまりありません。
そして、このインデックスファンドに積立投資した場合、過去20年間、毎月1万円を積立投資したとすると、投資元本が240万円に対し、投資評価額は955万円になりました。
<インド S&P BSE SENSEX インデックス>
過去20年毎月1万円積み立てたシミュレーション
(2003年9月~2023年8月)
SENSEX指数と主要なインデックスとの相関を調べると、「全世界株式インデックス」とは強い相関がありますが、「S&P500」や「NASDAQ100」とは相関関係が低くなるため、併せ持つということも選択肢になります。「S&P500」を持っている人は、インド株インデックスを10%~20%持っていただくとリスクリターンが良い関係になります。「NASDAQ100」を持っている方は、30%~40%持っていただくと良いバランスになります。「全世界株式(オール・カントリー)」を持っている方は30%~40%を持っていただくと、良い関係になります。
SBIアセットでは「グローバルサウス」に投資するファンドも作りました。これから自分で資産形成をしていくことを考えた場合、来年からの新NISAの使い方で、私たちの将来は決まってくると思います。何のために積み立てをするのでしょうか。株価の上がり下がりを味方につけるためです。悪い時に積み立てを決して辞めないでください。長期に積立投資を続けて大きな資産を作ることを目指していただきたいと思います。