掲載期間:2023年12月25日~2024年3月25日
コムジェストはフランスの会社です。1985年の設立で、歴史は38年ほどですが、創業者ジャン・フランソワ・カントンというフランス人は、日本株のファンドマネージャーだったこともあり、コムジェストの創業以前から、50年近く、日本の企業を調査し続けています。
コムジェスト・アセットマネジメント株式会社
代表取締役社長
高橋 庸介氏
日本の投資家の方々には海外の投資家の目を意識していただきたいと思います。当然、日本の企業のことは、日本人が一番わかっているはずだろうと思われると思います。確かに、日本語による情報量は多いのですが、日本の企業に投資している割合は、国内の投資家より外国人投資家の方が多いのです。ですから、日本の企業評価という点では、必然的に外国人投資家の視線を考えるべきです。
私どもで日本株を運用しているチームは5人中日本人は2人、複数の国の視点が入っています。各国の視点で日本の企業を見るということは大事なポイントだと思います。鳥瞰という言葉がありますが、地面から見るだけではなく、空高くから見下ろし、広く見る視点によって違った見え方がします。
コムジェストは独立した運用会社です。金融庁も運用会社の独立性にかなり厳しい問題意識を持っておられますが、コムジェストは創業来、独立を維持しています。販売会社である銀行や証券会社の意向を受けるようなことはありません。また、株式のアクティブ運用に特化した会社です。コムジェストは株式の運用にのみ特化しています。債券やオルタナティブといわれるようなヘッジファンドの運用は行っていません。
投資を考える上で、長期の視点を改めて考えていただきたいと思っています。ちまたに投資情報はあふれています。ネットにもたくさんの情報がありますが、ほぼ投資情報とは言えない情報です。多くは「投機情報」です。ギャンブルと同じように、短期で儲けようという情報です。投資は必然的に長期になるというのが、私どもの考えです。
株価は短期では予測不能な動きをします。これは個別銘柄でも指数でも同じです。ただし、重要なことは、株価は企業利益の周りを行ったり来たりしているのです。これが株式市場の本質です。長期的に見ると株価は、企業の利益=企業の価値を映すものです。市場の動向に引きずられるため、短期的には株価は企業価値からかい離することもあるのですが、長期的にはしっかりと利益に連動します。
コムジェストの信念と投資アプローチ
コムジェストは株価を見ません。企業の利益を見ます。毎年、企業の利益がどのように成長していくのかに注目しています。投資で成功したいとお考えの方は、このような視点を持っていただけると、より成功の度合いを高めることができると考えています。短期で株価を追うギャンブルは、往々にして失敗します。株価はどんなプロでも予測できません。
私は平成元年に証券アナリストの仕事を開始しました。証券市場を35年見てきましたが、未だに株価の動きはわかりません。しかし、長期的にはしっかりと捉えることができます。短期的には何が起こるかわかりません。
たとえば、アメリカでマッカーシー下院議長が退任することを事前に予測していた人はいないと思います。ハマスによるイスラエル侵攻を予見していた人はいたでしょうか?当事者であるイスラエルも大誤算をしていたのです。このようなことが起こるのです。ですから、短期で株価を追いかけるような投資はギャンブルに等しいと思います。
企業の利益は予測することができます。企業とコミュニケーションを取っていますが、変化が見られれば企業業績にどのように影響するのかを分析しています。コムジェストではEPS(一株当たり利益)が最低5年間、年率10%以上の成長が予想できると確信できた企業にのみ投資をします。そういう企業は類まれな存在ですが存在しており、「クオリティグロース企業」と定義しています。長期的に利益が伸びない企業には投資しません。赤字の会社にも投資しません。
私どもが1991年から運用しているグローバル株式戦略の運用実績は、年率リターンが12.5%です。グローバル株式指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」は同期間で年率7.2%でした。(2023年6月末時点)
クオリティグロース: 長期的に有効な投資アプローチ
また、日本株戦略では2009年から約14年間の実績ですが、年率12.8%で同期間のTOPIXの9.0%を上回っています。ただ、直近2年間は苦しんでいます。この2年間は、ひたすら割安株(バリュー株)が物色され、私どもが投資している成長株(グロース株)には難しい期間だったからです。この2年間はTOPIXに負けていますが、そのようなことも起こり得ます。相場のスタイルは循環するものなので、10年のうち、2年、ないしは、3年はバリュー相場が起こります。ですので、10年を超えるような長期のパフォーマンスを見ていただきたいと思います。
ヨーロッパ株式戦略は94年からの実績がありますが、これも年率12.5%の実績です。新興国株式戦略は95年からの実績があり、こちらは年率9.3%の実績になっています。これらの運用実績は、どの市場でも年率10%前後と似たような成績になっています。これは偶然ではなく、私どもが意図した、目標とした数値になっています。これが長期投資の成果です。
私どもは年率10%以上で利益が伸びる企業を選んで投資しています。株価も長期では、その企業の利益成長を映します。株価は短期では大きく動くのですが、長期では素直なのです。ですから、個別銘柄に投資している皆さまも長期で企業利益の成長を見ながら投資をすれば成功できる確率は高まると思います。
視聴されている皆さまも会社で一生懸命、働かれていると思いますが、その汗の結晶が企業の利益成長なのです。経営者の方々も必死で長期的に会社を育てていこうとしています。FX(為替証拠金取引)では何も育ちません。しかし、株式のベースにある企業は、成長することができます。成長してゆく企業に投資をしています。その成長も企業によって度合いが違います。1%や3%でゆっくり成長していく企業もありますが、私どもは10%以上のペースで利益成長する企業に投資します。なぜなら、長期的には株価は企業の利益成長に連動すると信じているからです。
投資する企業を見極めるポイントは、利益が2ケタで成長していくことは必須ですが、見落としてはならないのは、効率的な資本の活用という点で、ROE(自己資本利益率)15%以上を目安に企業を選んでいます。
会社の価値を示す指標の1つが自己資本です。自己資本が1兆円ある企業が100万円の利益しか稼げなかったらダメな企業と言え、経営者をすぐに変えなければなりません。この100万円で毎年10%成長していてもダメです。例えば、自己資本が1兆円ある企業であれば、利益を1,500億円以上稼げる会社が前提になります。
たとえば、投資資金が100万円であれば、1年間で10万円増えることが必須です。ただ、利益成長率やROE、また、財務諸表等は調べれば誰にでもわかります。われわれが調べるのは、まだ明らかになっていない、来年の数値、5年後までの利益成長がどうなるか、資本効率がどうなるかということです。
厳格な企業選定基準
そこで見ていくのがビジネスモデルです。ビジネスモデルが理解しやすく、継続的な収入があることが重要です。たとえば、シスメックスという神戸に本社を置く会社は血液検査等の生体検査機器を作っているメーカーですが、同社の機器を導入すると、検査のための試薬が必要になります。プリンターを使うと、トナーや紙を使うようなものです。検査用機械は7年ほどの耐用年数がありますが、その機械を購入してもらうと7年間は試薬もセットで使われることになり、これが安定した継続収入になるのです。
また、価格決定力も重要です。日本でも今、製品値上げが起こっていますが、価格決定力を持たない会社には投資できません。5年先の利益予想が立てられないからです。たとえば、信越化学という会社は、シリコンウエハーという半導体用素材で世界シェア3分の1を獲得しています。また、建物の建材や様々な用途で利用される塩ビ(塩化ビニル樹脂)でも世界シェア3分の1です。2年前にロシアがウクライナに攻め込んで原油価格が上がった時、同社は20%の値上げを即時実行しました。
このような、その会社の持つ「強み」を徹底的に調べます。風任せの帆船ではダメです。強力なモーターを持っていて、風がどこから吹いても波が荒くても自力でゴールに向かって突き進めるような企業に投資をします。
参入障壁も見ます。毎年のように競争相手が増えるような企業には投資をしません。たとえば、フランスの高級ブランド品の複合企業LVMHモエヘネシー・ルイ・ヴィトンという会社は絶対的なブランド価値を持っています。圧倒的なブランドを持っている企業は新作が出るたびに製品を購入する熱狂的な富裕層の固定客を世界中に抱えており、売上げ、利益の見通しが立てやすく、3年先、5年先の利益予想を高い確度で算出することが可能です。
最近、巷ではアクティブ運用よりもインデックスの方が良いという論調が優勢になっています。たしかに、インデックスファンドはコストが低く、分かりやすいので、投資を始める方には良い選択肢であると思います。しかし、そこから一歩踏み出そうという方々にはぜひ、知っていただきたいのですが、インデックスは完全なものではありません。TOPIXもS&P500も5%~10%程度赤字企業を組み入れています。また、1%や2%しか成長できないような低成長企業もインデックスには多く含まれています。果たしてそこに投資することが効率的な投資なのでしょうか。私たちは高い成長が見込まれる企業に絞って投資をした方が投資効率はよいのではないかと思っています。
株価指数に含まれる赤字企業
また、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスには、軍需産業が33社含まれています。S&P500でも軍需産業が12社含まれています。アクティブな運用会社は、軍需産業には投資しません。運用会社はただ単に儲かればよいということではありません。投資家からお預かりした大事なお金の投資先にも責任を持つ立場であり、事業を通じて社会に貢献できる企業に投資をする責務を負っているという自覚を持つべきだと考えています。
コムジェストは、ESGという言葉ができる以前から、ESGを大切にしています。環境を破壊しないことは当たり前です、社員を踏みにじって利益をあげるような会社にも当然投資をしません。そこをよく調査します。なぜなら、そんな企業には長期的な成長はないからです。同じように、長期的に成長してほしくないような企業である軍需産業、核兵器を作っているような会社には投資をしません。残念ながらミサイルや核兵器は人を幸せにすることはありません。運用会社としてどういう会社に投資して資産を増やすのかということは、とても大事なことだと思います。
シスメックスは、日本のみならず、中国やアメリカでも成長しています。高齢化が進むと血液検査等の需要が伸びます。それを低コストで提供することで同社は社会貢献できるのです。社会に必要とされている会社です。中国ではマインドレーという競合がいます。中国は国内企業の保護を優先させると思われがちですが、中国の病院を現地調査して、マインドレーとシスメックスのどちらを使うのかを調査しています。アメリカでもベックマン・コールターという会社が競合になりますが、ベックマン・コールターがFDAから不適格であると警告を受けているため、シスメックスのシェアがどんどん高まっています。
HOYAは視力矯正レンズで世界第2位の会社ですが、トップ企業の仏エシロール・ルックスオティカという会社にも投資しています。世界の市場でトップ企業との競合で勝てているのか、5年先の業績はどうなのかということを調べています。また、半導体製造用のガラス素材であるフォトマスクブランクスでは世界で半分のシェアを持っているトップ企業でもあります。台湾セミコンダクターは投資先の一社でもありますが、同社が熊本で世界最先端の半導体工場を建設していますが、そこ向けに製品を供給しているのがHOYAです。
ダイキン工業は空調機器世界トップメーカーですが、近年、中国やインドなどでシェアを伸ばしています。インドやアフリカなど暑い世界で勝てるのがダイキンです。売り上げの83%が海外です。国内だけで見ていると情報が少なすぎます。コムジェストでは世界各地の運用チームが協力し合い、ダイキンの調査を行うことで、2ケタ成長企業を見定めています。
イスラエルにはモサドという世界最高水準の諜報組織がありますが、今回のハマスの攻撃については事前に予測することができませんでした。運用の世界でも情報の収集は大事です。質の高い情報をいかに集められるかが重要です。ネットで集めるような情報ではダメです。現地で自分の目と耳で情報収集することが大事です。かつ、それを的確に分析する。これが運用会社の命綱だと思います。
コムジェストは創業から38年間、地道に足で情報を収集し、分析することで、2ケタの利益成長を高い確度で実現できると予想する企業、クオリティグロース企業に投資をしてきました。これからも2ケタの利益成長ができる企業を探し、割安な価格で投資をするという揺るぎない投資哲学を貫くことで、年率2ケタのリターンを皆様にお届けし続けたいと考えています。