2024年のグロース市場はどうなる?
新興市場、特にグロース市場にとって2023年は苦しい1年だった。日米金利が上昇トレンドに入ったことで、グロース銘柄への投資妙味が後退。年末に掛けて米ナスダック総合指数は上昇基調に入って年初来高値を更新したものの、東証グロ-ス市場250指数は停滞を続けた。値動きの悪化と売買代金の低迷で参戦妙味を失い、投資家から「終わったマーケット」と見られ始めている。
700ポイント近辺でスタートした東証マザーズ指数は、6月に864ポイントまで上昇したものの、その後、調整基調に入り。東証グロース市場250指数への名称変更を経たが状況は変わらず、700ポイント割れ水準で推移している。売買代金は低水準で定着しており、増加する兆候すらないまま年末を迎えている。

写真:123RF
有力銘柄の卒業相次ぎ空洞化進む
世界的に金利が上昇局面に入ったことで、グロース系銘柄への投資魅力が相対的に後退したことが大きい。23年はそーせいグループ(4565)、ANYCOLOR(=エニカラー、5032)、ビジョナル(4194)などがプライム市場へ上場区分変更を行って卒業。22年もメルカリ(4385)の卒業があったものの、23年は時価総額トップ銘柄、指数寄与度トップ銘柄が相次いで卒業。IPOでカバー(5253)、GENDA(9166)、インテグラル(5842)などが即戦力となっているが、影響力はそれほど高くなく、空洞化が一気に進んでしまった。カバーはエニカラーと同じVtuber事務所で、GENDAはゲームセンター、インテグラルは投資ファンドと、ビジネスモデルに特段の新鮮味が乏しかった。
もともと新興市場は個人投資家が主役のマーケット。足元の業績実績よりも、中・長期的な「成長物語」が時価総額を形成する主成分となる。シンボルストック的な分かりやすいベンチャー企業の不在で、グロース市場自体への投資家の関心が後退している。ボラティリティー(変動率)を欠く今の相場で、値動きを追うアクティブな資金も減少しており、無理に参戦する必要はないみられているようだ。売買代金は市場の体温。グロース市場は年間を通してダウナーな状態だった。
主なグロース卒業銘柄
※住信SBI銀はスタンダード市場、KOKUSAはプライム市場へのIPO
金利上昇、スターIPO不足は続く
短期的な上下はあろうが、24年も金利動向など外部環境に大きな変化は期待しにくく、またIPOを取り巻く環境が悪化していることもあってスター銘柄が登場する観測もない。このまま過疎化が進んでしまうことが懸念されるが、個別ベースでみると大化けしている銘柄は多く、グロース株特有の爆発力ある値動き自体がなくなっているわけではない。かつてのように市場全体を買うような、お祭り相場の到来は期待にしくいものの、個別ベースでは十分に投資妙味はある。
23年IPO銘柄では、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連のABEJA(5574)、介護施設向け見守りシステムは主力で睡眠データ解析に強みを持つエコナビスタ(5585)、AI(人工知能)ソリューションのAVILEN(5591)あたりの評価が高い。成長シナリオの鮮明化が進めば、より大きな相場を作りそうだ。22年のIPO銘柄だが、パーキンソン病専門の老人ホームを手掛けるサンウェルズ(9229)、21年上場でITインフラストラクチャーコンサルのボードルア(4413)あたりはアナリストの評価も高く、24年相場での活躍が期待できそうだ。
夢を買える宇宙ベンチャー
23年に新たなテーマとして注目されたのは、宇宙。グロース市場には4月にispace(9348)、12月にQPS研究所(5595)が上場した。宇宙関連は根強い人気のある物色テーマではあったが、顧客の荷物を月着陸船で輸送するサービスを提供するispace、小型SAR衛星事業者のQPS研究所は、これまで株式市場にいなかった宇宙ビジネスの専業企業。足元の業績は赤字だが、グロースらしさがあり、かつてバイオ株で行われたような、「赤字だからどこまで買っても割高じゃない」といった買い方もできる。
これまでのグロース市場をけん引してきたネット系ビジネスやAIなども大化け期待のある銘柄は多い。カバーやヘッドウォータース(4011)のような銘柄も出ており、成長株をきちんと評価する素地はある。SaaS株人気は今年一気に剥落したが、ビジネスモデル自体への評価は高いままで、見直しの動きも出そうだ。これまでより、個別銘柄重視の相場となっていきそうで、より銘柄選別力が問われる相場となっていくだろう。
(小泉 健太)
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