2024年は海外旅行が本格回復へ
2023年はコロナ禍の収束により、海外から日本を訪れるインバウンド(訪日外国人観光客)が急回復した一方で、日本から海外に出かける出国者数は低い水準にとどまっている。しかし、為替の円高進行もあり、24年には海外旅行が盛り上がりを見せそうだ。海外旅行の需要増で恩恵を受ける銘柄をマークしておきたい。
日、欧米との金利差縮小へ
日本からの出国者数は、23年10月がコロナ禍前の19年同月比で43.6%減(93.8万人)にとどまっている。9月に訪日客数がコロナ前水準を回復したのに対して、伸び悩みが顕著となっているのは、23年に一時1ドル=150円台まで円安が進んだことが一因。円換算での旅行コストの割高感から、海外旅行に二の足を踏む人が多かったとみられる。
しかし、状況は変わりつつある。市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)が24年に少なくとも3回の利下げをすると想定しており、2024年は日本と欧米の金利差縮小による円高進行を予想する向きが多い。米長期金利が低下傾向にあることを受け、為替が円高転換し、23年12月には1ドル=141円まで円が買い進まれた。ECB(欧州中央銀行)の利下げも視野に入り、対ユーロでも円高が進んでいる。
そうした中で、回復が期待されるのが海外旅行だ。円安による出費の拡大を嫌気して停滞していた需要が一気に膨らむ可能性がある。
過去のデータを振り返ると、円高時には海外旅行者が増加している傾向がある。1985年9月のプラザ合意で円高が急速に進んだ際には、翌86年の出国者数が前年比11.5%増となり、入国者数(同11.4%減)と対照的な推移をみせた。1ドル=75円台まで円が買われた2011年も、入国者が大幅に減ったのに対して出国者は増加した。16年の円高施行時も、出国者が4年ぶりの前年比プラスに転じている。
国内の外貨両替所では既に、円を外貨に両替する人が増えているという。また、旅行会社のJTBの予想では、24年の海外旅行者数は前年比53%増(1,450万人)程度に拡大する見通し。為替動向次第では、さらに海外旅行機運が高まりそうだ。
図表1:ドル・円と出国者数

出所:ウエルスアドバイザー作成
エアトリやEAJなど注目
海外旅行の増加局面では、航空券予約大手のエイチ・アイ・エス(HIS)<9603.T>をはじめ、エアトリ<6191.T>やオープンドア<3926.T>、アドベンチャー<6030.T>などが有力な存在となる。また、ツアーを展開する旅工房<6548.T>、シニア向けの海外旅行に強いユーラシア旅行社<9376.T>なども恩恵を受ける。いずれも23年11月の円高進行時に買い進まれたが、その後に上昇が一服しており、改めて物色対象として意識されそうだ。
航空会社では国際線の回復で、日本航空(JAL)<9201.T>やANAホールディングス<9202.T>も浮上する。
海外旅行者向けの医療サービスを手掛ける日本エマージェンシーアシスタンス(EAJ)<6063.T>にも注目したい。同社は厚生労働省から受託していた新型コロナ関連業務が5月で終了し、今12月期の連結営業利益は大幅減益(前期比76.3%減の1.7億円)を計画している。しかし、円高になれば商機が増えそうだ。株価は今期見通し発表を受けて11月に急落したが、その後に大幅反発している。
このほか、海外ウエディングも盛り上がりそうだ。ハワイに婚礼施設を構えるエスクリ<2196.T>や、クラウディアホールディングス<3607.T>をマークしておきたい。海外でホテルを展開する西武ホールディングス<9024.T>や、旅行者向けWiFiレンタルのビジョン<9416.T>、音声翻訳機「ポケトーク」のソースネクスト<4344.T>、旅行バッグを販売するサックスバー ホールディングス<9990.T>なども見逃せない。
(片岡 利文)
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