IPO、23年は大きな変化あり
いちよし証券・宇田川克己銘柄情報課長に聞く
2023年のIPO(新規上場)は22年の91社から5社増えて96社となった。21年は121社だったが、これは20年のコロナ禍による減少からの回復という特殊要因があったからで、日本経済の実力がこれぐらいということかもしれない。24年以降も90社台の推移が続く公算は大きい。
23年の傾向としては、例年と異なり、12月に上場する銘柄が減ったことが挙げられる。過去の12月上場銘柄数は20年26社、21年32社、22年25社だったが、23年は15社だった。また、かつて12月は1日3社、4社の上場も珍しくなかったが、23年は多くて2社の上場にとどまった。1社ごとへの注目度が増すため、市場にとってはよい傾向だろう。

いちよし証券
銘柄情報課長
宇田川 克己氏
その半面、23年は初値が公開価格を割り込む銘柄が目立った。22年までの過去5年間の平均勝率(初値が公開価格を上回った比率)は82.7%だが、23年は70%程度と大きく低下した。12月だけで見ると、50%を割り込んだ。最近のIPOは上場前説明会を開催しないケースが増えており、その影響があるかもしれない。もっとも、安く始まった場合、上場後にその銘柄の内容が周知されることで、セカンダリー(流通市場)で注目されることになりそうだ。
また、IPOにおける公開価格の設定プロセスが見直された。より需要に応じた公開価格を決定できるようにするため、ブックビルディングをやり直すことなく、「仮条件の範囲外での公開価格の設定」「公開価格の設定と同時に売出株式数の変更」ができることになった。これが初値形成において初値が公開価格を下回る要因の一つになった可能性がある。
一方、かつて新興市場の目玉だった不動産関連、バイオ関連の上場が減少し、かわって航空・宇宙関連が増えてきた。23年に航空・宇宙関連で上場した銘柄は、ispace(9348)、ジェノバ(5570)、Ridge-i(5572)、QPS研究所(5595)など。バイオ関連以上に黒字化が難しい気もするが、今後、グロース市場の注目セクターになっていきそうだ。
そのほか、これまでと同様、IT関連の上場は多かった。その中でもAI関連が目立つようになっており、いまや主流になっている。
(梅村 哲哉)
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