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年末年始特集

24年の世界半導体需要は増加の見通し

 12月19日のマーケットで、半導体製造装置の世界的大手東京エレクトロン<8035.T>が上場来高値を更新(株式分割を考慮)するなど半導体関連株が値を上げた。日銀の金融政策決定会合で植田和男総裁が当面の金融政策について現状維持を決定し、円安に振れたこともあるが、半導体は生成AI関連の需要増や、世界的なEV(電気自動車)シフト、脱炭素化の進展を背景としたパワー半導体向けの需要が継続する中、24年の世界需要は増加の見通しにあり注目が怠れない。

 12月19日は他に、先端半導体向けマスク欠陥検査装置を主柱とするレーザーテック<6920.T>や、半導体ウエハ洗浄装置世界最大手のSCREENホールディングス<7735.T>、半導体検査装置の世界的大手アドバンテスト<6857.T>、半導体、電子部品向け切断・研削・研磨装置の世界最大手ディスコ<6146.T>、半導体封止装置大手のTOWA<6315.T>などが急伸し、上場来高値に接近した。

 この中で、上昇が目立った1社が前日比480円(7.07%)高の7,270円で高値引けとなったTOWA。同社は9月26日に生成AI向け半導体の生産に最適な半導体モールディング装置「YPM1250-EPQ」の開発を完了し、製品化したと発表してから株価の右肩上がりが続いている。

 これまで半導体チップは、素子や回路の配線幅を微細化することでチップの価値を向上させてきたが、近年、配線幅が微細化を極める中、製造時の歩留まり確保が困難になってきている。そうした状況の救世主と考えられるのが半導体モールディング装置「YPM1250-EPQ」だ。

 使用されているのが「チップレット」という新技術。これまで1つのチップに集積していた大規模な回路をあえて複数のチップに個片化し、個片群を基板上に乗せて1つのパッケージに収めることで歩留まりが圧倒的に高まる。TOWAは新たなモールディング技術(レジンフローコントロール方式)を開発し、チップレット製品に対応した業界初の大量生産用半導体モールディング装置を製品化した。

 「YPM1250-EPQ」については、大手半導体メーカーから引き合いがあり、24年3月期中の受注を予定。また、生成AI向け半導体などのチップレット製品で、必ず使用される超広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)向けのコンプレッション装置「CPM1080」については、既に顧客の工場で量産設備として利用されており、24年3月期の後半から年間10~20台の売上を見込んでいる。

 一方、半導体ウエハ搬送装置の世界最大手ローツェ<6323.T>はこの日、前日比920円(6.49%)高の1万5,100円まで値を上げ上場来高値を更新した。

 同社の24年2月期第2四半期累計(23年3~8月)業績は、売上高410億円(前年同期比10.4%減)、営業利益99.5億円(同9.0%減)。第1四半期(3~5月)は半導体メーカーの設備投資計画の先送り等の影響を受け、売上高は167億円(同23.0%減)と低調に推移したが、第2四半期(6~8月)は中国向けおよび米国向け需要の回復で売上高は243億円(同1.0%増)と増加に転じている。

 会社側は今後の見通しとして、半導体設備投資は調整局面から回復に向かうとし、中国および米国装置メーカー向けなどの売上は下期(23年9月~24年2月)増加を見込む。生成AIやデータセンター向けなどへの投資需要拡大により、24年以降における半導体設備投資の回復、拡大を見込んでいる。

 半導体関連では20日に半導体シリコンウエハー世界最大手の信越化学工業<4063.T>が上場来高値を更新。そして21日にはレーザーテクが全体安の中で上場来高値を更新して気を吐いた。信越化はシリコンウエハーの純度が99.999999999%(イレブンナイン)という超高純度製品を供給し、レーザーテクはEUV(極端紫外線)光源製品では市場を独占するなど最先端半導体製造には欠かせない存在となっている。最高値更新組はこういう企業が占めており要注目の展開が続こう。

(真鍋 浩幸)

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