morningstar

見えてきた日経平均3万円、新年度の日本株相場を斬る(2)「国策に売りなし」の有力テーマは?

2023/3/28

 不透明感のある相場環境の中でも、「国策に売りなし」という格言はいつも正しい。過去最高の114兆円規模の新年度予算もあいまって、政府の定める重点領域は投資テーマとして改めて注目を集めそうだ。中でも有力なのは、国の根幹にかかわる子育て支援や防衛、カーボンニュートラルへ向けたGX(グリーントランスフォーメーション)など。さらに、リスキリング(学び直し)や先端半導体、量子コンピューターといった分野にも及びそうだ。

イメージ写真提供:123RF

子育て支援、防衛費は大幅上積みへ

 予想を超えるペースで進行する少子化。日本の出生数は昨年80万人を割り込み、15~49歳の女性の年齢別出生率を合算した「合計特殊出生率」は1.3(人口を維持するために必要とされる水準は2.06~07)という危機的状況にある。出生数80万人を下回る時期はかつて30年ごろとみられていただけに、2050年代に予想されていた総人口(21年は1.26億人)1億人割れも前倒しでやってくる可能性が高い。

図表:日本の出生数と死亡者数

※高齢化率は65歳以上のウエート

 一向に少子化の流れが弱まらないのは、子供をもうける上での将来への不安が圧倒的に大きいため。こうした中、岸田首相は「異次元の対策」を表明し、将来的な予算倍増に言及している。自民党の世耕参院幹事長は直近、国債で財源を賄う選択肢も視野に入れていく考えを明らかにした。子育て支援の強化はまさに国策となっている。

 一方、東アジアの地政学リスクの高まりが、日本の防衛費の増加を後押しする。GDP(国内総生産)の1%以内に抑えられてきた従来の枠組みを大きく広げ、5年間で43兆円超とする防衛力整備計画がまとまった。予算は27年度にGDP比2%(11兆円)まで積み上げる方向だ。

 中国はこのほど開いた全国人民代表大会(全人代)で、23年の国防費を前年比7.2%増の1兆5537億元(約30.5兆円)とした。伸び率は3年連続で前の年を上回り、規模は日本の5倍近くに相当する。北朝鮮もミサイル発射を繰り返す中で、日本国内の世論は防衛費の拡大に前向きになってきた。

GXのポテンシャル大、リスキリングや量子コンピューターも

 GXについても、政府は10年で150兆円を投じる方針を昨年12月に閣議決定した。再生可能エネルギーや原発を中心に、株式市場でも最重要テーマの1つとなる。また、ロシアのウクライナ侵攻により、世界的なエネルギー危機に発展したことを踏まえても、国内でのエネルギー生産を底上げする必要性が高まっている。

 政府の「GXに関する基本方針」によれば、投資額はEV(電気自動車)など電動車分野が今後10年で34兆円、再エネは20兆円(次世代系統などを含めると31超円)と大きい。35年に全新車(乗用車)を電動車にすることを目指すほか、再エネで電源構成の30%台後半をまかなう計画。このほか、住宅など建築物のゼロ・エネルギー化には14兆円、水素・アンモニアに7兆円、バイオものづくり(バイオマスプラスチック200万トン導入の目標)に3兆円がそれぞれ投じられる見通しだ。

 少子高齢化で企業が新卒採用に苦しむ中、現役世代が新たに仕事のスキルや知識を得るリスキリングの重要性も指摘される。岸田首相は昨秋、5年で1兆円をこの分野の支援に充てる方針を示している。先端半導体は、台湾のTSMCや国産半導体のラピダスが日本国内での工場建設に動く。量子コンピューターについても、理化学研究所が外部公開を始めるなど、実用化への取り組みが進んでいる。

図表:「GX実現に向けた基本方針」主な官民投資の分野と投資規模

※内閣官房資料から作成

Copyright© Wealth Advisor Co., Ltd. All Rights Reserved.