モーニングスター特集 株式会社エージーピー モーニングスター特集 株式会社エージーピー

掲載期間:2022年8月26日~2022年9月26日

 リオープン(経済活動再開)による業績回復が見込まれるエージーピー<9377>は、カーボンニュートラルの流れにもチャンスを見出す。新たに打ち出した中期経営計画では、最終年度の2026年3月期に連結売上高150億円以上(今期計画は112億円)を目指すとともに、二酸化炭素(CO2)排出量削減にも取り組む。

中期経営計画数値目標
『経営方針&全社数値目標』
~中期経営計画FY25着地目標~

■中期経営計画FY25着地目標 
コロナ前(FY19)の売上/利益水準に回復させ、更なる成長へ

  • 連結売上高
    150億円
    以上
  • 連結営業利益率
    10%以上
  • ROE
    10%以上
  • 空港外売上比率
    20%以上
  • CO2排出量削減
    33.5万トン以上
中期経営計画数値目標

※商品販売:フードシステム販売、GSE等販売、電力販売
※エンジニアリング:整備、セキュリティ、施設に対する、機器設置、施工管理、運用保守

動力供給
事業
National Agendaとしてカーボンニュートラルへの取り組みが重要課題であり、当社GPU設備の利用促進を推し進める。あわせて資本効率の向上を意識し、リターンを追求した事業構造への転換を進める方針である。
エンジニアリング事業 空港内既存領域においては品質とコストのバランスの最適化を図り、ビジネスモデルの転換を推し進める方針である。横展開として、EC市場の拡大に伴い、空港外の物流保守領域への積極的事業の拡大を図り新たな収益源を目指す方針である。(物流保守サービス)
商品販売
事業
環境×電力×DXにより新たなビジネス創出を目指し成長事業に育成をする方針である。その他販売事業については、顧客開拓および営業力強化に向けて、専門企業とのアライアンス提携強化などにより売上拡大 を目指す方針である。

 同社は駐機中の航空機にGPU(地上動力設備)で電力や空調を供給する「動力供給事業」と、空港施設の整備や保守などを展開する「エンジニアリング事業」、さらに、航空機の地上支援機材(GSE)やフード向けのカート、電力を販売する「商品販売事業」を手掛けている。売上構成比(今期見込み)はそれぞれ38%、51%、11%。

事業環境は改善、GPU(地上動力設備)活用促進

 前期までの2期は、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大による厳しい逆風にさらされた。連結営業損益は21年3月期に1.3億円の赤字(20年3月期は14億円の黒字)に落ち込み、前期はやや持ち直したものの、1.2億円の黒字と低い利益水準を余儀なくされた。

 しかし、その後はアフターコロナで航空旅客数が回復し、事業環境が上向いている。政府は観光業の支援策「県民割」を全国に拡大したほか、インバウンド(訪日外国人観光客)の受け入れも再開。同社の動力供給やエンジニアリング事業の稼働率も改善しつつある。

 正常化の動きはそれだけにとどまらない。コロナ禍では駐機中の航空機が、機体に搭載した補助エンジンの「APU」を使って電気などの動力を賄うケースが増えていた。「HEPAフィルター」と呼ばれる高性能フィルターを、APUと併用するウイルス対策をICAO(国際民間航空機関)が推奨したためだ。しかし、同社のGPUも同等の換気性能を有することが周知されつつあり、こうした風潮は下火になった。

 足元では地上から供給するGPUのニーズが戻り、一時減っていたエージーピーが担う領域が再び広がっている。GPUは航空燃料を節約できるだけではなく、APUに比べて騒音が少ないほか、CO2排出量をおよそ10分の1に抑えられるメリットがある。エージーピーは固定式のGPUに関して、国内の主要空港で独壇場を築いてきた。今期の営業利益は2.5億円を予想している。

 航空業界の脱炭素化の動きも本格的に加速する。そうした中で同社は、航空会社に対し環境負荷の少ないGPUの活用を促進するほか、GPUが整備されていない地方空港への展開を拡大する方向。また、国産初のバッテリー式設備の開発を進め、EV充電ステーションの設置も検討する。26年3月期までに、33.5万トン以上のCO2排出量を削減する目標を掲げている。

非空港・海外領域も注力

 一方、同社は空港以外のフィールドにも一段と力を入れる構えだ。その原動力の1つである物流保守サービスでは、空港内で培ったノウハウを物流センターに活用。EC(Eコマース)市場の拡大を背景に需要は強く、売上高は前期に6.7億円(前々期比2.7倍)に伸びた。電力小売もシェアアップの余地があり、中期計画では売上高に占める空港外比率20%以上を志向する。

 グローバル展開も視野に入れる。コロナ禍で当初のスケジュールには遅れが生じたものの、同社は既にタイに事務所を開設している。タイ政府の大型政策「東部経済回廊“Eastern Economic Corridor(以下、EEC)”」の主要5つのプロジェクトの1つである、スワンナプーム、ドンムアン両空港に続く「バンコク第3の国際空港の拡張計画」も含めてタイでのGPU導入などの展開を狙っており、海外事業の本格化の足掛かりにしたい考えだ。

 短期的には電力価格の上昇が採算面で同社のリスクとなるものの、実質無借金で自己資本比率約66%の好財務を基盤に、研究開発や設備、人的資本の分野への投資を強化する。株価はコロナ・ショック時の20年3月に形成した317円の安値を底に、ここ1年はおおむね500~600円台で推移している。中期計画で示した方向性を踏まえると、一段と水準を切り上げる余地が見いだせそうだ。

23年3月期の出足順調、ESGも進ちょく

 直近開示した23年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が航空需要の回復傾向を反映し増収となり、営業損益も赤字幅が前年同期から縮小した。原材料費の高騰によるコスト増はあったものの、継続的なコスト抑制の努力により、通期計画(営業利益2.5億円、前期比2倍)の達成へ向けて順調な出足となった。同社は早期にコロナ前の収益水準への回復を目指し、将来的には売上200億円を視野に入れている。

 ESG経営の進捗としては、GPU利用促進により那覇空港を発着するPEACH AVIATIONに対し4月よりGPUの供給を開始し、7月からは那覇空港を発着する日本エアコミューターのプロペラ機に対して、同社が40%を出資しているSASJ社が有するCOMBO(電力、空調を同時供給できる移動式機材)を活用したサービスを開始した。また、空港におけるCO2削減という社会貢献の観点から、地方空港を中心として動力事業拡大を企図しており、そのツールとして国産初のバッテリー駆動式GPUを開発され8月24日(水)に成田空港にて実機「Boeing 767-300ER(JAL機)」を用いた試験供給を行った。

 地方空港の展開においては、国産初のバッテリー式GPU、COMBOに加えて、GSE航空機地上支援機材の電動化、共有化、エネルギー利用の効率化を意図した新ビジネスモデル展開に対して、各空港管理会社・エアラインとの協議を開始した。

 また同社は、ダイバーシティに資する経営を目指し、社外機関を活用した取り組みに加え、外国籍社員の育成計画を実行している。人材を価値創出の原動力に位置付け、従業員の成長と企業価値の向上を実現する構えだ。ガバナンスに関しては、IR、PR活動の推進、独立社外取締役の増員、コーポレートガバナンスコード準拠に向けた具体的な進展もみせた。

 株主還元については、22年3月期に5円の復配を果たしたが、23年3月期は中間・期末の各5円の計10円に増配する見通し。中期計画では4年間で総還元性向100%以上を目安にしている。

株式会社エージーピー
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