3月権利取りの季節到来!「株主還元+プライスレス優待」で狙う注目銘柄 3月権利取りの季節到来!「株主還元+プライスレス優待」で狙う注目銘柄

掲載期間:2025年3月18日~2025年6月17日

 資本効率の改善へ向けた経営意識の高まりを映し、日本企業の配当は過去最高額の更新が続いている。昨年から投資枠が拡大したNISA(少額投資非課税制度)の利用者増も相まって、株主還元はいまや銘柄選びの最重要ポイントの1つと言える。また個人投資家にとっては、株主優待の有無も気になるところ。商品券やクオカード、企業のオリジナル商品も嬉しいが、娯楽・教養を満たしてくれる文化的な体験型優待にはプライスレスな魅力がある。本稿では積極的な還元方針を定めている上、そうしたユニークな優待も実施している企業を紹介していきたい。

企業の配当・自社株買いはうなぎ上り

 上場企業の今3月期の年間配当は計約18兆円と前年度から2兆円程度増え、4年連続で過去最高を更新する見通しだ。また、2024年の自社株買いは計画ベースで16.8兆円に上り、前年から75%拡大した。東京証券取引所による資本コストや株価を意識した経営要請を受けて、ROE(株主資本利益率)の底上げに直結する株主還元への取り組みに企業がこれまでになく力を入れていることが分かる。配当性向を引き上げるほか、近年は減配をしない「累進配当」の導入も目立つ。

 伝統的な株式の持ち合い(政策保有)を解消する流れも資本の効率化を促している。メガバンクや生損保が政策保有株の縮減を本格化する中で、需給の悪化を防ぐために自社株を取得・消却する企業は多い。東証の投資部門別売買状況によれば、24年の事業法人による現物株の購入額は21.1兆円と前年の14.3兆円から大きく増え、20年比では2.7倍になっている。売りを差し引いた買い越し額も24年は7.9兆円(前年比60%増)となり、日本株の大きな下支え役になっている。

グラフ1:投資部門別売買状況 事業法人の売買

グラフ1:投資部門別売買状況 事業法人の売買
  • 出所:東証

優待実施銘柄は相場波乱に強い?

 一方で、資本効率とは別の観点から企業が自社への投資を促す方法が株主優待だ。長期保有の株主への優待内容を拡充する動きも強まり、株価も好感反応を示すケースが多くみられる。優待は株主のロイヤリティやファン精神の醸成に結び付きやすく、相場が悪化した場合も株価を下支えする効果が期待される。大和証券の分析によれば、24年8月5日に日経平均株価が4451円安の大暴落を記録した局面で、優待実施銘柄の前月末比の下落率は平均17%となり、優待のない銘柄の21%に対し抑えられた。

 では、具体的にはどういった優待がお得なのだろうか。まず挙げられるのが特定の範囲内で現金の代わりになる「金券」だ。特に、コンビニエンスストアなどの加盟店で幅広く使用できるクオカードは人気がある。高額のクオカード優待を導入する企業が最近は多く、発表直後の株価反応も抜群だ。

 ただ、その企業にしか提供できない特典にこそ価値があるとすれば、これらは必ずしも最良の優待ではない。NISAを活用するなどして長期で保有する銘柄を選ぶ際には、株主還元の度合いとともに、より特別感のある体験型の優待を選別のポイントにすることも一考に値する。それにより、金銭に勝る豊かな人生の資産を手にできるかもしれない。

「題名のない音楽会」招待、出光興産に注目

 そうした観点から浮上する銘柄が出光興産(5019)だ。石油元売りでは国内第2位のシェアを誇る同社は、EV(電気自動車)への搭載が期待される次世代電池材料、固体電解質の材料開発や、e-メタノール、SAF(持続可能な航空燃料)など、次世代エネルギー分野の展開に向けても注力している。17日時点で約0.8倍のPBR(株価純資産倍率)を早期に1倍以上に押し上げるべく、資本効率の向上と株主還元の充実に取り組んでいる。

 今3月期は、2期連続増となる年間配当36円(前期は株式分割調整後で32円)を見込む。自社株買いにも積極的で、現在実施している計画(24年5月15日~25年3月14日)の取得上限は700億円。それ以降についても、同規模700億円の自社株買い枠(25年3月17日~26年3月16日)を既に発表している。また、年間配当36円を下限としているほか、25年のROE10%を経営目標に掲げている点を踏まえると、同社の高水準の還元には持続性があると考えられる。

グラフ2:出光興産の1株配当と自社株買い額

グラフ2:出光興産の1株配当と自社株買い額
  • 年間ベース、22.3期は記念配、自己株買い額は決議ベース
    単位:億円、円
    出所:出光興産資料などをもとにウエルスアドバイザー作成

 そして同社は、魅力のある体験型の株主優待も実施している。その1つが、24年に放送60周年を迎えた人気テレビ番組「題名のない音楽会」への招待だ。

 題名のない音楽会は、テレビ朝日系列で毎週土曜日の午前10時(BSは毎週日曜日の午前8時)から放送している。「良質な音楽をお茶の間に届ける」ことをコンセプトに、日本の音楽文化の向上に長年にわたって貢献してきた、クラシック音楽分野では世界最長寿の番組だ。その放送開始以降、一社提供でスポンサーを続けている出光興産は、3月末と9月末の権利確定日に500株以上を保有する株主の中から、1公演につき約50組100名を抽選で公開収録に招待している。同社が大切にしている企業理念のなかに、「国・地域社会、そこに暮らす人々を想い、考えぬき、働きぬいているか」という一節があるように、事業面での国・地域社会への貢献だけではなく、芸術を通じて人・地域・次世代をつなぐことを目的とした企業市民活動に継続して取り組んでいる。将来有望な若手・新進気鋭の音楽家を支援するために90年に創設した「出光音楽賞」は、16年に著名ピアニストの反田恭平氏が受賞している。24年に同株主優待を新設したのも、参画を通じ株主に同活動への理解を深めてもらうことが目的の一つであるとしている。

「題名のない音楽会」の公開収録の様子 ©テレビ朝日
  • 写真1:「題名のない音楽会」の公開収録の様子 ©テレビ朝日

 同社への投資を通じて、株主はよりすぐりの演奏家による一期一会のパフォーマンスを直に目にする機会に巡り合える可能性がある。それは決して、お金では買えない体験になるだろう。

「キッザニア写真」 ©KCJ GROUP
  • 写真2:「キッザニア写真」 ©KCJ GROUP

 同社の優待は、こども向けの職業・社会体験施設「キッザニア東京・甲子園・福岡」の東京・甲子園・福岡の入場券の抽選権もセレクトできる。キッザニアは3月末時点で500株以上を保有する株主の中から、計300名(チケットは1セット4枚<大人1枚・大人こども共通3枚>)に入場券を贈呈する。また、同社が主催し60年超の歴史を誇る次世代を担う若手作家のための公募制美術賞「Idemitsu Art Award」の受賞・入選作品の展覧会については、全株主(9月末の権利確定日に1株以上を保有)を招待している。

図表1:出光興産の株主優待情報

①「題名のない音楽会」の公開収録に招待(抽選)
3月末、9月末 株主1名につき2名分まで応募可(公開収録ごとに募集実施)/ 500 株以上保有の株主対象
②「キッザニア東京・甲子園・福岡」の東京・甲子園・福岡の入場券贈呈(抽選)
3月末 抽選で各会場100名の計300名に贈呈※/500 株以上保有の株主対象
※チケットは1セット4枚(大人1枚・大人こども共通利用券3枚)
③「Idemitsu Art Award 展」招待券を贈呈
9月末 全株主が対象

出所:出光興産HPからウエルスアドバイザー作成

 米USスチールの買収の行方が気になる日本製鉄(5401)も配当利回りが17日時点で4.6%と高い上、体験型の株主優待を実施している。同社は抽選で、1000株以上を保有する3、9月末の株主を自社製鉄所の見学会などに、5000株以上でオフィシャルパートナーをつとめるサッカーJ1リーグの鹿島アントラーズのホームゲームに招待する。一般の自由席チケットは大人料金で3000円以上することを踏まえると、当選すればお得感が大きい。

 音楽事務所のエイベックス(7860)は、累計来場者数600万人以上を誇る夏フェス「a-nation」の優先予約制度を3月末の株主優待にしている。完売するケースもある人気イベントだけに、うれしい特典だ。また、保有株数に応じた割引価格が適用される。また同社は、自社グループ所属アーティストらの公演チケットの優先予約も優待にラインアップしている。そして配当利回りは4%に迫る。

 放送局ではテレビ東京ホールディングス(9413)が配当利回り2%台半ばと相対的に高く、優待も3月末にクオカード(100株以上で500円分)、9月末に公開歌番組への抽選招待を提供している。このほか、ピアノの河合楽器製作所(7952)は利回り約3%で、優待ではコンサートなどの自社イベントに無料で株主を招待する。


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