掲載期間:2024年9月6日~2024年10月6日
三井住友トラスト・ホールディングス(=三井住友トラストHD)は今年4月にグループ創業100年を迎えた。25年3月期には100周年の記念配当を実施し、配当金は計145円(普通配当135円、記念配当10円)に引き上げる(前期は実質110円※)。継続的な配当引き上げと収益拡大に取り組む三井住友トラストHDへの関心も高まりそうだ。
※24年3月期の配当金については、2024年1月1日を効力発生日とする株式分割(2分割)を加味した調整後の金額 三井住友トラストHDは、12年3月期のグループ発足来減配を行ったことはなく、継続的な増配に取り組んでいる。25年3月期の配当予想の145円は、12年3月期の年間配当実績42.5円から3.4倍の水準まで達している。
昨年には株主還元方針を変更し、累進的な配当運営を明示するとともに、連結配当性向は40%「以上」を目安に決定することとした(従来は40%「程度」)。また、自己株式取得も機動的に実施する運営としており、直近では23年度に約200億円規模での実績があり、株主還元の強化に余念がない。
株主還元
業績も堅調だ。25年3月期の実質業務純益は、前期比13億円増の3,400億円を予想する。日本の金利上昇に伴う資金利益の改善が見込まれるほか、資産運用・資産管理ビジネスなどの手数料収入も増える見通し。親会社株主純利益予想は2,400億円と26年3月期を最終年度とする中期経営計画で示された予想(2,200億円)を引き上げ、最終年度の目標を1年前倒しで達成する計画だ。また、ROE(自己資本利益率)10%以上の早期達成を目指しており、経営効率の改善も進めている。
25年3月期第1四半期(4~6月)も順調なスタートを切った。実質業務純益は887億円(前年同期比165億円増)と通期予想に対する進ちょく率は26%に達した。親会社株主純利益は666億円(同299億円増)だ。
企業価値向上に向けた取り組み
また、新NISA(少額投資非課税制度)の登場により個人投資家の投資への関心が高まる一方で、金融市場では日米の金融政策の方向性の違いが表面化してきている。日本が追加利上げに踏み切ったのに対し、米国では利下げの可能性も浮上する。外国為替市場ではこれまでの円安の巻き戻しが生じたほか、8月5日には日経平均株価が過去最大の下げ幅となる一方で、翌日6日には過去最大の上げ幅を記録した。
11月には米大統領選挙も控えており、外国為替や株式、債券市場のボラティリティ(変動)が高まる可能性も出てくる。先行き不透明感が強まる中で、関心が高まるのは高配当株だ。堅調な業績推移を背景に継続的な増配を行っている三井住友トラストHDにも一層の注目が集まりそうだ。
同社は10月1日に商号を「三井住友トラストグループ」に変更する。4月にはグループ創業100年を迎えており、次の100年に向けて新たな一歩を踏み出す格好だ。1924年に三井信託が信託法・信託業法に基づく日本初の信託会社として、続く1925年には住友信託が創業した。第二次世界大戦後には「貸付信託」の取り扱いを開始し、個人から受託した長期資金を産業界に供給することで、戦後復興や高度経済成長に貢献してきた。その後も、時代ごとに変化する社会課題の解決に信託の力で貢献してきた結果、今の同社がある。
信託と同社のあゆみ
今後も、人生100年時代を迎えた個人の資産運用・資産管理ニーズの高まりや、企業の脱炭素化に向けた資金需要の拡大といった新たな社会課題の解決と、そこから生まれる多様な顧客ニーズに応える商品・サービスの提供を通じ、次の100年に向けた取り組みを進めていく。信託を軸に銀行機能を併せ持ち、インベストメントチェーンの広範囲をカバーしている同社にとって、貯蓄から投資への流れはその特色を活かす好機となっている。金融教育への注力や、プライベートアセット市場の拡大への取り組みを通じて、資金・資産・資本の好循環を促す社会インフラを目指す同社の活躍が期待される。次の100年もその歩みは止まらない。