新NISA活況、優待・分割で個人投資家へアピール合戦 新NISA活況、優待・分割で個人投資家へアピール合戦

掲載期間:2024年4月25日~2024年5月24日

 新NISA(少額投資非課税制度)が始動して4カ月が経過した。資産運用への関心の高さを反映し、口座を新規で開設する動きは活況だ。こうした中で、上場企業は個人投資家の資金を呼び込む取り組みが求められている。その有力な手段である株主優待や、株式分割を実施している銘柄に注目が集まる。

 NISAの年間投資枠は、24年から計360万円(積み立て投資枠120万円、成長投資枠240万円)と従来の160万円から大幅に引き上げられた。3月に日本証券業協会が公表した資料では、証券会社10社(大手5社とネット5社)の2月末時点のNISA口座数は約1,400万口座で、2月の新規開設件数は53万件に上った。昨年の1~3月の月平均(18万件)と比べ3倍に迫る(図1)。

図表1:新NISA始動で個人投資家呼び込み

NISAの利用状況
図表1:新NISA始動で個人投資家呼び込み
  • ※24年2月末時点
  • ※日本証券業協会の「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年2月末時点)」よりウエルスアドバイザー作成

 日経平均株価の史上最高値更新も相まって、個人が強気スタンスに傾いているようだ。1~2月のNISA口座による買い付け額の月平均は、成長投資枠が1.5兆円、積み立て投資枠が2,700億円だったが、国内株(ETFやリートを含む)は46%を占めた。このうち、成長投資枠での株式の買い付け額のうち実に91%が国内株だった。

 上場会社は企業価値向上(=株価上昇)という命題を背負う時代に入り、株主還元を強化することなどで投資家へのアピールを積極化している。その対象は機関投資家や外国人にとどまらず、NISA枠の拡大を通じて存在感を示す国内の個人も重視されつつある。

 個人投資家の資金を呼び込む施策としては、株式分割が有力な手段の1つとされる。それ自体が企業価値に与える影響はないものの、最低投資額を大幅に引き下げられるという点で買いやすさにつながる。例えば株価(1株当たり)2万円の銘柄が10分割すれば、最低投資額(100株)も200万円から20万円に下がる。24年3月末基準では、60銘柄程度が株式分割を実施した。

 また、魅力的な株主優待も個人の資金を呼び込む方法として広く用いられてきた。その企業ならではの優待は、実際にサービスを利用する人を投資家として招き入れる効果をもたらす。また、クオカードをはじめ、換金性や利便性の高い優待も人気になりやすい。

 そこで、株式分割や株主優待を実施している注目の企業をいくつか挙げてみた。

セブン&アイ・ホールディングス(=7&iHD、3382)

 7&iHDは、3月1日付で1対3の株式分割を実施、最低投資額を引き下げ、少額の資金でも買いやすくなった。また、配当は持続的な利益成長に合わせ増配していく「累進配当」を導入、利益からどの程度を株主へ還元するか示す指標である総還元性向は50%以上(23年度から25年度累計)を目標としている。25年2月期の予想1株配当金は40円(前期は実質37.6円)に増配し、予想配当利回りは2.03%(4月18日終値時点)となっている。23年12月1日から24年5月31日まで7,500万株(発行済株式総数の2.83%)、1,100億円を上限とする同社設立以来最大規模となる自社株買いを行っている。

 さらに、4月10日には24年2月期連結決算と同時に株主優待制度を導入すると発表した。保有株式数や継続保有期間に応じて同社グループ共通で利用できるセブン&アイ共通商品券(図2)、または社会貢献活動団体への寄付を選択できる。

図表2:セブン&アイ共通商品券

セブン&アイ共通商品券
保有株式数 継続保有期間3年未満 継続保有期間3年以上
100株~ 2,000円分 2,500円分
400株~ 2,500円分 3,000円分
700株~ 3,000円分 3,500円分

出所:セブン&アイ・ホールディングスのHPやリリースから抜粋

 優待の商品券は、国内約22,800店舗(一部を除く)で使える商品券で、グループ商品の買い物や食事に使える(セブン‐イレブン、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、アカチャンホンポ、デニーズ、ロフトなど)。有効期限を気にせず利用できるなど利便性が非常に高い。初年度は8月末と2月末の2回もらえる点もポイントだ。優待利回りは1.01%(100株以上、継続保有3年未満の場合)と、配当と合算した総還元利回りは3%に相当する。

三井不動産(8801)

 三井不も株主還元に積極的だ。同社は3月1日に株式分割と株主優待制度の新設を公表した。3月末基準で1株を3株に分割したほか、所有株数に応じて、ららぽーとや三井アウトレットパークなどの対象施設、三井ショッピングパーク公式通販サイト「&mall」などで使えるポイントを贈呈する。

 さらに、4月11日には24年3月期の予想1株配当を従来予想の72円から82円へ増額(前期実績は62円)し、予想配当利回りは1.67%(4月18日時点)となった。同社も資本効率の向上を目的とした自己株式取得を行うほか、総還元性向は親会社株主に帰属する当期純利益の45%程度を目途とする方針を示す。

オリエンタルランド(=OLC、4661)

 OLCの株主優待は人気が高い。「東京ディズニーランド(TDL)」、または「東京ディズニーシー(TDS)」いずれかの施設で利用可能な1デーパスポートがもらえる。3月末のみでは500株以上の保有(3年継続保有株主は100株以上)と条件は付くものの、優待を目当てに株主になる投資家は多い。

 もっとも500株の場合、最低投資金額は226万円と比較的大きな額の初期投資が必要となるため、ハードルは高め。また、1デーパスポートの大人平日の料金7,900円ベースの優待利回りは0.35%とやや低い。24年3月期の予想1株配当は11円で、予想配当利回りは0.24%とこちらも低水準。ディズニーファンにはたまらないが、利回りという観点からは、魅力に欠ける面がある。

東映アニメーション(4816)

 一般消費者になじみが深い企業では、東映アニメも株主還元を積極化させている。東映アニメは、21年12月20日に、「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出、定期的にその進ちょく状況を公表している。そんな中、24年1月29日に24年3月31日を基準日とする1対5の株式分割を発表、最低投資金額が小さくなったことで、投資のハードルが下がった。また、同社の優待株主優待は、優待限定描き下ろしの人気キャラクターがデザインされたクオカード。こちらも、各キャラクターのファンにはたまらない上、クオカードは高い換金性がある。

森永製菓(2201)

 もう1社なじみのある企業でいうと森永菓は23年12月31日を基準日とする1対2の株式分割を行ったほか、24年2月には株式の消却(消却前の発行済株式総数に対する1.28%)を実施している。値上げ効果などもあり業績は好調に推移し、24年3月期連結業績予想を上方修正したほか、1株配当を前回予想の52.5円から55円に増額した。

 株主優待は9月末の株主を対象に、同社製品の詰め合わせ、または同額の寄付を実施しており、株主還元に積極的だ。

図表3:各社株主優待のまとめ

銘柄名 コード 権利確定月 株主優待
セブン&アイ・
ホールディングス
3382 8月末(初回のみ)・2月末 セブン&アイ共通商品券または同金額の社会貢献活動団体への寄付
100株以上 継続保有期間:3年未満 2,000円分 / 3年以上 2,500円分
400株以上 継続保有期間:3年未満 2,500円分 / 3年以上 3,000円分
700株以上 継続保有期間:3年未満 3,000円分 / 3年以上 3,500円分
三井不動産 8801 3月末 三井ショッピングパークポイント
※継続保有期間 半年以上
100株以上:100株ごとに1,000ポイント
1,200株超:12,000ポイント
オリエンタルランド 4661 3月末・9月末 「東京ディズニーランド(TDL)」、または「東京ディズニーシー(TDS)」
いずれかの施設で利用可な1デーパスポート
500株以上 1枚<3月末のみ>
2,000株以上:1枚
4,000株以上:2枚
6,000株以上:3枚
8,000株以上:4枚
10,000株以上:5枚
12,000株以上:6枚
東映
アニメーション
4816 3月末 株主優待オリジナル「キャラクターQUOカード」
所有株式数 優待内容
100株以上:1セット(1,200円相当)
300株以上:2セット(2,400円相当)
500株以上:3セット(3,600円相当)
1,000株以上:5セット(6,000円相当)
3,000株以上:8セット(9,600円相当)
5,000株以上:10セット(12,000円相当)
10,000株以上:12セット(14,400円相当)
森永製菓 2201 9月末 製品詰め合わせ、または同金額の寄付
・100株以上
【6ヵ月以上保有】:1,500円相当 /【3年以上保有】:2,500円相当
・600株以上
【6ヵ月以上保有】:2,500円相当 /【3年以上保有】:4,000円相当
※寄付の選択(同等金額)も可能。
  • 出所:各社資料からウエルスアドバイザー作成
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