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国内株価の乱高下にみるファンドのパフォーマンス、株価下落に抵抗した高配当利回り株ファンド

2024/08/16 18:18

 株価の乱高下が続いている。特に、7月から8月にかけて日本株の動きが激しくなっている。日経平均株価は7月11日に史上最高値の4万2224円を記録したものの、8月5日には史上最大の下落幅4451円安となり、翌6日には史上最高の上場幅3217円高を記録するなど、アップダウンの激しい値動きになっている。この激しい変動期に、個々のファンドの基準価額がどのような動きになっていたのかを調べてみた。一つには、純資産総額が大きな国内株ファンド、そして、国内株ファンドで資金流入額が大きなファンドをピックアップした。

 ピックアップしたのは、純資産総額が大きな国内株ファンドとして「ひふみプラス」と「フィデリティ・日本成長株・ファンド」の2本。そして、直近で資金流入額が大きなファンドとして「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」、「日経平均高配当利回り株ファンド」、「日本好配当リバランスオープン2」の合計5ファンドを調べた。

 6月末時点を10000とすると、7月11日に株価が史上最高値になった時は、日経平均株価は10667だった。比較した5ファンドで最高は「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」の10549、最低は「日本好配当リバランスオープン2」の10227だった。調べた5ファンドでは、上昇時にインデックスである日経平均株価を上回る上昇率になったファンドはなかった。個別のファンドの基準価額は信託報酬等を控除後の価格であるため、株価指数そのものよりも手数料の負担がある分、成績が劣後してしまうという側面はある。

 一方、株価が最も値下がりした8月5日には、日経平均株価は7947になった。6月末比で20.53%安になった。最高値からの下落率は25.50%だ。この時点で、もっとも基準価額の水準が高かったのは、「日本好配当リバランスオープン2」の8363、そして、「日経平均高配当利回り株ファンド」の8084だ。この2ファンドは、株価下落時に日経平均株価よりも基準価額の水準が上にあった。また、最高値からの下落率は「日本好配当リバランスオープン2」は18.23%、「日経平均高配当利回り株ファンド」は21.21%と日経平均の下落率25.50%より軽微な下落率になっている。

 最高値からの下落率では、「ひふみプラス」が24.24%、「フィデリティ・日本成長株・ファンド」は25.39%で日経平均株価よりも下落率がわずかに小さかった。「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」は26.96%で日経平均株価よりも下落率がやや大きくなった。

 そして、8月15日現在、日経平均株価は9278の水準に回復している。最安値からの上昇率は16.75%だ。これに対し、「日本好配当リバランスオープン2」は9525で日経平均株価を上回っている。安値からの上昇率は13.90%で日経平均株価に及ばないが、下落率を抑制した効果が最終的な収益で日経平均株価を上回った。次に、「日経平均高配当利回り株ファンド」で9176だった。安値からの上昇率は13.51%と5つのファンドの中で最も小さかったが、下落率が少なかったために、最終的な収益で他の3つのファンドを上回った。

 「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」は安値からの上昇率が18.56%と5つのファンドの中で最も高く、日経平均株価の上昇率を超えているものの、下落時の落ち込みが大きかったために、最終的に9135で日経平均株価に及ばなかった。次に「フィデリティ・日本成長株・ファンド」は安値からの上昇率は17.16%と日経平均株価を上回ったものの、最終的には9118と日経平均株価に及ばなかった。「ひふみプラス」は9043で5ファンドの中で最も低い成績になった。安値からの上昇率は15.72%で日経平均株価に劣後した。

 これらの結果をみると、「日本好配当リバランスオープン2」や「日経平均高配当利回り株ファンド」など、配当利回りに着目したファンドのパフォーマンスが相対的に良いことがわかる。これらのファンドに資金流入が活発なのは、今年2月に34年ぶりに日経平均株価が史上最高値を更新し、その後も高値を更新する中で、日本株の一部に割高感があると言われ、高配当利回りなど割安株に安心感があるという理屈からだった。実際の値動きを追ってみても、株価が大きく下落する局面にあって、配当利回りの高い銘柄群は下落率が抑えられることで、日経平均株価よりも良い成績を残していた。

 もっとも、株価が急速に戻る局面では、上昇率で日経平均株価に劣るという弱点もある。その辺のパフォーマンスの性格を捉えて投資判断に活かしていきたい。

 この1カ月余りの動きだけで、それぞれのファンドの実力が分かるわけではない。この1カ月余りではパフォーマンスが良くなかった「ひふみプラス」は、過去10年でみると年率トータルリターンが11.21%で、同ファンドが入る「国内中型グロース」のカテゴリー平均9.21%を上回っている。それぞれのファンドで得手不得手な市場環境もあり、また、10年、20年という中長期に運用を継続してきている大型ファンドは、ファンドマネージャーや運用体制の見直しなどによって、よりよい成績につながるような見直しも行われるという点などには、ファンドの評価で留意したいポイントだ。(グラフは日経平均株価と主な日本株ファンドのパフォーマンス推移)