ウエルスアドバイザーYouTubeチャンネル かんたんファンド検索 詳細条件でファンドを検索 ファンドの見直し

ファンドニュース

ランキング上位の順位が不変、信託報酬引き下げなどで市場激変の予兆か?=ネット証券の投信積立契約件数ランキング23年3月

2023/04/05 16:48

 大手ネット証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次)2023年3月のトップは前月と同様に同ポイントで「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」になった。第3位以下も同ポイントで第10位に食い込んだ「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」を除く上位10銘柄が前月と同順位になるという結果になった。投信積立は、長期に積立投資を継続することによって積立効果が得られる仕組みであるため、ランキングの変動は大きくない傾向があるが、これほど動きがないのは2019年12月以来初めてのことだ。何か、大きな変化が訪れるのを待つ「嵐の前の静けさ」を感じさせる動きだ。

 ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。

 2018年1月の「つみたてNISA」のスタートを機に広がった投信積立の人気は、2024年にスタートする「新しいNISA」の主軸に位置付けられる「つみたて投資枠」によって、今後も資産形成のベーシックプランとして定着することが期待される。その積立投資の対象商品として選択されるのが、「ネット証券の投信積立契約ランキング」で上位にランクインしている銘柄群だ。代表的なブランドは、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」、SBIアセットマネジメントの「SBI・V」、楽天投信投資顧問の「楽天」、そして、ニッセイアセットマネジントの「購入・換金手数料なし」のシリーズになっている。

 ただ、ネット販売向けのノーロード・低コストのインデックスファンドシリーズは他にもある。アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」、大和アセットマネジメントの「iFree」、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「My SMT」、野村アセットマネジメントの「Funds−i」、りそなアセットマネジメントの「Smart−i」、そして、三井住友DSアセットマネジメントの「SMBC・DCインデックス」など、それぞれのシリーズが「つみたてNISA対象商品」に多くのファンドを送り込んでいる。しかし、これらのファンドシリーズは、信託報酬率が最低水準よりも高い、または、シリーズとして商品ラインナップが少ないなどの理由で投資家の認知度が高まらないままの状態が続いてきた。

 ここへきて「たわらノーロード」がシリーズとして信託報酬率の引き下げを3月24日に発表し、「先進国株式」が「年0.10989%(税込み)」、「全世界株式」が「同0.1133%」、「新興国株式」が「同0.185%」と業界最低水準の信託報酬率に引き下げた。そして、3月30日に新規設定した「S&P500」は、業界最低水準の「同0.09372%」で登場した。この動きには、業界最低水準の手数料率をめざすという姿勢を明確にしている「eMAXIS Slim」が直ちに反応し、「S&P500」、「先進国株式」、「全世界株式(オール・カントリー)」、「新興国株式」において、信託報酬率を「たわらノーロード」と同水準に引き下げる発表を行った。信託報酬率の大幅な引き下げを行った「たわらノーロード」シリーズが、今後、投信積立ランキングにランクインするような人気を獲得できるかどうかに注目したい。

 なお、「たわらノーロード」は大規模な信託報酬率引き下げを行ったこともあって目立っているが、その他のインデックスファンドの信託報酬率も低下傾向にあり、業界最低水準と比較してそん色ないファンドもある。たとえば、「S&P500」のインデックスファンドとしては、「SMBC・DCインデックス」と「My SMT」では「年0.0968%(税込み)」だ。「eMAXIS Slim」が「たわらノーロード」に対抗して引き下げる前の水準と同じ水準になっていた。これほど水準が低くなると、「0.0968%」と「0.09372%」の間にある「年0.00308%」の報酬率の差が実質的にどの程度の運用成果の違いとして出てくるのだろうか? 単純に計算すると100年で0.3%の差であり、大きな違いとは意識されないように感じる。

 また、インデックスファンドには、連動する株価指数にピッタリ寄り添って運用できているかということの巧拙もあり、20年、30年と長い期間を運用したとしても、「年0.003%」程度の報酬の差は、それほど差が大きくは出てこないのではないかと考えられる。そして、「つみたてNISA対象ファンド」としては、同じ「S&P500」のインデックスファンドとして「年0.5%(税込み)」でも「適格」になっている。さすがに、「年0.5%」と「年0.09372%」では「年0.40628%」の差があり、単純計算で10年で4%の差は気になる違いとして意識されるかもしれない。販売会社がラインナップを揃える上で、顧客の利益を第一に考えるのであれば、年0.1%を下回る商品があるにも関わらず年0.5%の信託報酬のファンドを提供するのには、高い報酬に見合う付加価値があるということを説明する必要があるといわれてもしかたがないと思えるが、どうだろう?

 「新しいNISA」のスタートを前にして「つみたてNISA対象ファンド」であることは、大きな意味がある。「つみたて投資枠(年間120万円で最大1800万円)」でも「成長投資枠(年間240万円で最大1200万円)」でも活用できるファンドだからだ。1人最大1800万円という非課税投資枠を丸ごと取り込むことが可能なのが「つみたてNISA対象ファンド」ということになる。運用会社の間では、「新しいNISA」の対象商品として販売会社に採用されることをめざし、「つみたてNISA対象ファンド」、あるいは、「新しいNISAの制度適格ファンド(信託期間20年以上、毎月分配型ではない、ヘッジ目的以外で先物等を活用しないなど)」をいち早く明確にして、販売会社の選択を得ようとする競争が始まっている。ネットで好条件のファンドを探すという視点に立てば、今後、どんどん魅力的なファンドが出てくることになる。どのようなファンドがランキングに顔を出すようになるのか、今後のランキングに注目していきたい。