テンポイノベーション ユニークで強固なストックビジネスを展開 11期連続の増収増益を達成 テンポイノベーション ユニークで強固なストックビジネスを展開 11期連続の増収増益を達成

テンポイノベーション<3484>は東京を中心に、首都圏の飲食店向け居抜き物件に特化し、不動産オーナーから賃借した物件を店舗出店者に転貸する店舗転貸借事業を手掛ける。ストックビジネスが積み上がり、業績は好調。2023年3月期に11期連続の増収増益を達成しており、今後も着実な成長が続く公算は大きい。同社の原康雄社長が、Zeppy(ゼッピー)の井村俊哉社長と、同社の強み、課題とアップサイド等について語り合った。

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【強み】

井村氏:
コロナ禍でも増収を確保した強固なストックビジネス、これが御社の強みだと思います。飲食店向けビジネスにもかかわらず、コロナの影響が強かった20~21年も売上は減らず、順調にストックビジネスを積み上げています。改めて事業内容のご説明を最初にいただけますでしょうか。
原氏:
当社は不動産会社ですが、テンポイノベーションという社名の通り、その中でも店舗専門で転貸借事業を展開しています。住宅、事務所、倉庫、駐車場は扱わず、一般的な不動産会社が行う仲介、管理業も一切やっていません。転貸借とは実は契約形態の名称で、例えば賃貸借契約とか、資産譲渡契約とかいろいろな契約がある中で、転貸借契約という契約の形態となります。
井村氏:
表現が適切か分かりませんが、平たく言うと「又貸し」ですよね。不動産オーナーから店舗を借り、それを飲食店に貸すということですね。
原氏:
ただの又貸しではありません。例えばビルオーナーからすると、焼き肉店に物件を貸すのも、当社のような転貸の会社に物件を貸すのも、物件を貸して家賃を得るという意味では同じです。当社はあくまで借り主として転貸借をやっているということです。
井村氏:
では、不動産オーナーは通常の賃料で、御社に物件を貸しているということですか。
原氏:
そういうことです。
井村氏:
それでは、なぜテナントは御社の差益込みの、少し高い値段で店舗を借りるのでしょうか。
原氏:
それは店舗物件だからです。店舗物件というのは、唯一無二、そこにしかないものです。住宅だと似たような建物、部屋がたくさんありますが、店舗の場合はその賃料、その住所、その形、その坪数の物件というのはそこにしかありません。家賃が100万円だろうが50万円だろうが、店を出す方は商売として損益が成り立つかどうかということを重要視しますから。
井村氏:
なるほど。
原氏:
当社では、あまり高額な物件は扱っていません。例えば、月額20万~50万円ぐらいの物件で、1件の差益は数万円に過ぎません。比率でいえば、だいたい10~20%程度です。
井村氏:
物件はいわゆる居抜きですね。御社の物件は、閉店した店舗の内装、外装、設備類などをそのまま利用し、出店することができますね。
原氏:
居抜きは店を出す方にとっては、大きなメリットがあります。10坪のラーメン屋をやるなら最低でも1000万円ぐらい工事費用がかかりますが、居抜きだと看板を変える程度なので100万円ちょっとで出店できます。
井村氏:
テナントからすると、居抜きで開業費を大きく減らせることや、すぐに出店できることが魅力なんですね。
原氏:
そうです。
井村氏:
このビジネスが成長し続けるために肝となるポイントとして、未流通の居抜き物件をいかに多く仕入れるか、ということになりますね。
原氏:
その点は当社の強みとになります。店を出したい方は基本的に直接不動産屋に行って、物件情報を収集しますが、その数はあまりに多いのです。東京だけでも9万物件あって、そのうちの10%ぐらいは毎年入れ替わります。
井村氏:
飲食店の新陳代謝はすごく激しいのですね。
原氏:
物件を探している方の数というのも、想像を絶するぐらいいます。当社は今年創業19年ですが、当時から不動産屋に足しげく通い、毎日毎日、物件ないですかということをやり続けています。
井村氏:
本当に泥臭く、足で稼ぐということですか。
原氏:
そうです。そうやって見つけた物件を当社が借り、その情報を当社の「居抜き店舗.com」に掲載します。飲食企業の方は、「居抜き店舗.com」に来るだけで、家にいながらにして労せずに物件情報を入手することができるのです。
井村氏:
気になる点があります。テナントとして入った人が退店すると、御社は賃料収入は受け取れない半面、オーナーへの賃料の支払いはあり、キャッシュフローが一時的にマイナスになる状態になると思います。この点はリスクだと思いますが、いかがでしょうか。
原氏:
住宅と違って、店舗は解約する際にすぐには出られなくて、解約予告期間が3~4カ月とか決まっています。その間に当社が次のテナントを探してくれば、空家賃を払う必要はないのです。
井村氏:
客付けして居抜き物件の次のテナントが決まったとなると、退店するテナントには何かキャッシュインがあるんですか。
原氏:
壁、床、天井を含めて、厨房器具から排気設備まで、造作物が全部売れます。当社のビジネスモデルに盲点はなく、転貸借事業として昇華させている会社と言えるでしょう。
井村氏:
次は成長余力についておうかがいします。御社事業の対象となる店舗は全体で16万店舗あって、その中の11万店舗をターゲットし、中期計画の目標として転貸借物件数5500店舗を掲げています。この11万店舗というのは、どういう基準で選別しているのですか。
原氏:
16万というのは1都3県の店舗物件数です。その中でも、空中階の物件、駅から遠い物件、100万円とか200万円とか金額が大きい物件などは当社では基本的に対象外であるため、大体11万店舗は当社のターゲットになると、そういうイメージですね。

【課題】

井村氏:
ストックが順調に積み上がり、業績は順調ですが、課題もあるように思います。自分が着目したのが、営業人員数です。中期計画では現在の36名を26年3月期に100名体制にするとなっています。増員によって、仕入れ体制、リーシングを強化し、転貸借物件数をどんどん増やすということかと思いますが、これがビハインドする可能性もあるのではと考えています。離職率は過年度で何%ぐらいでしたか。
原氏:
ざっくりだと15%ぐらいと思います。ただ、この半年の離職はほぼゼロです。
井村氏:
半年間ほぼゼロですか。それは、採用時のミスマッチをなくすよう、営業ってどんなことをするのかとしっかり伝えられるようになったからですか。また、先輩などがフォローに入り、離職が止められるようになったということでしょうか。
原氏:
そうですね。より現場に近い人間によって、現場に沿う教育、採用ができてきた、ということだと思います。
井村氏:
今期の離職率の目標値はどのぐらいですか。
原氏:
できれば5%ぐらいですね。
井村氏:
5%になれば景色は相当変わってきますね。採用に関しては、年に24名をめどとしています。離職が抑えられているのはいいことですが、そもそも24名の採用は可能でしょうか。
原氏:
実は24名の採用には、あまりこだわっていません。重要なのは、将来的に当社の営業部隊が年間に転貸物件数1000件を取り扱うということです。今はまだ400件とか500件程度なので。今期は570件の計画ですが、そのためには営業人員が約40名要ります。そう考えれば、100人いれば26年3月期の目標である年間1000件の取扱いは十分にできるでしょう。

【アップサイド】

井村氏:
前期より開始した家賃保証事業の売上はまだ全体の1%ぐらいです。家賃保証の売上はそのまま利益に直結し、粗利はほぼ100%ということになるのですね。家賃保証については、これまで外部の保証会社で行っていたのを内製化しているのですか。
原氏:
内製化しています。ただ、すべて当社グループでやるわけではありません。当社の基準で、リスクの度合いによって、外部の保証会社を使うこともあります。例えば家賃が高いとか、あまりにもテナントの方の与信力が低いとか。
井村氏:
これから賃貸借契約を結ぶ物件については、何%ぐらいが家賃保証の対象ですか。
原氏:
家賃保証は基本的にすべての物件が対象で、その中で当社グループの家賃保証は大体7~8割ですね。あとは外部の保証会社を利用します。1物件当たりの粗利益は家賃の平均なので40万~50万円程度です。
井村氏:
保証契約は基本的に必ずして、当社グループでは7~8割ぐらいを引き受け、1物件当たり50万円。この件は中期計画に盛り込んでいますか。
原氏:
メイン事業ではないので、一応告知している程度です。
井村氏:
でも、今の規模で計算すると営業利益全体の約10%になるから、無視できないぐらい大きいですよね。新たに営業人員とか固定費がかかるわけでもないですし。アップサイドかなと思ってしまいます。
原氏:
そうかもしれません。
井村氏:
次は外部環境です。今、コロナ禍から回復の動きが活発化し、インバウンドも増える状況にあり、今後、飲食店の開業はより活気づくでしょう。同時にコロナ禍のゼロゼロ融資の返済も始まるので、退店も増えるのではないでしょうか。こうした新陳代謝が激しくなると、御社の活躍場面になりますが、中期計画にはどの程度織り込んでいますか。
原氏:
こうした状況は、言ってみればコロナ前に戻るということですね。コロナ禍の間、外食業界は先々どうなるか分からない、そんな印象でした。しかし、今はそんなことは払拭され、先の不安は感じられません。だから、当社が人員をきちんと確保し、戦力化して、事業を進めていけば、計画通り、もしくは計画以上の結果が得られると思います。
井村氏:
なるほど。定量的にはいかがでしょうか。営業人員1名当たり、転貸物件の成約は何物件が平均値になりますか。
原氏:
1人の営業人員で月に1件か2件、平均すると1.5件ぐらいですね。年間だと20件弱です。
井村氏:
このペースは上がったり下がったりするものですか。外部環境が良くなるから、今年は30件いけますみたいな。
原氏:
おそらくそれは変わらないですね。1人の営業人員の契約件数を増やすより、新規採用した営業人員が平均的なパフォーマンスを出せるようになることが重要だと思っています。
井村氏:
株主還元はいかがでしょうか。中期計画の期間中の配当性向40%を目標としています。グロースの企業で40%の配当性向を出すところはかなり限られていると思いますが、さらに50%を目指す考えもあるのでしょうか。
原氏:
将来はあるかもしれないですね。

【CSR活動 他】

井村氏:
CSR活動にも力を入れていますね。
原氏:
3、4年ほど前にお店のこども食堂「みせしょく」を始めました。こども食堂には資金や場所の問題があります。当社は飲食店に関わる事業を行っているので、場所と、それから費用を担うことができます。約2200店舗ある契約先で希望される方を募り、現在40社ぐらいがこども食堂を開催し、当社はその費用を負担しています。
井村氏:
最後に投資家の方にメッセージをお願いします。
原氏:
店舗転貸借事業というのは安定性と成長性に非常に長けたビジネスなので、確実、堅実という意味ではご期待に応えられると考えています。今後とも応援いただければありがたく思います。
井村氏:
本日は大変貴重なお話ありがとうございました。

掲載期間:2023年7月24日~2023年8月23日

株式会社Zeppy 株式会社テンポイノベーション

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